第26話【オーガの痕跡】
先程言った事を繰り返し言うが、ウェーグル森はいつも俺たちがワーウルフなどと戦う時に行くヴェロッサ森とは違い、整備された道すらも無い深い深い森だ。
あれから正式に俺たち3人とそこに中級冒険者のレイバーとイザベルが加わるという形でオーガの合同討伐を受け付けのお姉さんに受理してもらうと、早速オーガが出たというウェーグル森へ向かった。
――――のは良いんだが、
「おいお前ら何やってるんだ?オーガはこの先に居る、ほら着いてこい!」
「あ、あぁ……」
俺とケティは早速ウェーグル森の入り口(というか道が無いから草原から森になる境目と言った方が正しそうだが)を目の前にして早速怖気付いていた。
「ハヤトさん、ケティさん。早くレイバーさんたちを追いかけましょう。ウェーグル森は深いし木と木の感覚が狭いので仲間を見失いやすいですよ。」
「分かってる、この森を主戦場にしてた父から話はよく聞いてたからな、だが、それでもよ、」
さすがにこんな深い森となると冒険者という仕事に慣れてきた俺でも入ることに躊躇してしまう。
セリエラは何百年も森の中で生活してきたかもしれないが、俺やケティは違うんだよ。
――だけど、結局はセリエラの言っている事が正しい。それは揺るがぬ事実だ。中級以上の討伐依頼となってきたら余計に仲間同士が離れる事は命取りな行為だろう。
だから俺は「すーっ、はぁ」深く深呼吸をすると覚悟を決めた。
「――よし、行こう。ほらケティ、行くぞ。」
「ふぇっ!?う、うん……で、でも私やっぱり怖いよ、」
「はぁ、たくしょうがない幼なじみだな。ほら、手握って俺が引っ張ってやるから大丈夫だ。これなら安心だろ?」
そう言いながらケティの手を握る俺。
あ、すげぇ汗かいてる、、って、!?なっなに考えてんだ俺は!!
「ほ、ほら歩くぞ!」
「ふ、ふぁい……!」
「了解です。――ですがハヤトさん、ケティさん。イチャイチャのし過ぎでオーガや他のモンスターに奇襲を仕掛けられないように周りに注意は向けておいて下さいね。」
「「……ッ!?い、イチャイチャなんてしてないぞ!?(ないもんっ!?)」」
こうして俺たちはウェーグル森の中へと入って行くレイバーとイザベルを追いかけた。
♦♦♦♦♦
そしてそれから数十分、来た方向が分からなくならない様にゆっくりと後ろを確認しながらレイバーたちと共にウェーグル森の深く深くへ向かっていると、そこで俺たちはある場所だけ生えている木が折れている事に気がついた。
「おいハヤト、覚えておけ。森にオーガが現れた時はだいたいこんな木を倒した痕が見つかる。あいつらは身体がデカいからこんなにぎゅうぎゅうの木の間は通れん。だから倒して進むんだ。」
「なるほど、って事はこれの続く先にオーガが居るって事か?」
「あぁ、ここまで来れば後はオーガを片ずけるだけの簡単な仕事だ。」まるで道のようにまっすぐ続いている倒された木々を見ながら俺の質問に対してレイバーは頷いた。
「確かに、この倒された木の向こうの方からモンスターが動いている音が聞こえますし、間違いないでしょう。」
それに対して、セリエラもそう反応を見せる。
「お、そうかお前エルフか。どうりで耳が長い訳だぜ。」
「……前会った時に分からなかったんですか、?」
「ん?あぁあの時はハヤトとケティを運ぶことに意識が行ってたからな、気が付かなかったんだ。」
「でも、それならセリエラはお前らの中じゃ1番強いのか?まぁ当たり前か、何百年も生きているんだろ?」
「はい、私が1番長く生きていますし、1番強いです。」
「……」「……」
おいおいそんな当たり前みたいな感じで言うなよ、なんか自信無くなってくるじゃねぇか。
「がははは!!自信があるのは良いことだぞ!!その自信をイザベルにも分けてやってくれ!!」
「――――と、だが、スマンが今回のオーガ討伐に関してはお前らは手出しするなよ。」
「「え……?」」
い、いやなんでだよ……?それなら俺たち来た意味なんて――
「来た意味なんて無い。なんて考える必要はねぇからな。」
「……ッ!!」
「まぁ、ここらで俺がオーガをお前らの目の前で完封するのを見せてやらないと、先輩としての顔も立たんしな!!ガハハ!」
「――それに、ほら。俺たちがずっと話して向かって来ないからって、向こうの方からやって来てくれたみたいだぜ。」
向こうの方からやって来てくれた……?
そのセリフを聞いた瞬間、俺たちはすぐにレイバーの視線の先を追いかける。
するとそこには、濃い緑色の皮膚に4メートルはありそうな身長、ありえない大きさの肩幅、頭に生えた2本のツノ。
そして手には引き抜いたのであろう木を持った大型モンスター、オーガがこちらへ木が倒されて出来た道を通りながら向かって来ていた。――――って、!?
「おい、、なんだよあれデカすぎだろ!?」
「こ、怖いっ、」
「す、すいません……!?私とした事が会話にばかり意識を向けてしまっていて近付いてくる気配を感じ取れていませんでした……!!、」
すぐに俺たちに謝るセリエラ。
まぁ、人間よりも遥かに耳がいいエルフとして、申し訳ないんだろうな。――と、それは大丈夫だがほんとにいくらなんでもデカすぎるぞアイツ……っ
しかし、焦る俺たち3人とは反対にレイバーとイザベルは表情ひとつ変えない。
「大丈夫だ、失敗は誰にでもある。これを活かして次に繋げれば良いんだ。俺があいつぶちのめしてやるからよく見とけ。」
ガハハと笑いながら落ち込むセリエラの頭を撫でるレイバー。
それに対してセリエラは心なしか頬が赤らめている様な気がした。
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