第60話【お呼び出し】
その翌日。
俺は起きてからすぐ、昨日寝る前から考えていた事をケティ、セリエラ、ウェイリスさんの3人に伝えに向かった。
確かに昨日、見事ゴブリン・ロードの準備をしていたゴブリンたちを洞窟内で倒し(まぁ戦ったのはウェイリスさんのみで俺たちは何もしていないが)「ナビレスをゴブリン・ロードが襲い街が壊滅」という未来を回避する事ができた訳で、これでウェイリスさんもおかしくなる事は無くなったのだが(多分だけど)
それでも、これで全てが解決。という訳では無い。
そう、もうひとつの大きな事件「サンボイルで冒険者同士の一般人までも巻き込んだ大規模な殺し合い」があるのだ。
これがあったからサンボイルに住んでいたというイザベルの両親が生きているかが分からなくなって、前の世界ではイザベルが一時行方不明になり、姿を現すもそれはもう以前とは別人だった。という事へ繋がってくる。
それに、今回ナビレスの未来を変えたからと言ってサンボイルで起こる出来事が変わるという訳も無いだろう。
――まぁ結局何が言いたいのかと言えば、今日フレイラに戻り、すぐにサンボイルを目指したいのだ。
正直今日はまだ4月6日で、前の世界通りの日に起こるとするならばまだまだ余裕はあるが、早く行けばそれだけ街の様子をよく見れる。
だから、冒険者同士での殺し合い。という一見意味の分からないこの事件のきっかけが分かるかもしれないと思ってな。
そうして俺は借りていた部屋を出ると、昨日ご飯を食べさせてもらった巨大なテーブルのある部屋へ向かう。
本当にこの屋敷は何部屋部屋があるんだ……?一体この部屋全てに役割があるのだろうか?
「――って、ウェイリスさんじゃねぇか。」
「あ、おはようハヤト。昨日はよく眠れた?」
「あぁ、よく眠れたぜ。なんなら自分の家よりも疲れが取れた気がする。」
するとそこで俺は部屋から出てくるウェイリスさんと廊下でばったり会った。
朝イチのウェイリスさんは髪を結んでいないらしく、ピンクの綺麗な長髪を下ろし、服装も薄ピンク色のパジャマだ。
「へぇ、それなら良かったじゃない。――――って、ねぇ?なにジロジロ見てるのよ?」
「へっ!?い、いや、寝起きは髪下ろすんだなって思っただけだよ。それに、いつもの、黒い服意外を着ているところを見るのも初めてだし。」
すると、それを聞いたウェイリスさんは微笑しながら「そりゃそうよ、誰だって起きた瞬間に髪を結んだりしないわ。」そう返してくる。
「まぁそれもそうか。はは」
っと、そうだそうだ。忘れそうになってたがここらでもうウェイリスさんには先に次はサンボイルに行く事を伝えとくか。(まぁ正直、次の場所に関してはウェイリスさんは全然関わっていないからさすがに来るメリットが無いだろうし、断られても全然それは仕方ないと思っている)
「あーそうだ、一応なんだが次は――」
「あ、そういえば今日は冒険者ギルドに用事があるから朝食を食べたらすぐに出かけるわよ。」
しかし、そこでそうウェイリスさんとセリフが重なってしまった。
「あ、ハヤトも話そうとしてたわよね?何かあったの?」
「い、いや、やっぱり後からで良いぜ。」
「そう?なら良いけど。じゃあ先に下へ降りとくわよ。ハヤトは多分まだ寝てるケティとセリエラを起こしてから一緒に来て。その間に朝食の準備をしておくから。」
「お、おう。分かった。」
そうして俺は廊下を歩き、螺旋階段から下へ降りていくウェイリスさんを見送る。
……冒険者ギルドに用事?なにがあるんだろう。
そしてその後、言われた通りケティ、セリエラを起こして下に降り、朝食を食べて個々準備を済ませると4人で冒険者ギルドへと向かう事にした。
冒険者ギルドに入ると、すぐにウェイリスさんは受け付けのお姉さんに話しかける。
すると、すぐに奥の部屋へと通された。
そして今はその部屋の更に向こうにある、両開きの真っ赤な扉の前でそれが開くのを待っているところだ。
「――で、ずっと思っていたんだが一体これはなんの用事なんだ?」
そこでやっと、俺はずっと思っていた事を口にする。
「それがウェイリスにも分からないのよ。実は昨日、あの後個別にウェイリスだけ冒険者ギルドに呼ばれたんだけれど」
あー、確かに昨日ウェイリスさんがひとりでどこかへ行っている時間があったが、それは冒険者ギルドだったのか。
「その時『明日詳しい事は話すからとにかく今日ゴブリンを討伐したメンバーで来てくれ』と言われたのよ。」
「なるほどな。」
「何の話なんだろうねっ」
「悪い話じゃなければ良いですね」
おいおいセリエラ、それはフラグって言うんだぜ……?
――まぁでも、この用事が終わった後にサンボイルの事はみんなに言えばいいか。
すると、そこで正面の両開きの扉が開いた。
そして中から鎧を纏ったおじいさんが顔を出す。
その顔には至る所に傷跡がある点から見て、おそらく元冒険者だろう。
「少し待たせましたね。皆さんどうぞ、お入りください。」
そうして俺たちはその部屋へと入って行った。
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