第51話【二度目の時間逆行】
「待って下さい皆さん。私たちの元へ今大人数の人間が迫って来ています。」
家に着いてからずっと無口だったセリエラがいきなりそう言った。
「……ッ、!!」
そしてそのセリフを聞いた瞬間、俺は反射的にマーニの方へ視線を向ける。
すると、対してマーニも俺の目を見つめ、ゆっくりと頷く。その頬には汗が伝っていた。
なにかが……来る……ッ!!
「大人数の人たちって?」
しかし、それに危ない可能性があるなんて少しも思っていないケティは、呑気な声色で首を傾げながらそう呟く。――――が、次の瞬間、
「……ッ!?!?皆さん伏せてッッ!!!!」
いきなりセリエラが聞いた事も無いような声量でそう叫び、頭を手で守りしゃがみ込んだ。――って、なんだ!?
「……ッ!?」
それに俺たちは一瞬混乱するが、すぐに全員が同じようにして地面へ伏せる。
すると次の瞬間、
ドシャンッッッッッ!!!!
その大きな音と共になんと家の扉、壁、屋根が一瞬にして木っ端微塵に爆発した。
「……ッ、!?な、……!?」
爆発後、俺はゆっくり顔を上げると玄関があった側の壁は完全に爆発し、屋根も吹き飛んで空が見える。
そして、今の爆発を起こしたのであろう人間が正面に立っていた。
「嘘、だろ……?」
「なんで……っ、!?」
「まさか……」
その人間の顔を見て、俺、ケティ、セリエラは絶望をする。なんと、その人物はずっと姿を消していたウェイリスさんだったのだ。
更に、ウェイリスさんひとりだけでは無く、後ろには何人もの武装した人間を連れていた。
「ウェイリスさん……!?なんで、なにやってんだよッ!?」
「久しぶりね。でも、残念だけど貴方たちにはここで死んでもらうわ。」
「なに、何言ってるの……?おかしいよ……!?」
「理解が、追い付かないのですが、」
以前のウェイリスさんからはかけ離れた冷酷な冷たいセリフにケティとセリエラは目を見開いて完全に混乱している。
しかし、俺にはこの光景に既視感があった。
そう、先日のイザベルと対峙した時とものすごく類似していたのだ。
「な、なぁ……ウェイリスさん、まさかこれは先生の命令だったり、しないよな……?」
普通こんな状況、意味が分からず冷静に思考出来るはずが無いのに、なぜかそこで俺は気が付くと質問をしていた。
「あら、知っているのね。そうよ、ウェイリスは先生の言う通りに動くの。」
やっぱり……なんなんだよ……なんなんだよこれ……?――意味、分かんねぇよッッ!!
「じゃあ、さようなら。――やりなさい。」
「はっ、」
そうして、ウェイリスさんは連れている武装した人間たちに命令を出す。その瞬間、一斉に個々で剣を抜き、襲いかかってきた。
「……ッ、!?なんでっ!?」
「皆さん、落ち着いて下さい……!!」
それをケティ、セリエラは前に出て何とか止めるが、人数が人数だ。とても持ちそうには無かった。
クソ……ッ!!俺も加勢に……!!
俺は背中の剣に手を伸ばすと、すぐに2人の助けに入ろうとする。――が、
「おいハヤト!!2人が抑えてくれている間に過去へ飛ばすぞ!!」
そこで後ろからマーニがそう叫んだ。
「でも……!!このままじゃ2人が――」
「何言ってるんだ!!それでお前が死んだら全て終わるんだぞッ!!」
「過去に飛んで記憶を維持出来るのはハヤト――お前ひとりだけなんだ!!急げ!!」
「……ッ、!!」
そうだ……ここで俺が過去に戻り、未来を変えるんだ……ッ!!
「すまん、絶対に助けるからな……ッ!!」
そこで俺は2人に加勢しようとする寸前、踵を返すとすぐにマーニの方へ寄った。
「ほら!!早くしてくれ!!」
「分かっている!!」
そうしてマーニは俺の肩に手を当てる。その瞬間、身体全体を青いオーラが纏い始めた。
来た……!!この感覚だ……!!
「……ッ!?痛いっ!?やめてよウェイリスちゃん……っ!?なんで……!?助けて!?助けて、ハヤトっ!!」
「ケティさん!!――……ッ!?ぐふッ、!?……ハヤト、さ、」
しかし、その寸前、背中から聞こえたのはそんな仲間が自分に助けを求める声だった。
肉が引き裂かれ、血しぶきが上がる音が聞こえる。
クソが……クソがクソがクソが……!?!?
俺は絶対、こんな腐った未来を――変えてやる……ッ!!
「行け……!!ハヤトッッ!!」
「飛べやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
こうして俺は、二度目の時間逆行をした。
♦♦♦♦♦
「――はっ、!!」
それから、気が付くと俺は見覚えのある場所に立っていた。
すぐに周りを見渡す。ここは冒険者ギルド前だ。
(なんとか、過去には戻れたみたいだな。)
だが、前の時間逆行ではその日の朝に戻れたからすぐにいつかが理解出来たから良かったが、今回に関してはマーニと「いつに飛ばす」と言った会話をする余裕も無かったし、まずはこれがいつの日にちなのかを確かめないとな。
「――あれ?ハヤト。どうしちゃったの?」
「……ッ!!」
するとそこで後ろから聞き馴染みのある声がした。
すぐに後ろを向く。声の主はやはりケティだ。それに、横にはセリエラも立っている。
良かった、こいつらと出会う前に飛んでいたらどうしようと思ったが、その可能性は消えたな。
「な、なぁケティ……?今はいつだ……?」
とにかく、いつなのかを把握する為に恐る恐る俺はケティにそう質問をする。
するとケティは「何言ってるの?」そう言いたげな表情で首を傾げながら、
「いつって、今私たちは初めてのスライム討伐を終えて冒険者ギルドに帰ってきたところじゃん。」
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