第29話【昇級】
レイバーとイザベルに出会い、そして共に(と言っても活躍したのはレイバーイザベルのみだが)オーガ、オークを討伐した次の日。
俺たちはいつも通り冒険者ギルドに行くと、直ぐに受け付けのお姉さんに声をかけられる。
俺はそれがなんの用件か分かっていたが、聞いてみるとやはり昨日のオーガ討伐という功績により俺たち3人の等級を下級下位から中級下位に上げる。というものだった。
「ね、ねぇハヤト……?私たち、ほんとに等級上げてもらって良いのかな……?」
ギルド内の受け付けのすぐ後ろ側にある階段。
そこを上がると装飾が施された大きな扉がある。これは俺が冒険者になった日に下級を示す銅の板が付いたネックレスを貰った部屋だ。その部屋の前でお姉さんたちに連れられてきた俺たちは「少し待っていて下さい。」そう言われ、言われるがままにその扉の前にある椅子に座る。
そこでケティは少し不安そうな表情をしながら俺にそう聞いてくる。
「確かに、昨日のあれは俺たちの力じゃなくてレイバーとイザベルの功績だ。だけど、そこに居合わせていたのは俺たちであって、ギルド側の人間が例え俺たちが説明したとしてもそこに居ないのだから、報酬も功績も全員同じになる。こういうもんなんだよ。」
まぁ正直なところ俺も思っている事はケティと同じだけどな、デスティニーレコードに「4月30日:オーガ討伐の功績により中級下位へ昇格。」予めそう記されていたから驚いていないだけで。
「でも、それにしても昨日のイザベルさん。本当に凄かったですよね。」
「あぁ、色々とな。」
俺がそう返すと、ケティの顔色が青ざめる。
そうだ、こいつ昨日オークたちの肉片を見て気持ち悪くなったんだよな……俺もあれはキツかったぞ、まだ身体から血の匂いがするからな。
「そ、それもそうだがレイバーも凄かったよな!!」
だから俺はケティのトラウマが蘇らない様に急いで話題をイザベルからレイバーへと逸らす。
「はい、イザベルさんもレイバーさんも。この町にはあんなに強い冒険者の方々が居たなんて知りませんでした。」
「な。でも、実はあの2人がフレイラのナンバー2とナンバー3って言われているらしいぜ。」
「そうなんですか?」
「あぁ、俺も昨日家の方向が同じレイバーと帰っている時に教えて貰ったんだが。」
フレイラで強いと言われている冒険者は1にウェイリスさん。2にイザベル。3にレイバーなんだとよ。
(なんで2番目が俺じゃなくてイザベルなんだとレイバーは少し腹を立てていたが。)
「でもさ、ってことはフレイラに中級冒険者自体が結構少ないって事なのかなっ?私たちまだ全然他の冒険者の人たちと仲良くなれてないから分からないけど。」
「あぁ、だろうな。というか、普通ある程度の力を持ってるやつは他の街へ行くだろう。そっちのが報酬もデカいんだから。――それこそナビレスとか。」
「ナビレス……か。ウェイリスさん、大丈夫かな……」
「「……ッ!!」」
確かに、心配ではある。
あの出来事からウェイリスさんの事は勿論、ナビレスの話題自体みんなが忘れたかのように話されなくなっていた。
だが、ウェイリスさんは上級冒険者。きっと、きっと上手くやってるに違いない。そして忘れた頃に帰ってくるんだ、「ウェイリスは帰ってきたわよ」ってな。――
すると、そこで目の前の扉が開き、中からお姉さんが顔を出した。
「皆様、お待たせ致しました。昇級のご準備が出来ましたのでお入り下さい。」
「お、行くぞケティ、セリエラ。」
「うんっ」「はい」
そして俺たちは椅子から立ち上がり、言う通りに扉の中へ入る。
するとそこは真ん中に大きな椅子があり、そして壁のところどころに装飾やおそらく歴代の強い冒険者?の肖像画が額縁に入れられて飾られているという、フレイラではウェイリスさんの屋敷以外では絶対に見なさそうな豪華な部屋だった。
「では、まずはそこに横一列に並んで、首につけた下級のネックレスを私に渡して下さい。」
「あぁ、分かった。」
そうして横一列に並ぶと俺たちは首からネックレスを外し、お姉さんに渡す。
「ありがとうございます。では、これよりハヤト様、ケティ様、セリエラ様の中級下位への昇級を執り行います。」
そうして、そこからお姉さんは長い文章を読み始める(ここは正直意味がよく分からなかったから割愛させてもらうぞ)
そして、読み終わると、
「――では、中級を意味するネックレスをお渡し致します。」
俺たちは手渡しで銀の板が付いたネックレスを渡される。
これはレイバーとイザベルが付けている物と全く同じものだ。
「これからも頑張ってください。皆様の冒険者ライフに幸あれ。」
こうして俺たちは中級下位へと昇級をした。
♦♦♦♦♦
そしてそれから1階へ降り、冒険者ギルドから出ると俺は2人に「今日は休みにしよう。2人とも身体をしっかりと休めてくれ。」そう告げる。
実は、元々今日は休むつもりだった。(等級の用事があるから来たというだけで)
そう、俺にはこれから色々と準備をしたい事があった。
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