第22話【変わり果てた街】
「いや、なんかね?町の色んなところから黒い煙が出てるの。」
「……ッ!?」
黒い煙だと……!?それって、、
本当に、起きたってのか……?
「すまん、俺にも見せてくれ」
「う、うん、」
俺は馬車の荷台から中腰で立ち上がると3人が覗いてある窓の方に寄る。
そして覗いてみると――そこにはフレイラよりも栄えている町のいたるところから黒煙が上がっているという地獄の様な景色が広がっていた。
おい……普通ゴブリン・ロードでここまでなるのか……?
とにかく、絶対に急いだ方が良いだろこれ。
「お、おいウェイリスさん。馬車の速度を上げ――」
「分かってるッ!!!」
「「……ッ!?」」
数日間一緒に生活してきたが、その間に見せたことも無かった表情で叫び、馬車の速度を魔法で上げるウェイリスさん。
「お母様、お父様……!!」
当たり前だよな、自分の両親があんな場所にいるんだ、心配になるに決まってる。
とにかく、今はひとりでも多くの人が無事という事を願うしか無さそうだな。
そう思った時、これまでずっと身体を鍛えてきたがそれでも自分は無力だという事を身に染みて実感した。
♦♦♦♦♦
それから数分後、水の都ナビレスの正面出入り口に到着した。のだが、
「なんだ……これ」
「こんなのって、……っ」
「これは、、酷いですね」
俺たちは馬車から降りると出入り口から続く街並みを見るが――全ての建物から炎と黒煙が上がり、古い建物は崩れ、そこらじゅうで人間たちが血を流しながら倒れる、まるでこの世のものとは思えない地獄絵図がそこには広がっていた。
今日は雲ひとつ無い快晴だったというのに、ナビレスの上空だけは灰色の雲か霧かが覆っている。
「貴方たち、これから冒険者ギルドに行くわ。それで状況を確かめましょう。」
しかし、そんな状態でもウェイリスさんだけは取り乱さずに冷静だった。
きっと先程の叫びで気持ちを切り替えたんだろう。
さすが上級冒険者だな、実力だけじゃなくて精神も強いのか。
「ウェイリス何度かこの街に来た事があるからギルドの場所は分かるわ。着いてきて。」
「あ、あぁ。行くぞケティ、セリエラ」
「う、うん、」「了解です。」
こうして俺たちは焦げ焼けた匂いの漂う大通りだったであろう道を歩いて行った。
それからしばらく焼け焦げた街並みを見ながら歩いていると、ひとつだけ崩れていない建物を見つける。
「ウェイリスさん、あの建物って」
「えぇ、あれがナビレスの冒険者ギルドよ。本来なら水の都に合わせて水色の外壁で綺麗なんだけれど。」
そう言いながら眺めるギルドの壁は焦げて黒くなっている。
だがきっと中に防御魔法系の魔法を使える冒険者がいたんだろう、周りの建物がこれだけぐちゃぐちゃになっている中で倒壊していないのは流石だ。
もしかしたらこの中になら生き残った人たちが居るかもしれない……!!
「よし、入るぞ……!」
「そうね、入りましょう。」「うん……っ」「はい。」
そうして俺たちは焼け焦げて倒れている入り口の扉を踏み、そのまま中へ入る。
すると、意外にも中は綺麗で、机や椅子が多少倒れてはいるがそれくらいだ。
中には冒険者が数人と逃げ込んできたのであろう人たちが数十人ギルドの真ん中に固まるようにして座っていた。
そこで、俺たちに気がついたひとりの冒険者がこちらへ近寄ってくる。
「討伐組の人間か……?ゴブリン共はもう全滅したのか……?」
ゴブリン共……?……ッ!!やっぱりゴブリン・ロードが……それに討伐組ってのはなんだ……?
「いや、違う。俺たちはフレイラからナビレスへ来た冒険者だ。――――一体何が起こった?」
俺は近寄って来た冒険者にそう尋ねる。
「ゴブリン共が……急に街へ押し寄せてきたんだ……それも怒り狂った状態で、」
「要するに、ゴブリン・ロードが起きたという事か……?」
「いや、正直有り得ないが、、あぁ、」
こうして、今回もデスティニーレコードの通りになった。
「……クッ、」
俺は下唇を噛み立ち尽くす。
すると、そこでウェイリスさんが会話へ入った来た。
「そんな事はもう起きてしまった後の今言ってもどうにもならないでしょ。それよりも他の冒険者たちは?ナビレスは冒険者の数が多かったはずよ。」
「あぁ、他の奴らは全員ゴブリンたちと戦う為に外へ出ている、ここに残ってる俺たちはこの逃げてきた人たちを守る為、そしてゴブリン共と戦うには実力が足りないから残されたんだ……」
そう言い、「下級」を意味する銅の板が付いたネックレスを見せてくる冒険者。
確かに、ゴブリンは単体だと弱いが群れになると頭が良い為一気に厄介になる。それも中級モンスターを相手にするのと変わらないくらいには。
確かに、下級冒険者などが戦いに混じったところでかえって邪魔になるだけか、
「という事は、ここに居る人たちが生き残りって事?」
「あぁ、他はほとんど殺された……ゴブリン共、街に火を放ちやがったんだ……」
まてまてまてまて。本当に言っているのか?ナビレスだぞ?何千人も住人の居るナビレスで生き残りがこの数十人……?
「他にも冒険者ギルドがあってそこに逃げ込んでるとかは、、無いのか……?」
「えぇ、ナビレスに冒険者ギルドはここの1箇所だけよ。」
「……ッ、」
嘘、だろ……?
「――――はぁ、はぁ……」
「……ッ!!誰だ?」
するとそこでひとりの冒険者がギルドに入ってきた。
身体中から血を流して今にも倒れそうに荒く息を吐いている。
「って、!?大丈夫かお前!?」
俺はすぐに近寄り、身体を支えようと手を差し伸べる――が、血だらけの冒険者はそれを断り、「そんな事よりも」と喉を詰まらせながらこう言った。
「端的に、告げ、る……はぁ、はぁ……俺たち、討伐組は……全滅、した……」
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