プロローグ 烈火の魔犬
銃口から弾丸が放たれる。真っ直ぐな軌道を描き、一人の男子高校生を狙う。
接近した所で爆炎黒煙が巻き起こり、風で徐々にそれらが払いのけられる。
腰を若干屈めて腕を前につきだして、右手は何かを掴むようなポーズをしている。左手は炎をまとっていた。赤いバンダナとサングラスをした男子高校生は、ただ自分を狙った先にいる、校舎の屋上にいる相手をサングラスの下から睨み付けていた。
場所は『超絶優しい高校』のグラウンド。男子高校生の周りには、大きなクレーターがぽっかりといびつな光景として残る。
校舎に上にいる、かなり幼い緑色の髪の少女は躊躇もせず校舎の上から飛び降り、ぱギリギリの所でパラシュートを使い着地。
「てめえは誰だ。人を襲撃するテストがあったら0点、と言ったとこだろう」
少女は落ち着いて弾丸を銃に装着しながら、男子高校生は右手に再度炎をまとう。
「誰もいいじゃないですか。どうせ貴方はあたしに殺されるのですから……猩々緋太陽さん」
「じゃあ、そう言うのなら教えてくれよ。誰が僕を殺害するように依頼した?」
弾丸を装備し終えた所で、銃をホルスターにしまう。ホルスター付近にあるナイフを今度は取り出す。
「お答え、できませんね。誰か聞いてるかもしれませんから。ちなみに、少なくとも貴方のお姉さんではありません」
太陽は歯をギリギリ鳴らし、両手の炎を更に強くする。そして、ニンマリ顔に影を作り笑う。
「おう。それなら遠慮無くてめえを葬らせてもらうぜ!」
先手を打とうと少女に接近、殴りかかろうとする寸前で、喉元にナイフをつきつけられる。
「狙撃よりも接近戦の方が得意なんですよ。意味、分かりますか?」
そう言われても表情一つ変えず、右手の炎が辺りからエネルギーを吸収し、火炎放射のように放つ。
少女はすぐに反応し、距離を取った。
「接近が何だって?」
「……なるほど。100点です」
ナイフを皮の入れ物にしまった。
太陽は両手の炎を沈下させ、ポケットに手を突っ込む。
「分かればいい。理解をするテストがあったら1点はやろう」
少女は全く殺気を立てず太陽に近づき、名刺を渡す。
名刺には『満身創痍』と大きく書かれ、電話の連絡先も幾らかあった。
「風音さんの弟なら、持っておくと便利だと思いまして。彼女もこれを見せれば顔色変えるかと」
「……おう」
それぞれ微妙な空気で解散した。グラウンドにはクレーターだけが天を見ていた、気がする。