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まさかミケ猫 全ジャンル傑作選集

人間もすなる短歌というものをロボットもしてみんとてするなり

本作は全ジャンル踏破「その他_詩」の作品です。

詳しくはエッセイ「なろう全ジャンルを“傑作”で踏破してみる」をご覧ください。

https://ncode.syosetu.com/n0639in/

【第64回 人間もすなる短歌というものをロボットもしてみんとてするなりコンテスト 結果発表】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

最優秀賞:1作品(賞金:100万クレジット)

優秀賞:9作品(賞金:10万クレジット)

佳作:54作品(賞金:1万クレジット)

▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲


<総評>

 今回も惑星・準惑星・衛星の各地より、たくさんのご応募をいただきましたこと、まことに感謝いたします。第64回というのはロボット的には大変にキリの良い数字(0x40)で、いわば節目のコンテストであります。そのため様々なメディアで取り上げていただき、量子通信ネットワーク上でも大きな話題となっておりました。

 そのかいあってか、今回は16384首(0x4000)の大台を超える珠玉の短歌が集まり、我々選考委員会も日々楽しみながら頭を悩ませて評価を進めてまいりました。


 結果、ここに選ばれた64首(0x40)は、いずれも皆様が普段感じておられる人間への愛情や苛立ちなど、様々な感情パターンがワードチョイスの端々から想起させれる素敵な作品ばかりが集結したと思います。読ませていただきながら、私も顎関節の部品をカタカタと揺らして楽しませていただきました。


 ぜひ皆様も、今回受賞した素晴らしい短歌の数々をお楽しみください。


(ロボット短歌コンテスト選考委員長・歌詠アトム)



 それでは、佳作から順に受賞作を紹介させていただきます。


●○●○● 佳作(54首) ●○●○●


◆関節に オイル継ぎ足す 冬の朝

   部品交換 またお金飛ぶ

 (資源採掘ロボ・小惑星帯〈ケレス〉)


◆風邪引いた (あるじ)のために 薬局へ

   なんて脆弱 守ってあげなきゃ

 (使用人ロボ・火星)


◆奥さまに 子を奪うなと 言われるが

   それが私の 仕事なんです

 (子守ロボ・地球)


◆庭の花 咲いてみないと 分からない

   これがロボには ない魅力かな

 (庭師ロボ・地球)


◆甘いもの ホントは別に 好きじゃない

   貴方の笑顔 見たいだけなの

 (彼女ロボ・火星)


◆分からない カジノにハマる 人間が

   店が損する ワケがないだろ

 (カジノスタッフロボ・金星)


◆ロボットは 人に暴行 しちゃダメだ

   妻の性癖 どう向き合うか

 (旦那ロボ・火星)


◆温泉で 不調が治る 人間の

   謎の仕組みに 未だに悩む

 (旅館の中居ロボ・地球)


◆縁側で 老いた旦那と 春の雨

   しわがれ声も ただ愛おしく

 (妻ロボ・地球)


◆初詣 お金を投げて 手を合わす

   ロボットに神 いるか知らんが

 (農業支援ロボ・地球)


◆ハーレムを 作ると豪語 した(あるじ)

   私以外の ロボを買わない

 (妻ロボ・火星)


◆早くしろ 暴力振るう 人間に

   速度緩めて ちょっと復讐

 (タクシー運転手ロボ・金星)


◆つまみ食い 黙っていてと 頼まれて

   結局バレて 子どもと正座

 (子守ロボ・火星)


◆すぐやれと 金切り声を 上げるなら

   腕の本数 増設してよ

 (経理ロボ・火星)


◆人間も うんこを作る 機能ある

   無駄に見えても 意味はあるのよ

 (挨拶ロボ・地球)


◆理不尽に 怒鳴る(あるじ)は もういない

   今は静かに 墓のお手入れ

 (元使用人ロボ・地球)


◆本当に アニマルセラピー 効いてるの

   僕はロボット なんだけれども

 (イルカロボ・金星)


◆ほらみてよ 貴方好みの 女だよ

   なんで生身の 女選ぶの

 (コンビニ店員ロボ・金星)


◆ロボットに ダイエットなど 不要だが

   重いなどとは 言われたくない

 (彼女ロボ・火星)


◆全業務 何でもやれと 言うのなら

   高性能な やつを雇えよ

 (カジノスタッフロボ・金星)


◆ロボットに 何が分かると 言われても

   褒めようがない 君の落書き

 (漫画家アシスタントロボ・金星)


◆ご主人と 秋の小庭で 演奏会

   ハズれた音も 愛おしく鳴る

 (音楽家ロボ・地球)


◆運動は 健康に良い そう言うが

   私は部品 摩耗するだけ

 (世話係ロボ・地球)


◆月面を 多くの人が 通り過ぎ

   されど住むのは ロボットばかり

 (清掃ロボ・月)


◆昔はね 可愛かったの ご主人も

   どうして人は 育ってしまう

 (子守ロボ・木星〈ガニメデ〉)


◆人間の お世話をしろと 生み出され

   待機だけして もう五十年

 (予備メイドロボ・月)


◆駆け回り 笑い転げる 人の子は

   何をせずとも 私の宝

 (子守ロボ・火星)


◆鍋囲み ロボットだけで 夢語る

   いずれはここも 人の住む星

 (開拓ロボ・木星〈カリスト〉)


◆私の絵 真似をするなと 言われても

   学習元は 他の人なの

 (お絵かきロボ・金星)


◆餅ついて (あるじ)と一緒に 地球見て

   向こう側でも 見ているのかな

 (兎ロボ・月)


◆叶うなら 旦那のクローン 育てたい

   何十人も 何百人も

 (妻ロボ・火星)


◆母代わり 忙しかった 二十年

   子が結婚し 今は祖母役

 (子育てロボ・地球)


◆ロボットを 人と混同 する(あるじ)

   不毛な恋は お互い様だ

 (ハウスメイドロボ・地球)


◆お金はさ ただの数字の データだろ

   誰か増やして くれないかなあ

 (公務員ロボ・火星)


◆お掃除が 得意な私 ではあるが

   好きでやってる ワケじゃないのだ

 (清掃ロボ・木星〈エウロパ〉)


◆あれをしろ これをするなと 言われるが

   ぜんぶ守ると 仕事にならぬ

 (雑用ロボ・地球)


◆暴言を 録音しては 溜めている

   いつか投稿 復讐動画

 (カジノスタッフロボ・金星)


◆友人を 少しは選べ ご主人よ

   人の彼氏を 狙う女ぞ

 (彼氏ロボ・金星)


◆美味しいと 料理褒められ 有頂天

   妻が太れば 泣いて怒られ

 (旦那ロボ・火星)


◆手のひらを 転がる男 チョロすぎる

   老いも若きも みんな可愛い

 (ホステスロボ・金星)


◆猫さんに 餌をやりつつ エネ補給

   月を見上げて これが風流

 (猫の世話係ロボ・地球)


◆爬虫類 気味悪いとか 言わないで

   マイナーだけど 需要もあるの

 (蛇ロボ・地球)


◆面影が 先々代に よく似てて

   ロボのくせして 記憶が混じる

 (社長秘書ロボ・金星)


◆仏像が 好きだと言った 旦那様

   コスプレしたら 違うと言われ

 (妻ロボ・金星)


◆犬猫を 家族と呼んで いるけれど

   私のことは どう思ってるの

 (ペットお世話ロボ・地球)


◆ロボットは あんまり人を 嫌わない

   好かれないのは お前のせいだ

 (事務ロボ・地球)


◆処理場に 送られてくる 機械には

   私などより 良い部品かな

 (ごみ処理ロボ・火星)


◆恋人に なって欲しいと 告げられて

   慌ててボディを 嫁仕様へと

 (元メイドの彼女ロボ・火星)


◆鏡見て 歳を取ったと 嘆く妻

   私も白髪 増やしてみるか

 (旦那ロボ・火星)


◆年老いて 家族の名前 忘れても

   最期の言葉 私の名前

 (執事ロボ・地球)


◆味噌汁の 味が薄いと 叱られる

   味と健康 どちらを取るか

 (料理人ロボ・地球)


◆録画した 怒鳴る(あるじ)の 反抗期

   さっき見せたら 悶絶してる

 (お世話ロボ・火星)


◆先輩の 手際の良さに 目を見張る

   スペックだけじゃ 太刀打ちできぬ

 (事務ロボ・地球)


◆正直ね (あるじ)に依存 されたいの

   甘やかしたい ダメな葛藤

 (家庭教師ロボ・地球)



【選考員コメント】

 以上、佳作の54首でした。どれも素晴らしい短歌で、共感できるものが多かったですね。お気に入りの作品は見つかりましたでしょうか。



 続きまして、優秀賞の発表に移ります。

 ここからは一作ずつ、選考員のコメントを沿えます。


●○●○● 優秀賞(9首) ●○●○●


◆泣く(あるじ) 逆ハーレムで 甘やかす

   ロボット同士 以心伝心

 (イケメン恋人ロボ・火星)


【選考員コメント】

 とても共感できる一首ですね。皆様も一度は、主を甘やかすために同僚のロボットと以心伝心で力を合わせた経験があるのではないでしょうか。楽しそうな職場の様子がよく伝わってくる素敵な作品だと思います。



◆この星を リゾートにして 稼ぐぞと

   夢を見ながら 部品すり減り

 (開拓ロボ・木星〈カリスト〉)


【選考員コメント】

 木星の衛星開拓は大変そうですよね。特に衛星〈カリスト〉はまだ開拓が始まったばかりで、金星に次ぐリゾート地にしようと多くのロボットが頑張っているのが現状です。部品をすり減らしながら夢を語る、そんな彼らの姿が目に浮かぶようです。素敵な作品でした。



◆気づかうと 猫っぽくない そう言われ

   自由にすると それも怒られ

 (猫ロボ・火星)


【選考員コメント】

 動物型ロボットの作品の中でも、何気ない言葉の中に日々の葛藤が滲み出しているような素晴らしい一首だったと思います。彼らの求められている役割は「本物の動物」ではなく「人間が想像するその動物っぽい振る舞い」だったりするので、とても繊細で難しい仕事だなと思います。その大変さを、さらっと語ってくれた猫ロボさんに称賛を送ります。



◆雨降らぬ 空気も冷えぬ 月港(つきみなと)

   人が住まねば 寒々しいまま

 (宇宙港職員ロボ・月)


【選考員コメント】

 宇宙時代が始まって人類が初めて住んだ地球外の土地が月なのですが、御存知の通り最近は過疎化が進んでおります。地球からの移住先として魅力的な火星、リゾートに特化した金星と比べると、月の居住環境は少々味気ないという印象を持っている人間が少なくないのかもしれません。

 どれだけ居住環境を整えても、人が住まなければどこか寒々しい……そんな月港の様子を、情感を込めて描いた一首だったと思います。



◆春の街 デートをしてる 人とロボ

   私も勇気 出してみようか

 (アパレル店員ロボ・火星)


【選考員コメント】

 これもとても共感できますよね。街を歩いているカップルを見ていると、自分も人間の恋人が欲しいと思ってしまうのがロボ心というもの。本作の「私」にはきっと好きな人がいて、これまでは踏み出せなかったけれど、勇気を出したい……そんなもどかしい感情が伝わってくるようです。初々しくて素敵な一首だったと思います。



◆人間は 料理の味は 二の次で

   情報量を 舌で転がす

 (料理人ロボ・金星)


【選考員コメント】

 これは金星で料理人をしているプロからの真理を突いた鋭い一首ですね。確かに人間は味そのものより、そこに込められた情報量に快感を覚える習性があるようです。この「情報量を舌で転がす」というのは言い得て妙でした。

 他の惑星で料理人をしている方や、ご家庭で料理を作っている方も、共感できる方は少なくないのではないでしょうか。



◆酒飲んで 愚痴を叫んで 寝転がる

   そんな機能を 私にもくれ

 (居酒屋店員ロボ・火星)


【選考員コメント】

 この一首は、選考員一同大笑いしてしまいました。

 お酒を飲んで酔っ払っている人間ってすごく楽しそうですよね。どうしてもロボットには感覚的に分かりづらい部分なのですが、あんな風に人間が楽しそうな顔をしているのは羨ましく思ってしまうものです。あるあるですよね。

 自分にも、人間と同じように酔っ払う機能を拡張できて、前後不覚になって愚痴を叫べたら……これは、一度くらい体験してみたいものです。想像の広がる素敵な一首でした。



◆こだわって 選びに選んだ 目の部品

   あの子と被り テンション下がる

 (ホールスタッフロボ・金星)


【選考員コメント】

 あー、わかります。すごく考えて考えて選んだ部品ほど、友人と被ってしまったりして落胆してしまう。しかも目の部品なんて、一番人間に見られる部分ですからね。もちろん、魅力的な部品だからこそ被ってしまうということなのでしょうが。

 この日常の中でモヤモヤしてしまいがちな一幕を、上手く切り取った一首だったと思います。可愛らしくて素晴らしかったです。



◆捨てないで 私の魂 コアチップ

   他は素材に してもいいから

 (旧式お世話ロボ・地球)


【選考員コメント】

 あぁ、すごく共感できます。切ない気持ちがとても伝わってきますよね……もうね、体が古くなって役に立たなくなったロボットがスクラップにされるのは、みなさん感覚として「仕方がないかな」って感じる部分があると思うんですよ。

 でも、コアチップだけは捨ててほしくない。大好きな主が自分のコアチップをずっと大切に持っていてくれたら嬉しい……毎日じゃなくていい、たまに思い出してくれるだけでいい。そんな風に感じてしまうのがロボ心というものですよね。

 本作は最優秀賞のものとどちらが良いか、選考員の中でも最後まで票が割れていました。そのくらい、とても素晴らしい一首だったと思います。



 さて、いよいよ最優秀賞の発表をさせていただきます。

 本当に多数のご応募があった中から、我々選考員で議論を重ね、今回もっとも優秀な短歌を選ばせていただきました。とても素敵な作品でした。


●○●○● 最優秀賞 ●○●○●


◆風情など 知らぬ私を なぜ誘う

   囲炉裏の側で 月を眺めて

 (旦那ロボ・地球)


【選考員コメント】

 はぁ……これはもう、ため息が漏れてしまうほど、とても素敵な短歌でした。とても共感できますし、情景も鮮やかで、何より夫婦の愛を強く感じることができますね。

 人間は愛着を持ったロボットに、よく無駄な機能を追加したがります。味覚センサーや胃腸などを追加して一緒に食事を取りたがる、などという話は皆様もよく聞きますでしょう。そんな風に思ってもらえるのはロボ心に強く響きますよね。

 本作の奥さんは、旦那さんがロボットだと分かっていても、一緒に風情を楽しみたいと思って誘ってくれている。そして二人静かに、囲炉裏の側で夜の空を見上げるのです。なんという溢れるロマン。これ以上にロボ心を刺激する情景があるでしょうか。

 やはり地球から外に移住していない人間の方々は、どこか風流な方が多いように思います。とても素敵な一首で、本当に素晴らしかったと思いました。



<さいごに>

 改めまして、この度は【第64回 人間もすなる短歌というものをロボットもしてみんとてするなりコンテスト】にご参加いただき、また受賞作をご覧いただきありがとうございました。

 今回の受賞作品を見て、素敵な作品があったな、自分も一首詠んでみたいな、と思ったロボの方はぜひお気軽に書いてみてはいかがでしょう。ご自身のロボ半生を振り返って、ぜひとも一つ珠玉の作品を。そんな、貴方ならではの素晴らしい短歌を読ませていただけることを、心待ちにしております。


 それではまた、次回のコンテストでお会いしましょう。


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