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第71話【祭りの開幕】


『もし死にそうになっても過去に戻れば良い』『仲間が死ねば過去に戻って助ければ良い』と。そんな考えで全ての惨劇が終わった時、俺は一体幸せに生きられるのだろうか?


 前とは変わってしまった自分に俺はそう問いかける。

 しかし、だからと言って過去へ戻るのをやめる訳にはいかない。俺はこれから起こる惨劇からみんなを守るんだ……!!


 ――例え、自分が犠牲になったとしても。


 

「あ、ハヤトだっ」

「って、!?び、びっくりしたぞ。」


 と、そこでベンチにひとり座っていた俺に気が付いたケティがこちらへ近寄って来た。


「どうしたの?こんなところでひとりになってさ」


 さりげなく俺の隣りに座るケティ。


「いや、別になんでもない。これからの事を考えていただけだ。」

「ふぅん?そっかハヤト私たちのリーダーだもんねっ。よっ!頼れるリーダー!」

「はは、やめてくれよケティ。褒めてもリーダーからは何も無いからなぁ?」

「ふふっ――――で、ねぇハヤト?」


 するとそこでいきなりケティが声色を真剣にするとこう聞いてきた。


「今日、依頼が終わった後さ、『依頼は少し休もう』って言ってたじゃん?あれはどうしてなの?」

「あ、あぁあれか。」


 明日はデスティニーレコードの通りに行けば俺が死ぬ日。

 万が一それが依頼の途中で起きてしまえばマーニが傍にいない為過去へ戻れない。


 だからそうならない様に休みにしたのだが。


 マーニから言われている様に今はケティにはこの事を言うなと言われているしな。


「あれはだな、最近ケティもセリエラも疲れてると思って。――表情で分かるんだよなお前らの事。だからこの期間にゆっくり休んでもらおうと思っただけた。」

「ふ〜ん?セリエラちゃんは分からないけど少なくとも私は全然大丈夫だけどなぁ」


「――もしくは、別の理由でもあるの?」

「え、?い、いや――」


 何の悪気無いケティの質問に俺は言葉を喉に詰まらせる。

 うーん、なんと言えば良いんだ……?


 しかし、そんな俺の表情をじっと見ていたケティがそこで顔をぱあっと笑顔にすると、


「あっ!!私分かったかも!!」

「……へ?」

「あれでしょ?明日のお祭りを楽しみたかったんでしょ?」

「祭り……?――あ、あぁ!それだ。」


 そうだ、確か明日は年に一度のフレイラ伝統の祭りの日だったな。


 だからそこで俺は急遽「祭りが休みを入れた理由」だとする事にした。


「確かに、お祭りの日は冒険者のみんなも依頼お休みしてるもんね。」

「そうだな、だから、わざわざその日にも依頼を受ける必要は無いと思ったんだ。」

「そういう事ねっ!」

「あ、あぁ」


 良かった、とりあえずは誤魔化せ――


「――でも、なにか本当に悩み事があるのならいつでも力になるからねっ」

「……ッ!!」


 最後にケティはそう言い残すとそのまま自分の家のある方向へ歩いて行った。


 ――あとから考え直してみれば、この時もう既に俺が何か思い詰めているという事をケティにはお見通しだったのかもしれない。


 ♦♦♦♦♦


 そして翌日。祭りの当日であり、デスティニーレコードに俺が死ぬと記された日。

 朝から町はお祭り一色のムードで個々の家や店が飾り付けをしていた。


「今思ったけどよ、この日は毎年こうやって祭りをしてるが一体なんの為にしてるんだ?」

「えーハヤト知らないのっ?今日は昔、フレイラを襲ってきた巨大なドラゴンが無事討伐された日なんだよっ」

「ふーん」

「なんだ?ハヤトはこの町にずっと住んでいるというのに知らなかったのか?」

「し、仕方ないだろマーニ!そういう情報には疎いんだよ!」


 そして、そんな町を朝から俺はケティ、セリエラ、そしてマーニと共に歩いていた。


 いや、分かってるさ。今言った通り今日は俺が死ぬとデスティニーレコードに記されている日だ。朝から外へ出歩くなんて確かに危ない。


 ――だが、早朝からケティとセリエラが家を訪れて来たんだよ。

 それに、2人はこの俺の事情をしらない。そりゃ断れねぇよな。


 まぁけど、安心してくれ。ちゃんと剣は持って来ているし、マーニにもこうしてついてきてもらっているからな。


 ――しかし、そこでケティがツッコんできた。


「あれ?そういえばハヤト、なんで剣を持ってきてるの?」

「……ッ!、ん?いや、はは。間違えて持って来ちまったんだよ。」


「ほらあるだろ?毎日持ち歩いてるせいでそれが必要無い日もついつい持ってきちゃうみたいな?」俺は自分のセリフにそう付け加える。


「あー確かに?無いことはないかな。でも、多分邪魔だと思うし家に置いてくれば良いんじゃない?重いでしょ?」

「い、いや、全然大丈夫だぞ?」

「ほんとに?」

「あ、あぁ――」


 っと、するとそこでマーニが助け舟を出してくれた。


「まあまあケティ。もしかすると祭りの途中にモンスターが乱入してくる可能性もゼロでは無い。持っていてハヤト自体が大丈夫だと言っているんだし、いいんじゃないか?」

「確かに、マーニさんの意見は一理ありますね。こういう、人が集まる時にこそ冒険者は気を引き締めるべきです。」


 お!いい事言うじゃねぇかセリエラ……!!


「確かに、それはそうかもっ!そうだね、じゃあハヤトは今日1日その剣で私たちを守ってよねっ」

「な、なんでそうなるんだよ!?ま、まぁ良いが。」

「ふふっ、冗談だよも〜っ」


 こうしてフレイラでの年に一度のお祭りが始まった。

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