麻雀のルールを知らない人にはまったく怖くない話
麻雀のルールがわからない人には意味不明かもです。
忘れられない一局というものがある。
ずいぶん前にネット麻雀をやっていたときの話。
そのときの筆者は親番で二着。オーラス一歩手前。他の三人ともさほど点差は離れていない。全員が二万点代。
配牌は、断么をまっすぐ目指せば、早いうちに聴牌できそうであった。
ただし、ドラは孤立した一索のみ。
筆者はとりあえず親番だし立直、平和、断么で上がっとこう。ツモか裏ドラ乗れば満貫だしええやろと、セオリーどうり一九字牌から切っていく事にした。
そして、六順目くらいだったと思う。浮いたドラの一索を切れば一向聴の状態。|他家にも聴牌の気配なし。何の迷いもなく一索を切った。
すると、そこで三着の下家がその一索を明槓したのだ。そして、四萬を切った。
下家一気にドラ四ゲット。どんなクソみたいな手でも五翻確定。
やってしまった。筆者は顔をしかめながら捨て牌の並ぶ河を見渡す。
役牌はすべて下家の風牌も含め一枚以上は切れている。おまけに下家は第一打目に字牌の南、二順目に九萬を捨てていた。更に索子を一枚も切っていない。
麻雀をご存知の方ならば「ああ、こいつ、なんかの役牌を暗刻で持ってるか索子の染め手、しかも清一色狙いか?」と読むに違いない。
役牌ドラ四でも満貫、清一色ドラ四で倍満である。
まあ、流石にこれはおりるかなと、ちょっと気持ちが萎え掛けていたが、新たなドラは八筒。なんと筆者の手の中には八筒の対子が……。
これで聴牌してリーチかけてあがればこちらも満貫確定。おまけに裏ドラが載ろうものなら跳満も見えてくる。
これはどうしたもんかと迷っていると次のツモでなんと聴牌。
しかも、安牌の四萬を切れば、二索と五索の両面待ちである。
迷った末にここで勝負をかける事にした。すかさず立直宣言。
しかし直後に失敗したなあと後悔する。
なぜなら、下家が染め手の可能性が高いなら索子は超危険牌であり、筆者の待ちも索子。他家が見えている地雷の索子の真ん中なんか出してくれるわけがない。
それどころか筆者の上がり牌はすべて下家の手配の中にある可能性すらある。
だから麻雀ってクソゲーなんだよと、自分の判断ミスを棚にあげて心を曇らせる筆者であった。
そして、下家は無スジをノータイムでツモ切りしてくる。当然である。
トップの対面は筆者と下家の共通の安牌を手出し。これも当然。
次なる上家から立直の声。どうやら彼もここで勝負をかけてきたらしい。この瞬間、筆者は終わったと思った。
対面と下家が索子を出すはずがないので、先に振り込むのはどう考えても自分だろう。
しかし、切られたのは、なんと手出しの二索(無スジ)
思わず「は?」と声が漏れた。
立直一発メンタンピンドラドラで跳満。更に裏ドラで更に八筒がのり、もう一つ下家が槓してくれたお陰でドラがのった。
結果は立直一発メンタンピンドラ五で親の倍満。上家はこれで飛んで、筆者のトップでゲームは終了した。
ここで筆者は上家があの局面でなぜ超危険牌の二索を切ったのかが気なった。
きっと、そのリスクを取ってでも二索を切るメリットがあったに違いない。つまり上家も相当高い手をテンパったのだろう。
恐らく満貫は最低限で跳満以上の手を……。
もしかしたらツモリ四暗刻あたりの役満をテンパったのかもしれない。
好奇心に突き動かされ、筆者は牌譜を見てみる事にした。そこで驚愕の事実が発覚する。
何と上家がテンパったのは、ただの立直、ピンフ、ドラ1である。しかも一索と四索の両面待ち。
いや、満貫確定ですらないんかい! しかも、一索は下家が明槓しているので、実質的には四索しか待ち牌がない。
まあ、一索が全部出てるので、一索と四索の両面待ちはないやろと、逆に対面か下家が出してくれる可能性はあるにはある。筆者も立直かけてて降りれないし。だが、手出しでは立直、平和、ドラ一……。
ここまでならまあ、わからん事も……ぎりぎり、何となく理解できる。
いや、やっぱ理解できん。リスクにたいしてどう考えてもリターンやメリットが無さすぎる。
しかし、真の恐怖は下家であった。
なんと、その手の中にあった牌を見てみると無役!
しかも、明槓した一索以外に索子は一枚もない。字牌もない。三色にもチャンタにも程遠い。そして、聴牌すらしていない。
お前、マジで何で槓したんだ?!
筆者は恐怖にうち震えた。
まあ、操作ミスだよな? そうだと言ってくれ。
以来、麻雀は一度もやっていない。
なぜなら、自作の『ゆるコワ! ~無敵の女子高生二人がただひたすら心霊スポットに凸しまくる!~』が書籍化され、その書籍化作業で忙しくなってしまったからだ。
(終わり)
*ゆるコワは麻雀とはいっさい関係のない作品ですので、麻雀のルールがわからなくても楽しめると思います。