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カミサマの娘  作者: はむばね


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第21話 少女とカミサマ③

 真実を。


 そう望んだ、少女に対して。


「承知した」


 恭しくカミサマが頭を下げる。


「ありゃ、意外とあっさりなんだ?」


 拍子抜けした様子で、少女は冗談めかして笑った。


「真実を知りたくばカミサマを倒すのだー! みたいな展開はないの?」


「今更、お前がカミサマを倒せることなど疑いようもないからな」


「そ?」


 小さく首をかしげる。


「それに……お前は、もうほとんどの真実に気付いているだろう?」


「んー、どうだろ? じゃあ、答え合わせしてもらおうかな」


 顎に指を当てた少女は、どこまでも気軽げだった。


「じゃあ、まずはこのセカイのことだけど……」


 慣れ親しんだ砂だらけの景色を、少女はぐるりと見回す。


「世界が滅んだのは本当。でもそれはカミサマが滅ぼしたんじゃなくて、人間同士の戦争で。それで、ここはその前に作られてたシェルター。このセカイは、全部カミサマがそういう風に見せてるだけの……言わば、箱庭」


 淀みなく言って、少女は薄く笑った。


「って、ところかな?」


「その通り」


 カミサマの肯定と共に、セカイは一変する。


 青いソラが消え、代わりに天井が現れた。

 古びた金属製だ。


 砂が地面に吸い込まれていき、サバクも消失する。

 その下からも、同じく金属製の床。


 タイヨウは巨大なライトになった。


 ただ、庭を含む一軒家だけはそのままだ。

 端が見えないほど広大な灰色の空間に、これまで以上にポツンと寂しく佇んでいるように見える。


「よくぞ、気付いた」


 カミサマの言葉に、少女はプッと吹き出した。


「こんなのは、気付いて当たり前……ていうか、気付くように私に色んなことを教えてたんでしょ? 歴史の教科書は世界大戦で終わってるし、工学系の知識なんかも覚えさせてさ」


 ゆっくり、カミサマの元へと歩いていく。


「そしたら当然、わかっちゃうよね」


 目と鼻の先まで歩み寄り、産まれた時から傍にいた存在の胸に手を当てた。


「だって、カミサマさ」


 小さく微笑む少女の手に伝わるのは、冷たく硬い感触だ。


「こんなにわかりやすく、ロボットなんだもん」


 カミサマの全身は、金属で構成されていた。

 壁や床のようにくすんだものではない、ピカピカに光を反射する銀色。


 シルエットは人に似ているが、明らかに人とは異なる構造だ。

 人で言う目に当たる部分には赤いセンサーが二つ付いており、口に当たる部分にはスピーカー。


 その顔が表情を形作ることは、決してない。


「とはいえ、小さい頃は私も大きくなったらカミサマみたいになるんだと思ってたんだけどね」


 カミサマの胸に手を当てたまま、少女はクスクスと笑う。


「ちなみに、カミサマの正体はこのシェルターを管理するメインシステムとかなのかなー……って思ってるんだけど」


 目の前の真っ赤なセンサーを、間近で見据えた。


「合ってる?」


 瞬きでもするかのように、センサーが一瞬明滅する。


「……その通りです」


 それから、カミサマはゆっくりと首肯した。


「正確には私の本体はこのシェルターそのものであり、この身体はインタフェースの一つに過ぎませんが」


 その口調からは、抑揚と感情が抜け落ちている。


「やめてよ、その口調。なんだか、カッパとテンシを足して二で割ったみたい」


 少女がおかしそうに笑った。


「本来、人類は私にとってのマスターでありますがゆえ……とはいえ」


 そこで、カミサマは一旦言葉を切る。


「お前がそう望むのであれば、そうしよう」


 いつもより勢いはないものの、カミサマの口調が元のものに近くなった。


「うんうん、そうでなくちゃ」


 少女が満足気に頷く。


「さて、と」


 踵を返して三歩、ゆっくり歩いてカミサマから離れた少女。


 カミサマの方へと振り返って、仕切り直すかのようにパンと手を打ち鳴らした。


「私が持ってる答えって言っても、これくらいしかないんだけど?」


 両手を軽く上げて、降参するようにひらひらと振る。


「いいや、満点だ」


 表情こそないが、カミサマは満足げな様子だ。


「そこまでわかっていれば、私から付け加えることなどもうほとんど残ってはいない」


「あり、そうなの?」


 少女が意外そうに首を傾ける。


「もっと、膨大な量の秘密が明かされるのかと思ってたんだけど」


「そんなものだ。世に、真に語るべき事などそう多くはない」


 カミサマが首を横に振った。


「ましてこの偽物のセカイともなれば、尚更だ」


 冗談めかして肩をすくめる。


 少女の頬が、ピクリと動いた。


「……けど、『ほとんど』残ってないってことはさ。少しは付け加えることもあるんでしょ?」


「あぁ」


 少女が一瞬見せた反応に、気付いているのかいないのか。


 少なくもそこで言及することはなく、カミサマは短く答えた。


「私から語るのは、お前の両親についてだ」

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