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#25 ヒーロー失格?~ジャスティス・ギルドのその後②〜

「…では、本日の会議を開始する」

メテオシティの中心部にそびえ立つ、ジャスティス・ギルド基地。

最上階の会議室で、そう宣言したスーパーノヴァだったが…

比較的真面目に話を聞いているのは、宇宙警備隊員のスターシューターのみだ。

レディダイナはネイルをいじり、レッドライトニングは、ガラ悪く机に足を乗せている。

空中に浮遊しながら“魔導書”を読み、何やらぶつぶつ唱えているマダムミストに至っては、出席していると言えるかどうかも怪しい。


「…それでは、本日の議題だが…ナイトクロウが残したスーパーコンピューターの操作方法について、その後、分かった者はいるか?」

返答の代わりに流れるのは…無言の時間だけ。

(…ダメか)

ナイトクロウを“追い出して”から、ジャスティス・ギルドはまさに“失敗続き”だった。

結成3周年パーティーの主役を、金持ちのボンボン、カイト・クライに奪われた─そんなことは、今となってはどうでもいい。


きっかけは“映画”だった。

パーティーでも宣伝しそびれた、映画【ジャスティス・ギルド4】。

ギルドの活躍を映画化したシリーズの最新作、“信者”共は絶対に見に来る─はずだった。

ところが、スタジオ買収騒ぎが起こり、再撮影の後に公開された映画は“大コケ”。

興行収入どころか、関連商品の売り上げも大きく落ち込み、あてにしていた稼ぎが丸ごと消えてしまったのだ。

そうなると当然…本業である“ヒーロー活動”で資金を得る必要がある。


(ちっ…こんなことしなくても、最近はグッズの売り上げだけで稼げてたのに。街の平和を守るなんて、大物になってからやる仕事じゃないだろ)

そう思いつつも、自分たちは“世界最強”。

楽な仕事だと甘く見ていたスーパーノヴァたちだったが…

これが、地獄の始まりだった。


彼らがまず再認識したのは、メテオシティの治安の悪さだ。

強盗、車上荒らし、武器や麻薬の密売、ギャングの抗争…

(この街の連中は、どうして引っ越さないんだ?)

“人間”をなにかと見下すスーパーノヴァが、煽り抜きでそう思うほどの、犯罪率の高さ。

この程度は能力(スーパーパワー)のないナイトクロウに任せて、スーパーノヴァたちは、侵略者の軍隊や殺人ロボットなど、もっと強大で…“目立つ”ヴィランと戦っていた。

だからこそ、メテオシティの路地裏のような、目の前で起きている犯罪に目を向けることがなかったのだ。


そして、ナイトクロウがたった1人でそれだけの犯罪と戦えたのには…理由があった。

彼が開発した、あらゆる情報を分析し、犯罪を事前に予測するスーパーコンピューターのおかげである。

それを使えば、事件が起きる前に現場に駆けつけることすら可能だったが…


“サポート役”としてナイトクロウにナビゲーションを押し付けてきたスーパーノヴァたちは、彼を追い出した後、誰一人としてその操作方法を知らないことに気付いたのだ。

結果として、街中で起こる犯罪への対処は後手後手となり、市民から『対応が遅い!』と批判の声が上がるほどだった。


「…でもさぁ、予測なんかしなくても、別にいいじゃん?」

ようやく、レッドライトニングが口を開いた。

「俺の超スピードがあれば、事件が起きてからでも、1秒で現場に駆けつけられるんだし」


「…それが問題なんだよ、レッドライトニング」

スーパーノヴァが、重々しく答える。

「お前が事件現場に超スピードで急行した後…発生した衝撃波で、街が壊滅的な被害を受けている。そのせいで、多額の損害賠償を求められてるんだぞ!?」

「…」

ヘラヘラしていたレッドライトニングだが、“世界最強”の怒鳴り声を聞き、さすがに表情が強張る。


「いいか、レッドライトニングだけじゃない!スターシューター。お前は先日、コンビニ強盗相手に“必殺技”の光線を乱射して、辺りを焦土にしたな。たかが缶ビール1本盗んだ相手に、“カイジュウ”も倒すことができる必殺光線をだ!おかげで、多額の賠償金を…」

「わ、悪かったと思ってるよ!」

矛先が自分に向き、元から青いとは言え、スターシューターの顔も青ざめる。

「でも、しょうがないじゃないか!僕の本業は、宇宙警備隊員だ。ナイトクロウみたいに街の犯罪レベルを相手にするとなると、手加減ができなくて…」

「言い訳はいい!…マダムミスト、お前もだ。メテオシティ中央銀行で立てこもり事件が発生した時、黒魔術で、“銀行ごと”犯人たちを暗黒空間に送ったな!?おかげで、メテオシティの経済は大混乱だ!俺たちが責任を取るべきだと、多額の賠償金を…」


「…はぁ、別によいではないか。人質もいなかったのじゃぞ?あれが一番楽な方法だっただけじゃ」

全く悪びれずに、魔導書を読む片手間に答えるマダムミスト。

超常的な存在の魔女である彼女には、人間の常識は通用しない。

「…ほんっと使えない女」

(お前が言うな)

彼女と確執がある聖女レディダイナの一言に、スーパーノヴァは思わず心の中でツッコんだ。

他のメンバーが曲がりなりにもヒーロー活動をしている中で、彼女だけは『メイクが崩れるから』という理由で、基地の外へ出ようともしない。


「…さっきからオレたちのことばっかり言うけどさ、アンタだって、メテオシティ自然公園の記念樹を引っこ抜いて、すっげー怒られたじゃん」

レッドライトニングのこの一言は、スーパーノヴァにとって思わぬ反撃だった。

「あっ、あれは…木の上から降りられなくなった子ネコを助けてくれと頼まれたから、根本から引き抜いて…」

「飛べばよかっただろ!アンタ飛行能力持ってんだから」

「たかが子ネコ一匹のためだけに、どうしてわざわざエネルギーを使わなきゃいけない!」

ぐうの音も出ない正論に、思わず本音で返すスーパーノヴァ。


(…まったく、どいつもこいつも。お前らが好き勝手動くと、チームの評判が落ちるんだ!賠償続きで金はなくなるし…クソ、胃が痛い)

そう、彼はヒーローとして、真剣に現状を悩み、解決しようとしている訳ではない。

自分たちの名声が傷つき、批判されるのが嫌なだけだ。

ちなみに、世界最強のスーパーノヴァには、あらゆる薬物・毒物も通用しないので、彼の胃痛を解消できる胃薬はない。


(…やばい、このままだとキレてレーザー光線を乱射し出す)

うっすらと赤く光り始めたスーパーノヴァの目に、誰もが危険を察知した。

「…じゃ、街のパトロールにでも行ってくるか」

白々しく言うと、超高速でその場から立ち去るレッドライトニング。

「…あ、銀河系で助けを求める声がする!宇宙警備隊、出動!」

スターシューターもそう言うと、スイッチ操作で基地の天井を開き、宇宙へと飛び立っていった。

「…」

マダムミストは、相変わらず無言で姿を消す。


結局、レディダイナが残る。

いつものパターンだ。

「…スターシューターの言う通りだ。今までスケールが大きいヴィランばかり相手にしてきた俺たちが、急に街のチンピラレベルを相手にするなんて…」

ここまでつぶやいて…スーパーノヴァはふと考えた。

(映画が失敗して、俺たちはヒーロー活動に真剣に取り組む羽目になった。だが、結果はこの通りで批判続き…まるで、誰かがこうなることを分かっていて、踊らされているような…?)


「…ちょっと!この状況、さすがにそろそろなんとかしてよ」

レディダイナの無責任な一言に、スーパーノヴァは我に返る。

「なんとか、ってな…大体、今までこういう雑魚相手の“雑用”は、ナイトクロウの役目だった…」

(待てよ?)

「そうか…雑用係を雇えばいいんだ」

「は?」

「新メンバーを募集するんだよ!脱退したナイトクロウ枠として、雑魚を片付けるヒーローを加入させるんだ。それに、年1回の“宇宙規模の危機”と称した一大イベント…“バカンス”の時の留守番も必要だしな」


「…なるほど、さすがスーパーノヴァね!」

「…そうと決まれば、早速求人広告を出そう。『ジャスティス・ギルド新メンバー募集!』だ。ただし、応募できるのはスーパーパワー持ちだけ。能力がない“常人”とは、二度と一緒に仕事をしたくないからな」

「…求人広告ってどう出すの?」

「…知らん。俺はヒーローだが、社長じゃないんだぞ」

レディダイナの疑問に、スーパーノヴァもこう返すしかなかった。

ジャスティス・ギルドにとっても新章突入!?

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