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#13 “天才”登場?

「「「お待ちしておりました、カイト社長!」」」

建物内には、ヘルメットとプロテクターを身につけ、銃で武装した看守たちが待機していた。

ロックの部下だろう。敬礼で俺たちを迎える。

一糸乱れぬ、規律正しい動きだ。

「では、さっそく独房エリアに向かいましょう。こちらです」


◇◇◇◇◇


囚人の脱走を阻むために設計された、迷路のように入り組んだ通路。

歩いていくうちに、永遠にここから出られないのではないだろうかという錯覚に陥りそうになる。

怪物(モンスター)”共が囚われた、出口のない牢獄か。

まるでダンジョンのようだ。


「…ところで、カイト社長。仮釈放する囚人は、もう決めているのですか?」

「えぇ。全部で4人、この刑務所から連れ出して、クライ産業の研究施設に移送します」

俺はロックにそう答えたが、実際は、彼らを直接クロウ・ネストに連れ帰る。

大型の輸送ヘリに乗ってきたのも、そのためだ。


「刑務所のデータベースから、釈放する囚人のファイルを事前にピックアップしてきました」

「…本当にこの4人ですか?」

俺が渡したファイルを確認したロックは、困惑しているようだ。

だが、無理もない。

俺の作戦を知らない人物からしたら、奇妙な人選に思えて当然だろう。


(えっ、もう全員決めてたの?私、なにも聞いてないけど?)

ルナが小声で聞いてくる。

(悪かったな、話す暇がなかった)

嘘だ。

(絶対悪いと思ってないでしょ…で、一体、どんなヴィランを選ぶわけ?)

(あぁ、まず1人目は…)

だが、俺がルナに答えようとしたその時。

「あなたがカイト社長ですね!こうしてお会いできる日を楽しみにしていました」

突然、俺たちの行く手を阻むかのように、1人の男が現れた。


「…教授(プロフェッサー)、またですか」

ロックがうんざりした表情を浮かべる。

「悪いが今は、あなたの奇妙な“実験”に付き合っている暇はないんです」

「なにを言うんだ、ロック隊長。私はこのチャンスをずっと待っていたんだぞ?」

“プロフェッサー”と呼ばれた男も食ってかかる。


色白を通り越して灰色がかった、不健康そうな肌。

メガネに白衣、顔には狂気的な笑みを浮かべている。

だが一際目を引くのは、その頭だ。

銀色に輝く、奇妙なヘルメット。

両脇から伸びているのは…アンテナか?

それが頭上で一本に繋がり、持ち手のようになっている。

なにかに例えるのは難しいが、まるでブリキのバケツを被っているかのようだ。


人を見た目で判断する主義じゃないが、この男はいかにも…“マッドサイエンティスト”というような出で立ちだな。

ロックとは因縁があるようだが、俺とルナは蚊帳の外、か。


「…あぁ、これは失礼。申し遅れました!」

どうやら、俺たちの思いを察したみたいだ。

「私はシアン・リー教授。“天才的”な犯罪心理学者で、ヘルゲート刑務所専属のカウンセラーです。ここでは【教授(プロフェッサー)】と呼ばれています」

「どうも、カイト・クライです。隣の彼女は、その他一名」

俺の言葉に、ルナが頬を膨らませるが気にしない。

「プロフェッサー、あなたのお名前は聞いています。なんでも、ヘルゲートの囚人更生プログラムの責任者でもあるとか」

「しかしカイト社長、その更生プログラムが問題です。この男は…」


「黙れ!」

間に割って入ってきたロックに、即座にプロフェッサーが怒鳴り返す。

まさしく犬猿の仲という感じだが、できれば俺を巻き込まないでもらいたい。

「確かに、私の更生プログラムは一般的な方法と少し変わっているかもしれないが、れっきとした私の“パワー”によるものだ。君たちみたいな能力なしの看守が口出しするな」


…なるほど。

“天才”を自称する胡散臭さ、それに能力なしを見下すスーパーパワー持ちか。

俺の興味を惹こうとするかのように、“パワー”を不自然に強調しているな。

ここは期待通りの反応をしてやるか。

「パワー、ですか?興味深い一言だ」

「えぇ、カイト社長。実は私、こう見えてスーパーパワーの持ち主なのです」

メガネの奥の瞳が、怪しげに光る。

『こう見えて』と言っているが、特徴的な恰好を見れば誰でも想像はつく。


「私は自分のパワーを、ここの囚人であるヴィランに対して使っているのですよ。今日は社長がいらっしゃると聞いて、“あるもの”をお見せするべく準備していました。まさに、天才的な発明ですよ。私の研究室まで来てください。さぁ、こちらです…」


◇◇◇◇◇


「どうぞ、お入りください」

案内された研究室。

室内は、何に使うのか分からない器具や、書類が床にまで散乱している。

そして…

「さぁ…ご覧ください!」

プロフェッサーが自慢げに指差した先には─2人の人物が立っていた。


いち早く反応したのは、ロックだった。

「…お前たちは!?」

そう叫ぶと、素早くショットガンを構える。

後ろに続く看守たちも一斉に警棒や銃を取り出し、室内には一瞬にして緊張が走った。


「…嘘でしょ、これって」

俺はいくらか冷静でいられるが、見慣れていないと慌てるだろうな。

ちょうど、ルナが叫んだように。

「…フレイムセイビアとシラヌイじゃない!」


そう、室内にいたのは、2人の“最凶”クラスのスーパーヴィランだった。

1人は、燃え盛る剣を片手にたたずむ、ケープをかぶった騎士のような格好の男【フレイムセイビア】。

【炎の教団】に所属する剣士で、物質に炎の力を宿せる能力者。

教団の“教義”に反すると見なしたものを見境なく殺害する、暗殺者だ。


もう1人、ニンジャのようなコスチュームに身を包み、ベールで口元までを覆い隠した女性は【シラヌイ】。

東洋の巨大な暗殺者集団【フシチョウ】首領の一人娘で、スーパーパワーは、驚異的な身体能力。

その能力と、自身がマスターしたあらゆる暗殺術を駆使する、美しいが危険なテロリスト。

そんな超凶悪なヴィラン2人が、目の前で野放しになっている。

常人には、この光景を見て声を出すなと言うほうが無理だろう。


「隊長!」

銃を構えた看守の一人が、ロックに向かって叫んだ。「早く発砲許可を!」

「全員、撃ち方用意!…この2人は、囚人の中でもトップクラスに危険なヴィランだ。なぜ解放したんですか!」

「…やれやれ。そんなに怖い顔をしないでください、ロック隊長」

わかってないな、と言うように大げさに肩をすくめると、プロフェッサーはヘルメットを被った頭部へと手を持っていく。

そのままこめかみに軽く手を添え、ヴィランたちに“命令”するかのように言い放った。

「お前たち、無害だということを彼らに見せてやれ」


すると…

「「はい、仰せの通りに」」

俺たちは、信じられない光景を目にした。

社長vs教授の戦い、勃発…?

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次回もお楽しみに!

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