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第73話【未来は任せた】


「妙だな……」

「ん?どうしたんですか?ハヤトさん。なにか言いましたか?」

「あ、いや、なんでもない。」


 祭りも終盤を迎えてきた頃、俺はひとりでにそう呟く。

 そう、本来は俺が襲われて死ぬはずなのに、誰も襲ってくる気配が無いのだ。


 というか、この祭りは毎年参加しているのだが、今年は何故か活気が無い。


 みんな、普通に歩いたりしてはいるが、表情からどこか自分本意に動いていない様に感じるんだよな。


「あっ!でもあれも美味しそうだなーっ!ほらほら!3人とも早く来てよ!!」


 ――まぁそれでも、こうして平穏に終わってくれるのが1番良いんだが。



 しかし、神はそんな結末を望んでいない事を俺はよく知っている。

 なのに、この時はその事を忘れていたのだ。いや、正しくは忘れ"たかった"のだ。


 こんな惨劇の連続の中でも1度くらいは何も起こらない時があって欲しい。何度かの時間逆行(タイムリープ)を経て、俺がずっと切に願っていた事だった。


 だが、今言った様に、神はそんな結末にはしないのだ。



「――ん?だれ、ですか……?」

「どうした?ケティ」


 するとそこで、祭りだからとはしゃいで俺たちの数メートル先をスキップ混じりに歩いていたケティにひとりの冒険者が声をかけた。


 俺から見てその冒険者は顔見知りでは無い為、おそらく近隣の街の者だろう。


「私になにか用、ですかね……っ?」

「……」


 いきなり声をかけられたという事もあり、先程までの笑顔とは裏腹に不安そうな表情で男にそう尋ねるケティ。

 しかし、男は黙ってケティの方を見るだけだ。


 すると、その沈黙の時間が10秒を過ぎようとしていた頃、なんといきなり男は背中に背負っていた鞘から剣を引き抜いた。


「……ッ!?やっ、やめろッ!!」

「……ぇ?――ッ!?」


 まずいと思った俺はすかさず背中から剣を抜き、ケティと男の方へ近づこうとする――が、その途端、男はケティの身体を掴み、首筋に剣を当てた。


「な……ッ!?ど、どうする気だ……?」


 ケティの身が危険になった事により、迂闊には動けない。

 俺は1度近づく足を止めると、冷静にそう聞く。


 くそ……何とかこの間にセリエラに合図を――


「ちょっと……ッ!?」

「な、!?離せ!!」


 しかし、俺がそうしようとする前になんとセリエラとマーニも他の冒険者に捕まった。


「嘘だろ……ッ、!?」

「に、逃げてハヤトっ!!」


 必死に抵抗しながらそう叫ぶケティ。

 くっ……マーニ、もう十分だろ!!早く時間逆行(タイムリープ)を使ってくれ!!


「……ッ、」


 俺は「早く時間逆行(タイムリープ)を!!」という気持ちを眼力に乗せてマーニの方を見つめる。

 しかし、対してマーニは頬から冷や汗を流しながらも、ゆっくりと自分を捕まえている男に気づかれない様にして首を横に振った。


「……ッ!?」


 まさかお前……『まだ俺が死ぬ原因が明確に分かっていないから、まだだ』と言っているつもりなのか……?――ッ!?もう、、これ以上は辛いだけなんだよッ!!


 すると、捕らえられたケティ、セリエラ、マーニの真ん中に立つ俺の周りにも続々と冒険者たちが集まりだし、全員が剣を抜き臨戦態勢に入った。


 もちろん、標的としているのは俺だ。


「お前らなんで……なんで同じ人間同士冒険者同士で争わなくちゃいけねぇんだよ!!」

「先生の命令だ」「先生の命令に従う」

「……ッ、!?」


 こいつらいつまでも先生先生ってッ!!


「ふざけんなよッッ!!?」


 そこで今まで我慢してきた色々なものが爆発する。


 自分で考えて自分で行動しやがれ!!

 そうして周りを囲んでくる冒険者ひとりに斬りかかろうとする俺。


 ――だが、その瞬間、


「ぎゃああああ!?!?」


 ケティを捕らえていた男が剣で首を掻っ斬った。――ッ!?!?


 勢いよく吹き出る真っ赤な鮮血。


「ケティさ――ぐふっ!?」


 更に、間隔を置く事無く次いでセリエラも腹部を後ろから貫かれた。


 そして、最後にマーニも刺し殺されそうになる。――くっ、それだけは――マーニが死んだら本当に誰も救えなくなる!!


「マーニッ!!!身体強化(ブースト)ッ!!」


 俺は全身に魔力を滾らせ、地面を力強く踏み込むとマーニの方へ突進、男をタックルで吹き飛ばした。


「頼むッ!!今すぐ時間逆行(タイムリープ)を!!」

「あ、あぁ……!!」


 俺は必死にそう問いかけると、マーニもすぐに俺の肩に手を置き、魔力を送り出した。

 すぐに身体の周りを金色の魔力が包み出す。


 が、そこで俺がタックルをして倒した男が起き上がると、すぐにこちらへ来て、


「うぐ、」

「……ッ!?マーニ!!」


 マーニの腹部を後ろから剣で突き刺した。――って、!?くっそ、いっその事先に刺しておけば……!!


「大丈夫か!?」

「きに、するな……未来は任せたぞ。」



 微笑しながら口から血を流すマーニが、この世界線で最後に見た光景だった。

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