第59話【変わった結末】
「何はどうあれ、無事に終わって良かったねっ」
「本当ですね。」
「だな。」
洞窟内でゴブリンを討伐した後、俺たちはずぐにナビレスの冒険者ギルドに戻って報告をした後、今日泊めてもらうウェイリスさんの両親が現在住んでいる家へ向かっていた。
「まぁ、所詮はゴブリン程度。ウェイリスにとっては余裕だったわね。」
ウェイリスさんはピンク色のツインテールをたなびかせながらそう言う。
「あぁ、まさかウェイリスさんにあれだけの力があるとは思わなかったぜ。」
「なに?まさかウェイリスの力を疑っていたの?」
いや、疑ってたってよりも――まさかあんなえげつない高火力魔法で終わらせるなんて思っても無かったからな。
「別に疑ってたって訳じゃねぇが。少し驚きはしたな。」
「なによ驚いたって。」
「……それにウェイリスさん、あのゴブリンたちが居た部屋の中であれだけの魔法を放っておいてなんで無傷だったんだよ?」
そこで俺はさっきから気になっていた事をウェイリスさんに尋ねた。
「あぁ、そんなの単純な話よ。ウェイリスの身体に魔術防御を纏っていただけね。」
「魔術防御?」
なんだそれ、ほんとに知らない単語が出てきたな。
「え?まさかハヤト、魔術防御も知らないの?」
「すまん、俺魔法は殆ど使わないからな。」
「はぁ……まぁ良いけど。――魔術防御は簡単に言えば自分が放つ魔法や相手が放つ魔法から身を守るシールドね。これを使っていれば直撃しない限り、殆どの魔法から身を守る事が出来るわ。」
「なるほど。だから無傷だったって訳か。」
「えぇ――っていうか、逆にそれ以外無いでしょう」
――まぁそんなこんなで色々な話をしながら歩く事数分。俺たちはウェイリスさんの両親が住んでいる家に着いた。
「着いたわ。ここに来るのは久しぶりね。」
両手を腰に当て、建物の前で呟くウェイリスさん。――って、
「な、なぁウェイリスさん……?ちなみに聞くが、ウェイリスさんの両親って色々な街を回っているんだよな?」
「あら、ハヤトに言っていたかしら?そうよ。それがどうしたの?」
いや、そんな本当に分からないみたいな顔されても……
じゃあ思っている事を言ってやろう。
「いや、流石に一定期間留まるにはデカすぎやしませんかって思ってな……」
そう、なんとウェイリスさんが両親の住んでいる家だという建物はフレイラにある屋敷にも引けを取らないナビレスの中で一際大きな屋敷だったのだ。
フレイラと同じ様に屋敷の周りを塀がびっしりと囲み、俺たちは今中に入る為の門の前にいる。
「確かにね、それは私も思ったよ。だってこれもうフレイラのお屋敷をナビレスの周りの建物に馴染む様に青色基調に変えただけじゃん。」
「ケティ!!俺の心の声を代弁してくれてありがとう!!」
「そうかしら?確かに大きいかもしれないけど。――ウェイリスのお父様とお母様は色々な街を回るから、その度に次来た時住む場所に困らない様、家を建てているのよ。」
「ウェイリスちゃんの家って、フレイラのお屋敷を見た時から思ってたけど一体どんな一家なの……?」
うん、分かるぞケティ。ワンドール家がこれだけ大きな冒険者一家という事を知らなければそりゃそんな反応になるよな。
「とにかく、立ち話はなんだし、入れてもらいましょう。」
「あ、あぁ」
すると、そこでウェイリスさんは屋敷の門の前で空に向かって言葉を放つ。
「お父様!お母様!ウェイリスよ!」
「……――って!?」
と、その言葉を放った数秒後。なんとひとりでに門が開いたのだ。
流石ワンドール家の屋敷だな……この感じからしても、きっとナビレスの屋敷にも様々な魔法が仕掛けられているのだろう。
「これを見るのは2度目ですが、やはりすごい魔法の技術ですね。」
「あぁ、分かるぞセリエラ。俺も何が何だか分からん。」
「何話してるの貴方たち。ほら、門も開いたんだし中に入るわよ。」
そうして俺たちはナビレスの屋敷へと入って行った。
♦♦♦♦♦
そして、時間は一気に過ぎて場面は夜になる。
「ふぅ……」
あの後、屋敷の中に入った俺たちはウェイリスさんの両親に迎えてもらった。
とっても優しそうなお父さんと上品なお母さんだったぜ。
それに、ご飯も食べさせてもらったんだが、水の都という事もあって沢山の魚料理が出てきた。
マジで美味かったぜ。刺身に焼き魚に煮魚。今思い出してもヨダレが出てくる。
しかも、先程ご飯を食べ終わり、今日寝る部屋に案内してもらってひと息ついてからデスティニーレコードを開いてみたのだが、
4月5日:ウェイリスと共に水の都ナビレスへ
4月5日:ウェイリスと共にゴブリンキング含むゴブリンを討伐
ちゃんとその文章が赤文字で記されていた。
これでナビレスにゴブリンたちが攻めてくるという事は無くなり、ウェイリスさんの両親が死ぬ事も無いだろう。
これで……ウェイリスさんがあんな風に闇堕ちする事は無くなるはず……!!
よし、この調子で未来を変えて行くぞ……!!
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