第47話【最悪な幕閉じ】
「氷結、極楽花時雨」
何故か俺に殺意をむき出しなイザベルは極楽花時雨を放つ。
これには流石に死を覚悟する俺であったがその刹那、
「イザベルッッッッ!!!」
レイバーが冒険者ギルドから飛び出し、一気にイザベルへタックルをした。
「……ッ、」
いきなりの事に数メートル後ろへ吹き飛ぶイザベル。極楽花時雨の発動も止まった様で、宙へ浮いていた葉や石などは地面に落ち、周囲の温度も戻って行く。
「レイバーッッ!!!」
「大丈夫かハヤト!?」
イザベルが怯んでいる事を確認したレイバーは、すぐにそう俺が怪我をしていないかを確認してきた。
レイバー……!!冒険者ギルドの中に居たのか……!気がついてくれて本当に良かった……!
「俺は大丈夫だ。――そんな事より、」
「あぁ、分かってる。ずっと冒険者ギルドの中に居たんだが、急に温度が下がって来てな、まさかとは思い外へ出てみればこれだ。」
「……イザベル、本当に、心配していたんだぞ。どうしていきなり姿をくらましたり――って、!?」
「……ッ!?」
しかし、なんとイザベルは体制を立て直すとずっと一緒に居たはずのレイバーにさえ攻撃をしたのだ。
「どうしたんだよイザベル!?」
レイバーはそれをすぐに背中に担いでいた自身の武器、バトルアックスで防ぐが、顔には一気に焦りの色が現れる。
するとそこで他の冒険者もギルドの中から数人、音で何かが起きていると気がついたのか外へ出てきた。
「なんだ……?あの2人ってずっと一緒に依頼を受けてるよな?」
「なんで戦ってるんだよ、街中だぞ?」
「……ッ、」
クソ……このままだと事が大きくなってしまう。
だが、止める事なんて……
するとそこでイザベルの攻撃を交わしながらレイバーが俺に対して言葉を吐いた。
「ハヤトッ!!とにかく今はイザベルを止めるぞッ!!俺が隙を作るからお前はそこでイザベルを地面に押し付けるか何かをして動きを止めるんだ!!」
「……ッ!、わ、分かった!!」
戦いながらだから言葉が上手く出てこないのだろう、雑な説明に俺は一瞬混乱するがそれでも今はそんな事を言っている場合では無い。
俺はいつでもイザベルに突進出来るように構えた。
「ふんっ!!イザベルッ!!目を――――」
「覚ませえぇぇぇぇッッッ!!!!」
すると、そこでレイバーはイザベルの振りかぶる剣をバトルアックスで薙ぎ払い、イザベルの体制を崩すと、再び先程の様なタックルを仕掛け、後ろへイザベルを吹き飛ばした。
来た……!!絶対チャンスは今だ……!!
「行くぞ……!!身体強化ッ!!!」
今が完全にチャンスだ、俺は足に力を込めると切れていた身体強化を再び使用し、体制を崩したイザベルの方へ走った。――――筈だった。
「なっ……!?」
しかし、そこで俺の足から力がふにゃりと抜け、なんとそのまま地面に倒れ込んでしまった。
く、クソ……!?ここで魔力が切れるなんて……!?
「……ッ、」
「……終わりです。」
そして、そうしている間に体制を立て直したイザベルは地面に倒れた状態の俺をターゲットに変えると、剣を振り上げ、俺の方へ突進してきた。
お、終わった……!!
――が、しかし、
「はぁぁぁぁぁッ、!!!」
そこでレイバーは決死の表情でなんとバトルアックスを構えると、俺を斬り殺そうとしていたイザベルの腹部を横一線に薙ぎ払った。
「……な、!?!?」
その瞬間、イザベルの上半身と下半身が完全に分裂し、真っ赤な鮮血が周囲に吹き出た。
ドスン。そう鈍い音と共に地面へ叩きつけられるイザベルの上半身。
ちょ、ちょっと待ってくれ……!?まさかこれがデスティニーレコードに書いていた……!?
嘘……だろ……?まさか俺のヘマのせいで……
「い、イザベル……許してくれ……俺は、俺はお前を人殺しなんかに……」
イザベルの身体を薙ぎ払ったレイバーも、真っ赤に染まったバトルアックスを無気力に手から地面に落とすと、膝から崩れ落ち、ゆっくりとイザベルの上半身へ寄って行く。
すると、そこでやっと、まるでイザベルが洗脳から解けたかのように、顔に表情が戻った。
「大丈夫、です。レイバー様……悪いのは全て、私なのですから……あの男に操られなければ……こんな事には……」
「イザベル……!!今は話すな……!!」
レイバーはそう叫ぶがイザベルは止まらず、ゆっくりゆっくりと言葉を放つ。
あの男……?先生と呼ばれていた人物の事か……?
「レイバー様、昔言って下さいましたよね……私の事は、何があっても、守って下さると……」
「もうすこしで……私はハヤトさんを殺し……人殺しになってしまって、いました……それから、レイバー様は守って下さいました……レイバー様、ありがとう、ございました。ずっと、ずっと大好き、でした、」
「……イザベル……?イザベル、、っ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!?!?!?」
そうして何も言わなくなり、動かなくなるイザベルの身体。それをレイバーは抱きしめると、何度も叫び声を上げた。その叫び声は、フレイラの町に何度響いたのだろう。
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