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第62話【再び出会う、レイバーとイザベル】


 翌朝。俺はいつも通り冒険者ギルドへ向かう。

 すると冒険者ギルド前ではいつもの様にケティ、セリエラが会話をしながら俺を待っていた。


「おはよう、ケティ、セリエラ。」

「あ!来た来た!おはよーハヤトっ!」

「おはようございます。ハヤトさん。」


 ……思えば何度、俺はこの場所でケティとセリエラに挨拶をしたんだろうな。


「ねぇハヤトっ、この冒険者ギルド前だけどさ、もうこれからここを毎日の待ち合わせ場所にしても良いんじゃないっ?」

「……そうだな。」


 ……しかし、それを覚えているのは俺だけで、この2人はここで集まるのは今日で2度目。

『前も全く同じ会話をした』という奇妙な感覚に俺は少しずつ慣れて来ていた。


「じゃあ入ろっ!なんだか不思議だよねー私たち本来はフレイラの冒険者なのに殆どの依頼をナビレスで受けたんだよ?等級も中級まで上がっちゃったしさ。」

「確かに、そうだな。」


 そんな会話をしながら、俺たち3人は早朝の人が少ない冒険者ギルドへ入る。



 中に入ると、1組の冒険者パーティーがどの依頼を受けようか、依頼の紙が張り出された掲示板を眺めていた。


「……ッ!!」


 そして、その2()()()を俺はよく知っている。


「――ん?なんだ?――って、お前ら昨日話題になってたナビレスで初心者ながらに昇級したやつらじゃねぇかッ!!」


 すると、そこで相手は俺からの視線を感じたのかこちらを向く――と、直ぐにガハハと笑いながらこちらへ寄ってきた。


「は、ハヤト……?この人知り合い……っ?」


 ケティが少し怖がりながら小声でそう聞いてくる。


「いや、()()。でも大丈夫だ。」



「――なにか俺たちに用か?」

「特に用はないんだが――っと、すまんすまん。自己紹介が遅れていたな。俺はレイバー。そしてこの横にいるのがイザベルだ。よろしくな。」


 ガハハと笑いながら自己紹介をし、自身の相棒を紹介するこの男。


 そう、レイバーだ。

 ――まぁ今日出会う事は分かっていたんだが。

 昨日見たデスティニーレコードに「 5月1日:レイバー、イザベルと知り合う。」そう記されていたからな。


「あぁ、よろしくな。ほら、2人とも挨拶。」

「あっ!そうだねっ!はっ、はじめまして!私はケティっ」

「セリエラです。」


「おうッ!よろしくな!――聞いたぜ?この町の冒険者がナビレスで昇級したってよ。」

「あぁ」

「凄いじゃねぇか。話によりゃまだ冒険者を初めて長くないんだろ?それなのにもう中級になっちまうなんてよ。」

「いやいや、そんなまだまだ俺たちは中級の中じゃ弱い方だ。なぁ?」


「うん、そうだね。だからこれからもっと強くなっていかないとっ!」

「ケティさんの言う通りです。」

「ガハハッ!!向上心があるのはいい事だなッ!!――まだ朝は早いし、時間あるだろ?少し話さないか?」

 

「私は良いけど、ハヤトはどう?」

「私も、ハヤトさんに任せます。」


 レイバーとイザベルには次にしたいサンボイルでの冒険者同士の殺し合いの回避に手伝って貰いたいから――ここは仲良くなっておいた方が良いな。


「よし、レイバーの言っている通りまだ1日は始まったばかりだからな。話すとするか。」

「決まりだなッ!!」


 それから俺たちとレイバー、イザベルで立ち話を始めた。

 内容は俺たちがナビレスで体験した事や、レイバーの冒険者としての武勇伝などだ。


「――それにしてもよ。ナビレスでお前らゴブリン・ロードを止めたんだろ?まだ冒険者始めたばっかだってのにすげぇな。」

「いやいや、あれは全部ウェイリスさんが倒したから俺たちの手柄じゃない。」


 すると「あぁ……ウェイリスか……」あからさまに肩を落とし、声が低くなるレイバー。


 あぁ、そういやこいつ。ウェイリスさんの事をライバル視してるんだっけ。(イザベルには()()()()と言われていたが。)


「あっ!でもよ?俺たちだって2日前、オーガを倒したんだぜ?」

「……ッ!!」


 そこであるひとつの事が気になった俺はそう言ったレイバーに質問してみる事にした。


「……ちなみにだが、それはどこでだ?」

「どこで?オーガを倒した場所か?ウェーグル森だが。」

「……やっぱりそうか」

「ん?なんだ?」

「いや、なんでもない」


 時期的にももしかするとと思ったが、やっぱりか。

 そう、今レイバーたちが言ったオーガの討伐というのは前の世界で俺たちがレイバー、イザベルと共に合同討伐をしたオーガだったのだ。


 ――なんだか、一度一緒に行っていた依頼が自分のいないところで終わっていたと考えると変な感覚になるな。


 

 すると、そこでレイバーがいきなりある提案をしてきた。


「あっ、いい事思い付いたぜ。」

「ん?どうした?」

「ハヤト、リーダー同士の模擬戦をするぞッ!」


 ……へ?いきなり何言ってんだ?こいつ。


「模擬戦って、今日の依頼はどうするんだよ?」


 そう聞くが、レイバーは近づいてくると俺の肩をポンポンと叩き、


「ハヤトくん、冒険者というのは常に柔軟じゃなくてはいけないのだよ。――ハヤト、お前が勝てば今日稼げるはずだった分のお金もやるし、う〜んそうだな、――なんでもひとつ言うことを聞いてやるよッ」


 気前よくそう言うレイバー。

 多分、初心者だが自分と同じ中級に上がった俺たちに『調子に乗るなよ』という意味を込めての模擬戦なんだろうが。


 (俺はレイバーの思っているよりはやるぜ……ッ!)


 それに、これで俺が勝てばなんでも言うことを聞いてくれる。サンボイルに一緒に来てもらうことも出来るはずだ。


「……分かった。その提案、乗ったッ!!」

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