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#23 負け犬たちよ立ち上がれ

クロウ・ネストに集められた、ヴィランたち。

「アタシたちが…ジャスティス・ギルドに挑む!?」

ヒーローであるはずの俺からの意外な頼みに、彼らは明らかに動揺していた。

ただ一人、表情が見えないレンズマンを除いて、だが。

「そうだ。それが、お前たちの仕事の内容。ヒーロー相手に戦う─今までやってきたことと変わらないだろ?“世界最強”相手に好きに暴れて、成功したら模範囚として刑務所に戻れるんだ。悪くない提案だと思うけどな」


「…ボクたちが、ジャスティス・ギルドに挑むなんて」

震えるローチトラップが、口を開いた。

「無理だよぉ、きっとゴキブリみたいにひねりつぶされちゃう…でも、やらなかったら電流だし…ひぃっ」

そう言うと、頭を抱えてうずくまる。


「…いくらナイトクロウの頼みでも、今回は力になれないかも」

コピーキャットも、重々しく言う。

「ワタシはただの変身能力者(シェイプシフター)。レディダイナやマダムミストに変身できても、彼女たちのパワーまではコピーできない。中身はただの人間なのよ…猫かぶりだけが取り柄のね」

彼女にしては、珍しく弱気だ。

「…」

レンズマンは相変わらず無言なので、俺からもなにも言えることがない。


「アタシはレッドライトニングと同じスピードスター、でも、速さはアイツの方が上。癪に障るけどね。それに、ただ速く動けるだけじゃ、ギルドの他のメンバーには勝てない」

ファストレーンもそっぽを向く。

「つまり、アタシにできることはなにもないってわけ。だいたい、アンタヒーローでしょ?なんで、同じヒーローのジャスティス・ギルドを倒そうとしてるの?」


彼女の言葉に、“追放”された日のことがフラッシュバックする。

「…あいつらは、真のヒーローじゃない。このまま平和を任せておくわけにはいかない。だからお前たちヴィランをぶつけて、ジャスティス・ギルドを“追放”するんだ。

心配するな、作戦は俺が考える。お前たちは、ただ指示通りに動いてくれればいい」


「…よくわかんないけど、巻き込まないでほしいね。だって、勝ち目ないもん。リーダーは、スーパーパワーなしの常人ヒーロー。チームメンバーは、盗撮魔、ゴキブリ娘とネコ女。それに、“2番目に速い”スピードスター。これでどうやって“世界最強”に勝つつもりなんだか」

かなり自虐的だな。

…陸上選手の道を絶たれてから、ファストレーンの性格は、だいぶ歪んでしまったのかもしれない。


「勝ち目がない…か。確かに、そうかもな」

驚くファストレーン。

あっさり認めたのが意外か?

「ちょっと待って、ナイトクロウ。それじゃあ…」

クロウガールも口をはさむが、俺はそれを制して続けた。


「…だが、本当にそれでいいのか?“勝ち目がない”と諦めて逃げ続ける“負け犬”の人生で。ヒーローたちから見下され、虐げられ続けてきた人生を続けるのか?」

「なに、ヒーローっぽい説教でもするつもり…」

「俺も、そうだった」

一瞬、ファストレーンが食ってかかったが…続けて出た俺の言葉に黙り込んだ。


「俺は“スーパーパワーがないくせに”とバカにされ、チームを追い出された。お前たちは、この“社会”から追い出された人間の集まりだ。追い詰められ、自分の力の使い方を間違えた盗撮犯。“ゴキブリ”扱いされ、誰にも助けてもらえなかったストリートチルドレン。“本当の自分”を愛してもらえず、猫をかぶり続けながら生きてきたシェイプシフター。そして…夢を絶たれてドロップアウトした、不良少女」

レンズマンだけじゃない。

いつの間にか、4人のヴィラン全員が、黙り込んで俺の話を聞いていた。


「…ボク、やってみる」

意外だ。

沈黙を破って最初に口を開いたのは、一番臆病だったローチトラップだ。

「この能力のせいで、ボクはどこに行ってもゴキブリ扱い…でも、そんなボクが役に立てるんだったら…やるよ」


「…ワタシが“必要とされてる”ってことよね?他の誰でもない、ワタシ自身が」

コピーキャットも、ウインクと共に続けた。

「あなたのためなら、誰にだって“変身”してあげるわ、ナイトクロウ。その代わり、少しでいいからワタシとデートを…」

協力はありがたいが、デートはしない。

悪いな。

レンズマンは相変わらず無言だが…拒否しないということは、OKという意味だろう、きっと。


「…はぁー、なにこの展開。苦手なんですけど」

うんざりした表情のファストレーン。

だが、そう言いつつも…

「…アタシは、アタシより速く走れるレッドライトニングをぶっ潰したい。ただ、それだけだから」

つまり、協力するってことだな。

まったく、素直じゃないな。


「…決まりだな」

3年前、俺はスーパーヒーローを集めて、ジャスティス・ギルドを結成した。

そんな俺が、今日はヴィランを集めてチームを結成する。

こんな日が来るとは思わなかったな。

なんとも、皮肉な人生だ。

だが、今でも同じく変わらないのは…平和を愛する俺の心だ。


あの時の仲間は、“世界最強のスーパーヒーロー”。

今の仲間は、とても最強とは言い難い、奇妙なヴィランたち。

それに…ヒーローオタクの少女と、もちろん、人間味あるAIメイドも忘れていない。

とにかく。

「これで…【アンチ・ジャスティス・ギルド】結成だ!」

「ところで…惜しかったわね。カイト」

「…なんの話だ、ルナ?」

「アンチ・ジャスティス・ギルドのメンバーよ。レンズマンがおっさん(中年男性)じゃなければ、ハーレムだったのに」

「…お前はいったいなにを求めてるんだ。それに─ ヒーロー(主人公)の仲間になれるのはかわいい女の子だけ、なんてルールはないんだ」

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