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第31話【いざサンボイルへ】


 次の日サンボイルへ遠征する事が決まった翌日。早速当日になると俺たちは朝からギルド横の馬車を停めている場所で色々と準備をしていた。


「ケティはこれだけの荷物で大丈夫か?」

「うんっ」

「セリエラ――は聞かなくても大丈夫そうだな」

「はい」

「よし、じゃあ俺も荷物を乗せるとしよう。」


 そうして俺は馬車の荷台に背負っていた剣や遠征用のバックなどを詰め込む。


「ハヤト、すごい量の荷物だね」

「まぁ、何日サンボイルに滞在する事になるか分からないしな。」


 俺は荷台にバックを押し込みながらそう返した。

 

 ――まぁ、実際のところデスティニーレコードを入れていたり、記されていた文章を見る限り5月2日に出発で5月3日に到着だから、食べ物も入れていたりしてるからなんだが。

 

 だから、その事を知る由もない2人はいつもの依頼を受ける時とさほど変わらない荷物の量だった。


「それに、何かあっても直ぐに対応出来ないとリーダーじゃないだろ?」

「おぉっ!さすがハヤトっ!よっ、かっこいい!!」

「ふはっ、だろう?」


 すると、そこでセリエラが冷たい無表情のまま俺たちの会話に割り込んで来る。


「あの、イチャイチャしているところ悪いのですが、もう受け付けの方が来ていますよ。」

「え、!?」


 俺は直ぐにギルドの入り口側に視線を向ける。

 するとそこにはいつ声をかけようかと悩んでいたのであろう気まずそうな表情で固まる受け付けのお姉さんの姿が。

 ――って、!?


「す、すまんっ!?」「ご、ごめんなさいっ!」

「い、いえいえ……パーティー内で仲が良いのは良いことですから。」


 申し訳ないぞ……というかめちゃくちゃ恥ずかしい。

 すると、そこで「おほん」と咳払いをして調子を戻したお姉さんがこう言って来た。


「――それで、実は今ギルドに皆様の見送りをしたいという冒険者様が来ていますので、その事を伝えにきたんです。」

「見送り?」

「はい。レイバー様とイザベル様ですね。」


 すると、そこで冒険者ギルドから2人の冒険者が姿を見せた。身体全体に鎧を纏ったその見た目。疑うよしもないレイバーとイザベルだ。


「おぉ……!俺たちがサンボイルへ行く事を知ってたのか?」

「いや、昨日お前らがそれを受け付けと話しているところを見てたからな。」


 あれ?そうだったのか?昨日は見かけていない様な気がするが……多分サンボイルへの遠征の件がいつお姉さんから話されるんだという考えで頭がいっぱいだったから気が付かなかったんだろうな。


「そうだったのか。すまん声をかけられなくて。」

「いやいや、全然良いんだぜ。俺もイザベルもフレイラ(こんな小さな町)で出来た冒険者の後輩が成長してくれていて嬉しいしよ。な、イザベル。」

「……(コク)」


「それに聞いたぜ?お前ら俺たちとの共同でのオーガ討伐、あの件で等級が中級下位に上がったんだってな。」

「その件も知っているのか。全く、あんな事で俺たちが中級へなんて恥ずかしいばかりだ。」


「うん、私もそう思うよ。」

「はい、私たちはまだまだ強くならないといけませんね。」


 俺の言葉に次いでケティとセリエラもそう言った。

 しかし、そんな言葉を聞いたレイバーは「ガハハハ!!」腰に両手を当てて笑うと、


「まぁまぁ、そんな考える必要は無い。俺だって中級に上がったきっかけはウェイリスとの合同討伐だしな。あの時はお前らと同じように怖がってばかりで何も出来なかった。」


「本当に悔しかったぜ。自分より年下の冒険者に守られてばかりで何も出来なかったのに、それを褒め称えられる様に中級へ昇級させられたんだからな。」

「レイバーにもそんな事があったのか。」


 ――なんか、レイバーがウェイリスさんをライバル視する気持ちも分かる気がするな。


「あぁ、あったあった。俺もお前らと同じヒヨコ同然だったんだ。――だが、今はこうして胸を張って冒険者をしている。だから、お前らも焦る必要は無い。今回のサンボイルでの遠征で少しでも成長出来れば十分だ!!」


「俺たちと違ってまだまだ先が長いんだからな!!」ガハハハと笑うレイバー。

 いや、お前もまだそれなりには先が長いと思うがな。――まぁでも、きっとレイバーなりに俺たちを心配してくれているのだろう。これには正直に感謝しておくか。


「あぁ、ありがとうな。焦らず、1歩ずつ進んで行く事にする。な、ケティ、セリエラ。」

「うんっ」「はい」

「よしッ!!いい返事だ!!胸張って行ってこい!!」

「皆様、気をつけて行ってらっしゃいませ。」


「あぁ、行ってくるぞ!!」


 こうして俺たちはフレイラから出発した。


 ♦♦♦♦♦


 そして、それから数時間後。時刻は一気に夜へと飛ぶ。

 あれからゆっくりと砂利道を馬車で進み続けていた俺たちは暗くなると危険だからという理由で一旦今日は進むのをやめることにした。


「地図を見る限りだと、明日の昼頃には着きそうだな。」

「そうですね。」「だねっ」


 俺があらかじめ持ってきていた食べ物を食べ終わったケティとセリエラは馬車の荷台で寝転がり、そして俺はそのあと片付けをしながらそう会話をする。

 ほら、やっぱり食べ物を持ってきて正解だったじゃないか。


「どうだ?あらかじめこうなる事を見越して食べ物を持って来てたんだぞ?凄いだろう?さすがリーダーだろ?」


 まぁ、実際はデスティニーレコードがあったからなんだが。


「「……」」

「あれ?」


 しかし、対して2人からの返事は返って来ない。

 俺は馬車を覗いてみると、既に2人は眠ってしまっていた。


「……まぁ、今日は朝からずっと馬車で移動だったからな。セリエラは御者の役割もしてくれたし。」


 ほんとに、セリエラは頼りになる女の子だ。


「じゃあ俺もそろそろ寝るか。」


 そうして俺も2人の横に寝転がろうとする――と、そこでふとデスティニーレコードが目に入った。


 そういえば、今日はまだ中を見ていなかったな。(朝起きてすぐ遠征用のバックに入れたから見るのを忘れていた)

 まぁどうせサンボイルで何をするとかが書かれているんだろうが、とりあえず見てみるか。


 そうして俺は軽い気持ちでそれを開く。


「……ッ!?!?」


 しかし、そこに新たに記されていた文章はこれだった。


 5月4日:依頼中にセリエラが死亡

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