第48話【夜の集まり】
「……イザベル……?イザベル、、っ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!?!?!?」
俺はイザベルの動きを止めるという役目を失敗し、そしてイザベルに殺されかけたところをレイバーが自らずっと同じパーティーで依頼を受け続けていたイザベルを殺すという形で助けてもらう。
しかし、何度も何度も、イザベルの亡骸を抱えたレイバーは叫び続けた。
そしてその晩、俺たちは今回起きたイザベルの件を話す為、酒場に集まる事となったのだった。
♦♦♦♦♦
「――で、話をまとめると。まず今日の昼頃に冒険者ギルド付近で行方不明だったイザベルを発見。だが、何故かイザベルはハヤトに攻撃。危ないところを駆け付けたレイバーによって助けられた。しかし、それでイザベルは死亡。それで合っているか?ハヤト。」
「あぁ、マーニの言う通りだ、」
俺はマーニの問いに首を縦に振って肯定する。
「なんで……なんで……イザベルちゃん、、」
「これは、すごく残念ですね。フレイラでは相当な実力を持っていただけに、イザベルさんと絡みの無かった人達も話題を出しているくらいですし。」
そう、あの出来事がフレイラでは1番大きな道で起き、尚且つ冒険者ギルドに近かったという事もありあの後町全体でイザベルが死んだ。という話題で持ちきりだった。
しかも、殺したのは「レイバー」その情報と一緒に。(当然、事態の把握が曖昧な人からは一方的にレイバーが悪いと非難もされる為、今の集まりには呼んでいない。)
――だが、それは実際レイバーは悪くなく、悪いのはあそこでミスを起こしてしまったという事を自身で理解しているだけに、俺は先程からずっと心が罪悪感でいっぱいだった。
それに、昨日デスティニーレコードを見た時、「実はレイバーがイザベルを殺そうとしているのではないか」そんな事すら考えてしまった……俺は一体、これからどうすれば……
「……え」
「……ねぇ」
「ねぇ、聞いてる?」
「……ん?あぁ、すまん。少し考え事をな。」
「そうなんだ、大丈夫?ハヤト。やっぱりイザベルちゃんが死んじゃったのは悲しいよね、」
「そう、だな、」
そしてもちろん、その場にいた訳では無いケティたちは俺のせいでイザベルをレイバーに殺させてしまったという事を知らない。
だからそれで更に、俺の心は締め付けられた。
何度も何度も、こいつらと一緒にこの場に居ていいのか。とすら思う。
「――で、それ以外に、何か情報はあるか?ハヤト。」
「情報、か」
「その場で感じた事やイザベルが言っていた事、なんでもいい。なんでイザベルがハヤトに殺意を向けていたのか、それが分からなければこの件の黒幕が分からない。」
「……ッ、!!」
そこでマーニの「黒幕」という言葉が引っかかる。
「黒幕……?何言ってるの……?マーニちゃん?」
「今回の件と言い、サンボイルで起こった冒険者同士の殺し合いと言い、妙だろ?誰かが裏で操っていてもおかしくは無いと思ってな。」
正直、普通の俺なら「何言ってんだよ」そう一蹴するレベルの話題だろう。
しかし、デスティニーレコードだったり、セリエラを刺し殺した男、そしてイザベルが言っていた「先生」それらがあるだけに、マーニの言っている事が合っているのではないか、俺は今そう思っていた。
すると、そこで意外にもセリエラもマーニの言葉に肯定的なセリフを吐く。
「……私も、マーニさんのその意見は可能性があると思います。」
「えぇセリエラちゃんまでそう思うの〜?」
「悪いがケティ。俺もマーニの意見に同意だ。」
「も〜なんだか私が変みたいじゃんっ」
「……?」
すると、俺がそのセリフを吐いてからマーニが数秒見つめてきた。
(なんだ……?)
♦♦♦♦♦
そして夜も深くなりだし、客が俺たち以外に居ないという事もあり酒場が閉まる時間に合わせて自然に解散する流れになった。
「じゃあまた明日ギルド前でね〜っ」
「おやすみなさい、皆さん。」
「あぁ、2人ともおやすみ。」
俺はケティとセリエラを見送ると、残るマーニにも同じセリフを吐こうとする。
「じゃあマーニも――」
「ハヤト。」
しかし、そこでそのセリフを遮る様にしてマーニは俺の名前を呼んだ。
「ん?なんだ?」
「さっき、小生のこれには黒幕が居る。というセリフに同意したよな?」
「あぁ、したが。」
「なにか心当たりがあって、そう言ったのか?」
心当たり?確かにあるが、それならセリエラだって同じく同意してただろ。
「まぁ、そうだが。なんでそれを俺だけに聞く?」
「そんなの、ハヤトが過去に戻った経験があるからだ。セリエラが刺し殺されるのを目の当たりにしたのだろ?それも含めて、お前には些細なことでも聞いておきたいんだ。」
「……ッ、なるほどな。」
「あぁ、無いか?なにか。どんな事でも良いんだ。」
「う〜ん、」
俺は腕を組むと考える。
するとそこでひとつ、思い付いた事があった。
「そういえば、セリエラを刺し殺した男も、イザベルも同じく『先生』という人物を言葉にしていた。」
「先生?」
「あぁ。確かにそう言っていた。それに、イザベルは死ぬ直前、正気を取り戻したんだが、『あの男に操られなければ』とも言っていたな。おそらくだが、あの男ってのは先生の事だろ。」
「だろうな。う〜む、まだ謎は深まるばかりだが、とりあえずは良い情報をもらった。小生もまた考えてみるぞ。ハヤトも、また何かあったら言いに来るんだぞ?」
「あぁ」
そうして俺たちも別れの挨拶を交わすと、そのまま家に帰った。
しかし、今日はこれで終わらなかったのだ。
寝る前に俺はデスティニーレコードを開いたのだが、そこには新たな文章が記されていた。それは――
「嘘、だろ……?」
5月12日:死
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