蟻になって女王様を舐め回したい
病弱だった俺はある日ポックリ逝ってしまった。
死後にあった神さまを名乗る老人に聞かれたんだ。「いま、異世界転生が神の間で流行っているからなにか希望はないか」と。正直、ものすごく俗っぽい気もしたが希望がないかと聞かれれば答えるしかない。
「蟻」になってみたいと。あとついでにチートな能力もくださいと。
生前、唯一の趣味は蟻の飼育だった。カビにさえ気を付ければ健康上なにも問題にはならなかったしルーペやカメラで蟻の生体を観察するのも楽しかった。
神様との話し合いはしばらく続き、そして……
眼を開く。いや、眼は開いたままだ。俺が俺だという自覚がある。目の前は真っ暗? 壁のようなものが周囲にある。ああ、これは繭か?卵からじゃないのか?まあいい。とりあえず外に出て……おぉ?手伝ってくれるのか?? うご!? な、嘗め回される!?!? グルーミングか? 洗濯機の中みたいだなコレ。
巣の中? は真っ暗なのに不思議と目が見える。まずは自分の身体の確認。まだグレーっぽいな。生まれたてだしこれから黒くなっていくんだろう。
ゴツンと後ろからの衝撃。なんだ? とおもえばクッソデカイ蟻が!! いやびっくりしたね。自分の身体の数倍はある蟻とかそりゃビビるよ。
≪わが子、産まれたのですね≫
≪あ、はい。……はい?≫
なにこれ念話? 頭に響いてるんだけど。
≪数日休んだら働いきなさい。まずは食事です≫
蟻って蜜とかだっけ。どこに……あっ
≪~~~~っ!?!?!?≫
横にいた自分と同じくらいの大きさの蟻さんとキス! あ、これ蜜くれてるのね。ぐおぉ!?!? 触覚からなんか伝わってくる!?
≪クエ、クエ≫
食べる、食べるから!!あ、うまい。ゲロじゃないんだし慣れれば……精神的になにかがゴリゴリ削れている気もするけど。うん、これから頑張って生きていこう。
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≪母上!身体綺麗にしにきました!!≫
≪またですか。朝やったばかり……んんっ≫
足先からペロペロ。ほーらここがいいんでしょうここが
≪あ……っ、そこは……うぅ≫ ※ただのグルーミングです。
他の蟻と違ってはっきりとした意志疎通の出来る俺は数ヶ月もすれば結構な地位を持つようになっていた。そんな俺の日課は母上の身体をきれいにすることだ。朝昼晩の三回、きっちり綺麗にさせてもらっている。
≪うぅぅ……あ、また………う、産まれ!?≫ ※健全なやつです
なぜかはわからないが気持ちよすぎるのかたまにポコンと卵が出てくることがある。蟻にとって人数=争力だ。そんなこともあって同僚からも止められることはない。やったね!!
≪ふぅ…ふぅ……≫ ※たぶん健全。
≪母上!今度は餌とってきますね!!≫
≪いや、もう戻ってこなくても……≫
バビュン!とダッシュ。複雑なルートも一度通ればなぜか記憶できるこの身体。フェロモン? そんなの知らないとばかりに記憶するっておかしいよな。というわけで
≪母上!夕食です!≫
ドン! ←ワイバーン Level 300
≪あ、ありがとう……?≫ ←母上 Level 170
≪いっぱい食べてくださいね!≫ ←ボク Level 560
そうそう、なんかここファンタジーな世界だったんだよね。いやー自分が人間大だと知った時は驚いたね!! それからモグラっぽいの(Level 70)狩ったりトラみたいなの(Level 200)狩ったりしていたらなんだかどんどんLevelあがったけど母上の為だからね!仕方ないね!!
いつもどおり触覚でツンツン調べてから食べ始める母上。うん、かわいい。
さてと、食事の間に神様から貰ったチートを確認しておく。
【鑑定(陰)】
【鑑定】の下位互換スキル。レベルしか鑑定できないが相手にばれることがない。
【経験値倍化】
自身の得る経験値が倍になる。
【志操堅固】
変態の思想は変わらない
上二つは神様から貰ったスキルで最後のが元々持っていたスキルらしい……おかしいよなぁ? その四文字熟語ってそういう意味じゃなかった気がするが
≪あ、食べ終わりましたね? さあ、綺麗にしましょう!≫
≪やめ、兵隊たちよ!コヤツを止め……ああああああっ!?!?≫
おれのどこが変態っていうんだろうか。不思議な話だ。
普段お世話になっている蟻の総合店が2周年なので試しに投稿してみました。
もし連載するなら【志操堅固】じゃなくて【鉄心石腸】にするかもしれません。