第19話【体力量と魔力量】
ワンドール家の屋敷は正面から見て凹の形をしており、真ん中に周りが囲まれた中庭がある。
食事を終えた俺たち3人は「魔法の腕を見てもらえる」という事でウェイリスさんとその中庭に来ていた。
「よし、じゃあまずは今の実力を見るわ。だからうーんそうね――ケティから順番に手の上に魔力を出してみて。」
早速ウェイリスさんは俺たちにそう言う。――のは良いが……
なんだよ手の上に魔力出すって……?そんなのした事無いしただでさえ魔法の扱いは苦手なんだから絶対出来ないぞ……?
しかし、対してケティは笑顔で、
「うん分かったっ!やってみるね!」
そう言うと右手の手のひらを上にする様に前に伸ばし、集中する為か目を瞑る。
そして、数秒するとなんと本当に手のひらの上に薄い黄色の球体が浮かび上がった。
って、まさかこれが魔力……!?
「おっ、まぁ筋は良いんじゃない?魔力の質も悪くは無いようだしね。」
「やったっ!こうやって魔力を出すのは初めてだったからちゃんと出来るか不安だったけど、良かったっ!」
「でも、魔力の量はまだ少ないわ。ケティはそこを鍛えて行きましょう。」
「うんっ!」
「じゃあ次はセリエラね、ケティと同じ様にしてみて。」
「分かりました。」
そうして続いてセリエラも手のひらを上にすると、ケティよりは大きくは無いが同じ様に魔力を具現化させる。
「まぁ、とりあえずは良いわ。それに貴方エルフでしょ?確か札か何かを使うのよね。それなら無理に鍛える必要も無さそうだし?」
「そうですね」
おいおい……2人ともそんな当たり前みたいにしてるけどよ……なんかこの流れだと俺も出来ないとダメみたいな感じになるだろ……!!
「じゃあ最後にハヤト。してみて。」
「うぇっ、!?あ、あぁ」
ク……絶対出来ないって、――――あぁもうどうにでもなれだ。一か八かやってやる……!?
「ふぅ」俺は深く呼吸をすると手のひらを上にして力を込める。
「ぐぬぬぬぬ……」
しかし、やはりどれだけしても全く魔力を具現化させる事は出来なかった。
「はぁ……やっぱりね、」
分かりやすくガッカリするウェイリスさん――って、今やっぱりって言ったか!?なんだよその元から期待してませんでしたみたいな!?
「おい、やっぱりってなんだよ……?それは失礼じゃないか?」
「いや、ツバメさんも剣術こそピカイチだったけど、魔力だけは本当に無かったから、その息子のハヤトも多分ダメだろうなとは思ってたの。」
「……やっぱり父もダメだったんだな」
「えぇ、初級魔法がすら無理だったわ」
しかし、そこでウェイリスさんは人差し指をピンと立てるとウインクをしながら明るい声でこう言う。
「――まぁでも、身体強化とかの放たない系の魔法は使えるのでしょ?」
「まぁ、それは大丈夫だが……」
それでも魔力量が少なすぎるせいで全然その状態を維持する事は出来んがな。
「なら大丈夫よ!ウェイリスに任せなさいっ!」
そうしてウェイリスさんの魔法特訓が始まった。
♦♦♦♦♦
しかし、それから俺は何故かひたすら剣を振り続けさせられていた。
「はぁ……はぁ……」
剣で空を斬りながら隣りを見るとそこではケティとセリエラに対してウェイリスさんが付きっきりで魔法の特訓をしている。
――ちょっと待て。まさか俺見捨てられたか……?
さっきウェイリスさん任せなさいって言ってたじゃん!!普通1番出来ない俺に付きっきりになる感じじゃないのか?それに、これはもう魔法の特訓でもなんでもねぇよ!!こんなのほぼ毎日空き地でやってるってッ!!(しんどくなってもさせ続けさせられる事以外)
「もう……ダメだ……」
俺はそこで体力の限界に達し、膝から崩れ落ちながら剣も地面に落とす。
いくらなんでも……ハード過ぎるぞこりゃ……
しかし、それに気づいたウェイリスさんはそんな俺に全く気遣いなどせず、
「ちょっと、誰が休んでいい?って言ったの?ほら!早く立ちなさい!そこからが大切なんだから!!」
「う、嘘だろ……」
「ね、ねぇウェイリスさん……?ハヤトも本当に疲れているみたいだし、頑張ってるし1回休ませてあげた方が良いんじゃないかな……っ?」
そんな光景にケティもそう言う。
しかし、対してウェイリスさんはため息を吐くと、
「……分かったわ。なんで私がハヤト、貴方にだけひたすら剣を振らせ続けているのかを教えてあげる。」
それから話を聞くと、どうやらこれはただ体力や筋力を鍛えるだけにさせているのでは無く、魔力量の増量の特訓だという事が分かった。
「で、でもよ……?ただこうやって剣を振るだけで魔力量が増えるもんなのか……?」
それならこう、身体強化の維持を出来るようにひたすら身体強化を使うとかの方がいいはずだし、第1もし仮にこれで魔力量が増えるんならもう増えてないとおかしいだろ。
すると対してウェイリスさんは痛いところを突いてきた。
「貴方、いつも体力の限界だってなったらやめてるでしょ?だから魔力量が増えないのよ。」
「……ゲ、」
「良い?魔力というのは通常体力が底をついた時に消費される物なの」
「火事場の馬鹿力とか言うでしょ?ああいうのは大体体力じゃなくて魔力が消費されてる場合が多いわ」ウェイリスさんはそう付け加える。
「そして、その魔力量は体力量と同じで何度も消費しないと量は増えない。でもだからって貴方みたいな魔力量の極端に少ない人間に身体強化の様な魔法を使った魔力消費の鍛え方をしてしまったら何度も空になった魔力を回復させる為にマナポーションを使わないといけないでしょ?あのポーション、他のと比べて高いのよ。」
「だから、体力を空にしてから更に身体を動かして魔力を消費させる事で、魔力量を増やすって訳。分かった?」
「ま、まぁ大体は……」
「ほら、分かったら休んでないでやりなさい!!」
「うぅ……くっそ、!?もうやけくそだ!?やってやる!!」
そうして俺は立ち上がると剣を再び握り、それを振り上げ空を斬るのだった――――
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