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第55話【簡易冒険者登録】


 4月5日。水の都ナビレスへ到着した俺たちとウェイリスさんは早速ゴブリンの住む洞窟への道のりの詳細を教えてもらう為、冒険者ギルドへ向かった。(勝手にゴブリンを狩る訳にもいかないしな)


「着いたわ。ここがナビレスの冒険者ギルドよ。」

「へぇっ!フレイラとは違って外壁が水色なんだ!他の建物も全体的に青いからマッチしてて綺麗だねっ!」

「その場所に合わせて見た目も変わる。という事ですね。」

 

「だな、すごく綺麗だ。」


 目の前に建つ冒険者ギルドを見上げながら俺はケティたちの言葉に続けてそう呟く。

 前ナビレスに来た時は焼け焦げていたせいで壁が黒く変色してしまっていたが、こんなに綺麗だったんだな。


「じゃあ、早速中に入って簡易冒険者登録を済ませましょう。」

「簡易冒険者――なんだそれ?」

「貴方たちまだ冒険者を始めたばかりだからそりゃ知らないわよね。」


 うーん、俺に関しては始めたばかりでは無いんだが……そう言えばフレイラ以外でちゃんとした形で依頼を受けた事は無かったからそういう知識は無かったぜ。


「簡易冒険者登録って言うのは、他の街で冒険者をしている人間がその街でも冒険者として依頼を受けられる様にする為に踏む手順って感じね。これは通常の冒険者登録とは違って名前、等級、パーティーメンバー、どの街の冒険者か。の記入のみで登録する事が出来るわ。」

「ふーん、まぁとにかく。それをする必要があるって事だな。」

「えぇ。じゃあそれをしに入りましょう。」


 まぁ要するに、俺たちが前の世界で初めてサンボイルへ行った時しようとしてた遠征者用の冒険者登録の正式名称って事だな。

 そうして俺たちは冒険者ギルドへと入った。



 それから言っていた通り簡易冒険者登録を俺たちは終わらせる。


「――では、これにて登録は完了ですので依頼を受けることが出来ますよ。」


 フレイラの受け付けよりも明るい雰囲気のお姉さんが太陽の様な笑顔でそう言う。


「じゃあ」そこで俺は早速ゴブリンの生息している洞窟の場所を教えて貰うことにした。


「ナビレスの近くにあるゴブリンが生息している洞窟の場所を教えて欲しいんだが。」

「ゴブリンですか?この街の近くになら1箇所、ありますよ。」


 おぉ……!!1箇所だけなのか。それなら手間が省けるぜ。

 仮にこれで何箇所もあったとしたなら、そのうちどの場所のゴブリンがゴブリン・ロードを起こすか分からないから全部討伐する必要があったからな。


 だが、1箇所ならそこを潰しておけば心配は無いだろう。良かった良かった。


「なら、その場所を教えてくれ。」

「はい。――ええと、皆様はちなみにどの街から来ましたか?」

「?フレイラだが。」


「フレイラでしたら、方向的にナビレスの正面入り口から入ってきた訳ですね。ですから、一度来た道を戻って下さい。すると、右側に木々や草が切り開かれた砂利道があるので、そこを真っ直ぐ行って貰えばその洞窟に着きますよ。」


 お、分かりやすい説明。

 だからどの街から来たのかを聞いた訳か。


「なるほどな。ありがとう。――――と、あとひとつ良いか?」

「なんでしょう?」


 そこで最後に俺はもうひとつ、追加の質問をする。


「ちなみになんだが、その洞窟に住むゴブリンたちがゴブリン・ロードを起こしそうな雰囲気とか、あったりするか?」


 すると、それを聞いた受け付けのお姉さんは「ゴブリン・ロード、ですか」難しそうな顔をすると少々黙り込み、そして、


「すいません、最近その様な報告はありませんね。」

「……ッ、そうか。」


 まぁでも、予想通りではあった。

 だって、本当に誰も気付いて無かったからこそ、あれだけの大惨事になったんだろう。


「ほら、だから言ったじゃない。こんな時期にゴブリン・ロードなんてほんと有り得ない事なのよ?全く、ウェイリスちゃんと王国に行ってたら結構報酬もらってたのにな〜」


 そこで黙って俺と受け付けのお姉さんの会話を聞いていたウェイリスさんが口を挟んできた。


 頬をプクっと膨らませると、俺の事をじっとりと見つめてくる。


 なんだよその表情は……まるで「王国への遠征分の報酬を払え」と言われてるみたいじゃないか。


「すまんすまん。もしこれで本当にゴブリン・ロードの心配が無かった場合はちゃんと払うから。」

「えっ!?ちょっとハヤト!!私たちそんなお金どこにも――」

「ケティ、大丈夫だ。それにセリエラも。そうなった時はちゃんと2人に迷惑かけないようにするからよ。」


「――でも、その代わりウェイリスさん。俺の言う通りゴブリン・ロードが行われそうな雰囲気だったなら、その報酬の話は無しにして欲しい。」

「えぇ、分かってるわ。まぁ、ハヤトの話に乗って遠征をキャンセルしたのもウェイリス自身だもの。今のはあくまでこれが無駄足だった時の場合よ。」

「それなら良かった。」


「――じゃあ、早速そのゴブリンたちの討伐を許可してもらいたいんだが。」


 そうして俺は再び視線を受け付けのお姉さんへと向けるとそう言う。


 するとお姉さんは申し訳なさそうに、


「はい、討伐の許可は問題ないですが――現在そこのゴブリン討伐関連の依頼が出ていないので、報酬は出せない可能性が――」

「あぁ、別にそれは無くて良い。だろ?」


「もうハヤトの好きにしてよ」「私はハヤトさんに従いますよ。」「まぁ、ゴブリンの討伐報酬なんてたかが知れてるしね。」


 呆れながらも笑うケティ、いつも通りに微笑をするセリエラ、ピンクのツインテールをたなびかせながら笑うウェイリスさん。


 みんな――本当にこんな俺のわがままじみた事に付き合ってくれてありがとうな……!!


「では、ゴブリン討伐を許可致しますね。」


 こうして俺たちはゴブリン討伐へ向かう事となった。

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