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#10 反撃開始

ヒーローオタクのルナいわく、ヴィランが悪事を働く場所といったら、たいてい路地裏か、廃工場か…“港”らしい。


犯罪の動きをキャッチした俺とルナは、ここ、メテオシティハーバーへとやってきた。

俺たちの本業はあくまで“ヒーロー”、ジャスティス・ギルドへの復讐にばかり気を取られていたら、街の平和は守れない。

「港での悪だくみ、お約束ね…!」ルナが目を輝かせている。

身に付けているのは、今までのつぎはぎだらけの手作りスーツではない。

俺が新たに作成した、ナイトクロウのスーツと全く同じ性能を持つ、クロウガール用のスーツだ。

紫がかったタイツ風のコスチューム、ヘルメットは俺と同じくカラスをモチーフにしている。

ちなみに、タイツ風なのは本人が希望したからで、決して俺の趣味を押し付けたわけじゃない。

『できれば生足が出ていた方が、相棒のコスチュームとしてよりふさわしい』という謎理論を力説してきたが、それは防御力に難がありすぎるのでさすがに却下した。


「イブ、状況を報告してくれ」俺はインカムを使い、イブに指示する。

「ターゲットは全部で15名。14名が銃で武装し、1名はパワーを持った“スーパーヴィラン”です」

「…となると、クロウガールに雑魚を任せた方がいいな。スーパーヴィランの相手は、俺が引き受ける」

「了解、ナイトクロウ!」

俺たちの視線の先には、メテオシティの有象無象のギャング団のうちの一つと…筋骨隆々な、船乗り風の格好をしたヴィラン【キャプテンタトゥー】が、何やら怪しげな取引をしている。

麻薬か武器の密輸か、そんなことはどうでもいい。

悪人どもは、まとめてぶちのめすだけだからだ。


ウィングを広げた俺たちは、悪党共の前へと踊り出た。

「港での悪だくみか…お約束だな」

「お前は…ナイトクロウ!?」

俺の言葉に、悪党共が反応する。

なにも、ルナから教わったばかりの知識をひけらかしたいわけじゃない。

俺の目的は、こいつらを挑発することだ。

頭に血をのぼらせておけば、楽に片づけられる。

ギャング共が手にしたマシンガンを俺に向けてきたが…

《KRAK!》

やつらが引き金を引くより先に、クロウガールが羽根型ダーツを放ち、銃を手から叩き落とした。


「だ、誰だお前は!?」

「ナイトクロウの“真の相棒”クロウガール!あんたたちの相手は、あらゆるヒーローの戦い方をマスターしたこの私よ!」

「…なんだぁ、ナイトクロウ。ジャスティス・ギルドを追い出されて、“お友達”を作ったのか?」

脳みそにまで筋肉が詰まっているような、粗暴な話し方…キャプテンタトゥーだ。


「お前の方こそ、どうしたんだ。かつては7つの海を冒険した船乗りが、夜の港でコソコソしてるとはな。“海の男”が、聞いてあきれるぞ」

…やつの額に、青筋が浮かぶ。

まったく、わかりやすい男だ。

「…お前らはそこのお嬢ちゃんと遊んでやりな。ナイトクロウは、俺が片づける」

そう言うと、キャプテンタトゥーはコートを脱ぎ、裸の上半身を露わにした。

筋肉質な体には…全身に、(いかり)、ナイフ、髑髏、銃、大砲、サメ、蛇など、様々な種類のタトゥーが彫られている。


…脱ぎ捨てたコートが、地面に落ちるのが合図だった。

《AAARGH!!》

雄たけびをあげて向かってきた悪党共と、俺たちは激しくぶつかり合う。

《SOCK!》

《POW!》

《ZOK!》

ギャング共を次々と殴り倒していくクロウガール。

なかなかやるじゃないか、相棒として及第点だな。


だが…

「カイト様、お気を付けください」

「わかってる、イブ」

俺の目の前で、キャプテンタトゥーが放った大砲の弾が爆発した。

…これが、やつの能力。体に彫られたタトゥーを実体化し、攻撃に用いることができる。

少々厄介な相手だ。


「ちょこまか動き回るんじゃねえ!」

俺に攻撃をかわされたキャプテンタトゥーが、手から火炎を放った。

手のひらの炎のタトゥーを実体化させたのだ。

体が炎に包まれるが、スーツのおかげですぐにはダメージを受けない。

俺は炎の中から飛び出したが、そこに向かってきたのは…


「…勘弁してくれ」

サメだ、大群のサメがやってくる。

サメのタトゥーを実体化させたのか。

「サメ撃退スプレーを持ってくるべきでしたね」

イブのジョークに反応している暇もない。

俺は素早くサメをかわすと、キャプテンタトゥーへの間合いを一気に詰めた。

「近づいてくる気か、バカめが!」

今度は、右腕に彫られた(いかり)を実体化させた。

鎖の部分を振り回し、思い切り俺に向かって放り投げる。


《CRAAAASH!!》

ギリギリで俺が飛びのいた地面に、大穴が開く。

この重量に押しつぶされて、全身骨折で済めば運がいい方だ。

ここはやはり、逃げるしかない。

─と、頭上に高く飛び上った俺を見たキャプテンタトゥーは、俺がそう考えていると思っているにちがいない。

だからこの後も、俺の予測通りの行動をとるはずだ。


「逃げるのか、臆病者!海の男は戦いから逃げねえぞ!」

俺に向かって、(いかり)を投げたキャプテンタトゥー。

…自分の体重よりも何倍も重いものを、自分の頭上に向かって放り投げようとすると何が起こるか?

たいていの人なら結果が簡単にわかる問題だし、だからこそ実行しようとは思わない。

だが、キャプテンタトゥーは違った。


《SMAAAASH!!》

…もちろん、放り投げた(いかり)は俺に届かず、逆にやつを無残に押し潰した。

途端に、炎やサメの大群が消える。

やつが気絶し、能力の効果もなくなったからだ。

「…筋肉だけじゃなく、もう少し脳みそも鍛えるべきだったな」

「ナイトクロウ、ギャングの方は片づけたわよ…って、もうこっちも終わってる。私が加勢する余地ぐらい、残してくれてもよかったのに」

俺の横にやってきたルナが愚痴る…労いの言葉はなし、か。


キャプテンタトゥーを見下ろす。

こいつはこのまま、【ヘルゲート刑務所】送りになるだろう。

だが、俺が集める“兵隊”のメンバーには…ふさわしくないな。


◇◇◇◇◇


クロウ・ネストの作戦会議室。

モニターに映し出された建物を見て、ルナが言った。

「ヘルゲート刑務所─メテオシティ湾に浮かぶ人工島に建てられた、世界中のありとあらゆる凶悪ヴィランを収容した刑務所。セキュリティは、侵入も脱獄も不可能な、まさに“鉄壁”。マッドサイエンティストがヴィランに危険な人体実験を行ってるとか、暴力看守がいるとか、“黒い噂”も絶えなくて、いろんな意味で犯罪者から恐れられている。でも、こことジャスティス・ギルドへの復讐が、どう関係してるの?」

「私も、わかりかねています。先日仰っていた“兵隊集め”と、何か関係があるのでしょうか?」

イブもつられて、疑問を口にする。


─ついに、2人に作戦の次の段階を話す時が来たようだな。

「ジャスティス・ギルドに挑むのは、俺たち3人だけじゃないと言ったな。俺は、自分の計画に利用できるものはなんでも利用する。スーパーヒーローの敵はなんだかわかるよな?ルナ」

「…スーパーヴィラン、でしょ?」

「その通りだ。ジャスティス・ギルドと戦うのは、俺たちじゃない。ヒーローにはヴィランをぶつけるんだ。自分たちが倒してきたヴィランに仕返しされるなんて、あいつらにとって屈辱的だろうからな」

「それって、つまり…」

「カイト様、まさか…」


不安そうに俺を見つめる、ルナとイブ。

そう、その“まさか”だ。

「ヘルゲート刑務所の囚人から“兵隊”を選び出して、凶悪ヴィランだけのチーム…【アンチ・ジャスティス・ギルド】を結成する!」

物語は新たなる展開へ!

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