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カミサマの娘  作者: はむばね


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第16話 少女とセカイ③

「でぇぇぇぇい!」


 ジュモクの枝からダイブしながら、少女はミニカミサマの後頭部に膝蹴りをお見舞いした。


 ダメージで滞空状態を維持出来なくなったらしきミニカミサマと共に、落下する。


 スカートが捲れ、太ももが顕になった。

 かつてそこに巻かれていたナイフホルダーは、現在ガンホルダーに取って代わられている。


 少女が手にするには少々無骨な拳銃を右手で引き抜き、着地と同時にミニカミサマの腹部へと銃口を押し当てた。


 ガゥン!


 引き金を引いたのは一度だけ。


 十二分に鍛えられているとはいえ、少女が片手で扱える拳銃にそこまでの威力はない。

 ミニカミサマの強度も本家の二分の一に落ちているのかもしれないが、それでもその表皮を貫くには足りなかった。


 しかし、衝撃は浸透する。

 少女は、その内部構造を破壊した手応えを確かに感じていた。


 果たして、それっきりミニカミサマは完全に沈黙した様子だ。


 しかし、すぐに別のミニカミサマが襲ってくる。

 左右同時に、二体。


「ふっ!」


 ガゥン! ガゥン!


 今度は、二度の銃声が響いた。


 しかし、実際放たれた銃弾の数は四だ。

 素早く左手にも拳銃を取った少女が、左右全くの同時に引き金を引いた結果であった。


 先程とは異なり距離を置いての銃撃であったため、ミニカミサマを破壊するには至らない。


 しかし、二体の動きは一瞬だけ止まった。

 そして、少女にとってはそれで十分である。


 右から来ていたミニカミサマを無理矢理引っ掴み、そのまま左に向かってぶん投げた。

 ミニカミサマ同士がぶつかり、お互いふらつく。


 直後、少女は上空を睨んだ。

 一体のミニカミサマが、多数の石を抱えて少女の頭上に到着したところだ。


 それが降らされるより前に、少女は手近なジュモクに足をかけた。

 ほとんど駆けるようにジュモクを登り、跳ぶ。


 その頃になってようやく少女の動きに反応したらしいミニカミサマが少女の方を向こうとするが、遅い。

 少女の踵落としがミニカミサマを叩き落とした。


 持っていた石ごと落下し、先程ぶつかり合った二体と共に石に埋まる。


「んっ……」


 落下途中で掴んだ枝に片手でぶら下がりながら、少女は視界の端に新たなミニカミサマの姿を捉えた。


 反動を付けて、枝の上へと登る。

 ミニカミサマの突進をかわし、ついでに隣の枝に向けて跳躍。


 すかさずもう一体現れたミニカミサマが、少女が着地するはずだった枝をへし折った。


「おっと」


 空を切る少女の足。

 為す術もなく落下する。


 しかし二歳の頃からカミサマに放り投げられ、三歳になる頃には五点着地を体で覚えていた少女にとってそれは何の危機でもなかった。

 空中で体を捻り、一回転しながら着地する。


 前方から突っ込んでくるミニカミサマを視認。

 同時に背後からもミニカミサマが迫ってきているのを気配で察知した少女は、拳銃をガンホルダーに戻した。


 諦めたわけではない。

 不要と判断した結果である。


 ジリジリと摺足で、距離を調整する。


「よっ」


 軽い掛け声と共に、直上へと跳んだ。


 前後から突進してきたミニカミサマが、勢いそのままに衝突し合う。

 もし直撃していれば少女とて無事に済まなかっただろう威力のタックルが、そのままミニカミサマ同士へと向けられた。


 お互い大きく弾かれたミニカミサマを、一体ずつ処理。

 腕を掴み、身体ごと回転することで勢いを付けて放り投げる。


 狙う先は、三体のミニカミサマが石に埋まってオブジェを形作っている場所だ。

 立て続けに二体、オブジェに衝突する。


「これで仕上げ、っと」


 少女が、ポケットの手榴弾を取り出すと同時にピンを抜いた。


 投擲は、アンダースローでの軽いものだ。

 狙い違わず、新たに埋まるミニカミサマの数を増やしたオブジェの天辺に落ちる。


 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!


 けたたましい轟きが、空気と周囲のジュモクの枝葉を震わせた。


 爆風に前髪を逆立てながら、しかし少女は僅かに目を細めただけで身動ぎもしない。


 手榴弾が生み出した煙が、徐々に晴れ始めた。

 現れたミニカミサマ、五体。


 石の破片に塗れて、全て完全に沈黙していることを確認する。


「……ふぅ」


 そこでようやく、少女は軽く息を吐いて全身に張り巡らせていた力を緩めた。


 軽くストレッチを行い、各所の状況を確認する。

 特に問題がある部位はないようだった。


 元より、この程度で故障するような鍛え方はしていないが。

 それどころか、汗一つかいてすらいない。


「……はっ」


 ふと、少女が笑った。


「どうぞご自由に行きなさい、ってか」


 恐らくは見事にカミサマの狙い通りになっていることについての、苦笑である。


 カミサマの二分の一という性能は、今の少女からすれば弱すぎる。

 何の作戦も立てずとも、反射でどうにか出来るレベルだ。


 今更そんなものが少女にとっての試練になるなどと、カミサマが期しているとは考えがたい。


 つまりは少女が今からやろうとしていることなど端っからカミサマの想定通りであり、むしろきっかけ……あるいは言い訳の余地を作ってくれたのだろうと思う。


 目の届かないところに行くことを許可したカミサマが悪いのだ、と。


 少女がわざわざ挑発に乗ったふりなどせず、素直に要望を伝えていたとて同じ結果になっていたに違いない。


「まったく、クソッタレだ」


 小さく呟く。


 手の平の上で転がされている感覚への、不快感はある。


 それでも少女は、家とは真逆の方向に対して足を踏み出した。


 少女の知りたいことを教えてくれるというのであれば、是非もない。

 『それ』に少女が気付き始めていることに、カミサマが気付いていない……などとは、微塵も思ってはいない。


 だってカミサマは、カミサマなのだから。


 しばらく足を進めても、少女を止める存在は現れない。


 やはり、最初からこうなるよう誘導されていたのだとの確信を得る。


 もっとも。


 仮に見咎められたとしても、少女が自主的に歩みを止めることはなかっただろう。


 何をするつもりだと問われれば、こう答えるつもりでいた。


 ただの家出だよ、と。

ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。

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