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体取りかくれんぼ  作者: 名無しシャン
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「はいはーい、おにーさんはそっちにいくのまってねー、ちょーっとおはなしがあるから」

「なんだ、なんも見えねぇけど」

「んー、せかいのあいだみたいなとこにいるからね。でー、おにーさんはめずらしいにんげんだね。くりあほうほうも、いかないほうほうも、るーるもしってるのにいくなんて」

「そうか。で、呼び止めた理由はなんだよ。ちょっと囚われの姫様救いに行きたいんだが」

「そうだねー、しってるよー。きょーみがわいたからねー、そんだけー。じゃ、いってらっしゃーい」


 いつ閉じたかわからない目を開くと、透けていったコンビニの中にいた。コンビニ内の風景、商品棚やコピー機、レジの場所までも一緒だった。さらには、最後に俺が散らかした商品棚の商品も床に散らばっている。

 景色はほぼ同じだが、パッと見でもわかる違いがある。景色の色が白や灰色、黒しかなく、モノクロで透明度だけであらゆる物が表現されている。


「あっ、あっ、あいうえお。よし、声は出るし、耳も聞こえる。匂いは何もしないか」


 コンビニ内はとても静かで物音1つしない。それどころか、外からの音すら聞こえない。車音は勿論、蝉の鳴き声も、どこかの生活音もしない。

 人通りの少ない道とはいえ、歩いていないわけではない。しかし、外を出歩いている人はコンビニ内から見える範囲ではいない。

 近くに人は居ないと考えていいだろうが、隠れられていた場合は非常にまずい。

 触られて『見つけた』って言われるだけで部位が取られてしまう。

 辺りの捜索とコンビニ内の物品が使用出来るかの確認をしようと顔を上げた時、肩に手が置かれる。


「ダメだよ、背後には気を付けないと。悪い人なら今のでどっか取られてるよ、おにーさん」


 咄嗟に肩に乗る手を腕で振り払い、振り返る。

 長袖の灰色の服に灰色の長ズボン、灰色の靴に白に近い灰色の軍手をつけた、150〜60程の女の子が立っていた。


「痛いじゃないですか、乱暴しちゃって。その制服からして先輩ですねぇ。ここに来てすぐですよね。どうですか、当たってますよね」

「あっ、あぁ、そうだな」

「そうですよね、そうですよね。やはり、私は天才ですね」


 尻尾が有れば物凄い振っているだろうと思えそうなぐらい、嬉しがってる女の子とは逆に、俺は背中に冷や汗が流れる。


「おい待て、ここにいるって事はどっかが取られてるって事だろ。何故」

「なぜって、単純ですよ。無い部分が同じだから、ですね」


 そう言って左手の小指の所が折れ曲がった軍手を目の前に持ち上げる女の子。


「それと、おにーさん、いや先輩かな。改めて先輩、これとは別に理由があるんですよ。こーんな可愛い女の子の指が、どこの誰かも分からない人の指になるなんて、考えられます? 考えれないですよね。つまり、そういう事です」

「そういうことって、揃わないと出れないって知らないのか?」

「そーんな常識知ってますよ。伊達に12日も欠損部位1箇所で生き延びていませんよ」

「12日って、もうすぐで2週間になるじゃねぇか」

「2週間でなんか起きるんですか?」


 集から聞かされたことを、集の事は言わずに目の前の自称後輩の女の子に話す。

 途中で交換箇所が1箇所なら良いのではって言われたが、2週間以降は交換箇所の数に問わず人格が変化していくことを伝えると、口から細い声を出しながら、小さく驚いていた。


「そんな事まで知ってたんですね。いや、情報屋のおにーさんが凄いのか。情報統制がされてたと思うだけどな」

「ん? あ、まぁあいつがどこからともなく情報を取ってくるのはいつもの事だからな」


 今の会話、というよりかは自称後輩のセリフ、何かが引っかかる。何がとはいえないが、何かをポロッと言ってしまったような違和感だ。


「情報屋のおにーさんって、俺はそんな事一言も言ってないと思うんだが」

「おにーさん達は高校ではまぁまぁ有名ですよ。先輩後輩関係なく、さらには先生からも頼られる情報屋と、その仲介役で微イケメン口悪同性愛疑惑のある人って」

「俺はノーマル、、とは言えないが、異性の方が好きだし、変な噂を信じるな」


 この自称後輩、多分だが、何か隠してる。嘘を言ってる訳ではないと思うが、やはり何かが引っかかる。


「はいはい、で、先輩、知りたくないですか? 別の人物の部位を取らず、脱出する方法」

「あんのかよ、んな方法」


 胡散臭い。8割ガセな気がする。そんな方法があるとすれば、確証がなくてもそれっぽい情報は集が掴む筈だし、なんとなく信じれない。

 しかし、脱出方法や条件などを最近知ったって言ってたから、本当に知らなかった可能性もある。それが2割。


「取って手に入れる部位ってのは、コピーなんだ。取られた本物の部位って、普段はどこかに保存されてて、一定期間が経過するとかくれんぼの本当の『鬼』が持っていくんだ」

「それで、本物の『鬼』ってのはいるのかよ」

「いるよ。10日に一回だけ回収にくる。運が良いよー、それが今日だ」


 この自称後輩は本当のこと、というよりか信じ込んている感じだ。

 この話が本当なら、花宮にとっては嬉しい話になるだろうが、この話は出来ない。俺の勘が、信用出来ないって言ってる。


「じゃ、先輩、夜にここに集合にしましょうか」

「待て、俺はその話を信じた訳でも、一緒に行動するとも言ってないぞ」

「私、分かるんですよ。先輩、こういう話、断れないでしょ。私と同じ匂いがするんですよ。それじゃ、先輩、夜にここで。先輩もすることあるでしょ」

「お、おい、することがあるって言ってない」

「服装のことですよ」


 自称後輩は早めに歩いてコンビニの外へと出ていった。

 出ていき際のセリフ、嘘ではないし本当のことだろうが、全てを話したわけではないという感じだ。

 問い詰めようと自称後輩の後を追ってコンビニから出るが後ろ姿どころか去った痕跡すらない。消えたようにいなくなった。

 出入り口から出て数秒しか経っていない。姿を消すには短すぎる。


「とりあえず、花宮を探すか」


 誰に聞かせる訳でもなく、ただ自分に行動を示すように呟く。


「私がどうかしたか」


 肩に手が置かれる。鼓動が一際大きく鳴ったら、呼吸が一瞬止まった気がした。そして、素早く振り返る。


「びっくりするから、背後から触れないでくれ、花宮」

「そうだな。で、何故ここにいる、返事をするなと手紙は置いておいたと思うが」

「お前の救出しに来たんだわ。それと、返事しなくても、取られる部位がランダムになるだけだ。呼ばれる条件は別だ」

「そうだったのか。しかし、悪いが脱出方法がな」

「体を揃えるだろ、花宮の愛しの愛しの集から聞いてる。とりあえず、花宮、俺から持ってけ」

「い、愛しの集じゃ、ないぞ。全然違うからな、ほんとに違うぞ、お、幼馴染だし、学校も同じだし、家も近いし、集は昔からいじめられっ子体質だから、い、い、一緒にいてやらないとだし、こ、これからも一緒に」


 これが俺が救出に来た本当の理由だ。

 集は周りの色恋沙汰や情報には機敏なのに変に鈍感だし、花宮は変なとこでツンデレのツンが入る。

 そのくせに、どちらも学校でその辺の話が上がらないのだ。


「はいはい分かったから。で、花宮どこだ」

「わざわざ来てもらって悪いが受け取らない。逆に刈谷はどこだ」

「その反応は集が予想済みだ。わざわざ無策で来る訳ないだろ。俺が無傷で、花宮も無傷で帰る方法が見つかったんだよ」

「なに、ほんとか」

「それの準備がこっちと向こうでやる必要がある」

「なら、こっちでやることは私がやろう」

「駄目だ、ちょっとした条件があって、運悪く向こうの条件には当てはまらなかった訳」

「そう、なのか」

「とりあえず、一旦帰って集から手順を聞いてくれ。という事で、背中向けるからちゃちゃっとやってくれ」

「...わかった。また後でだな」


 背中に手が触れる。『ミツケタ』と頭の中に直接響く。そして、体が固まり、どこか遠くの方からベルのような音の高さが違う金属音が2つする。そして、視界の右半分が真っ暗になる。


 数秒経ち、振り返ると顎の辺りまで透けた花宮がいた。


「先に謝っとく、騙して悪いな。最終的に選んだのは俺だから、集を責めないでやってくれ」


 直ぐに察したのか、目で訴えてくる。しかし、その目もすぐに透けていき消えていった。

 花宮が消えると、近くの窓ガラスで顔を確認した


「右目か。一応側から見れば、目はあるように見えるのか」


 確認も出来たし夜まで中で隠れてるか。コンビニのバックヤードの隅に隠れていれば、食料と水人の出入りは確認出来るし、背後もとられない筈だ。


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