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悪魔の契約 アラル=バラシンの章  作者: コロコロコロネ
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6章 普遍なもの

アスバルを通ることが出来なかったアラルたちはしょうがなく森を抜けその先にあるというドーネル王国を目指すことにした。森は未開の地であり魔物も多く存在した。その中でアラルはフォーティーと協力し向かってくる魔物を次々と撃破していく。時には逃げ隠れも行ったのだが、以外だったのは思ったよりフォーティーは弱くなかったということだ。これは良い誤算なのかもしれない。アラルはこれからの方針を改めて考え直す。現状サリファの捜索はケルトに任せるしかない。奴隷の解放、それはアラルがローゼルピスニカで常に行っていたことであった。その理由は1つではない。サリファは奴隷として連れて行かれた。であればしらみつぶしではあったが奴隷を解放することでサリファに繫がる手がかりを得られると思ったからであった。そして、もう一つ。それはアラルの悪魔との契約である。契約内容を満たせばアラルは解放される。それは血の主の解放、どうやら主もどこかに囚われているのであろう。近づけば血が呼応すると言われたのだが、その意味も感覚も全く分からなかった。とりあえず寿命は少ないから頑張れと、適当に言われただけだった。

「とりあえず、フォーティー。俺はお前を信用する、だからこれから俺の話をする」

森の中、一時戦闘が落ち着いたのでアラルは話を始めるのだった。

「俺は混血だ」

その言葉にフォーティーは目が飛び出るほどに驚いていたのだが、香水などの話をし、納得したようであった。そして、アラルは自分が飲んだ血の主を捜し、自分を主の束縛から解放したいと言ったのだった。

「そうだったのか。血の主ということはオリジナルを捜さないといけないということだな」

その言葉にアラルは首を傾げる。

「人間が混血になるためには僕達のような新悪魔の血を飲んでも無理なんだよ。新悪魔とは違う、オリジナルという種族の血を飲まないと人間は混血へと覚醒しないんだ。この常魔区にはオリジナル自体がほとんどいない。どこかにはいるんだろうが、いればすぐに分かるだろうし、そもそもオリジナルの力は規格外、君の求める道の先には破滅しか待っていないと思うよ」

だが、アラルはそれでも諦めることが出来なかった。もしかしたらまだケルトもサリファも諦めていないかもしれない。であるならば自分だって諦めてはいけない。道があるのであればどれだけ険しかろうが進むしかないのだ。

「オリジナルの生息地に関しては更なる情報が必要なようだな。にしても、俺の進む道は破滅の道か・・・」

アラルはフォーティーの言葉に笑ってしまった。

「フォーティーがいればサランも安全に暮らせると思うんだ。俺は皆を巻き込むつもりはもうとうない。ここが分かれ道となるだろう、サラン、そしてフォーティー、俺の気持ちは変わらない。だから、これからは2人で平和に暮らしてはどうだ?」

その言葉にサランはフォーティーを見る。フォーティーは下を向き考え込むような仕草を見せるのだった。

「今すぐにという訳ではない。この森を出るまでは協力しよう。その後の町でこのチームは解散する、それでいいか」

フォーティーはアラルの気持ち、そして何を願っているのかを察した。だからこう答えることが正解だということも分かっていた。

「分かった、サランは僕が守る。アラルは安心してその先を行け」

困惑するサランを他所にフォーティーとアラルは笑い合ったのだった。

そして、幾度とない試練を乗り越えやっとのことアラルたちは森を抜け出したのだった。この町は・・・、ドーネル?と首を傾げるような町の雰囲気だった。町の人に聞くとここはタティネルという町らしい。町人からはあんたら臭いね、と笑われたのだった。臭いと言われてもこの匂いに慣れてしまっていて自分達では全く気づかなかった。その瞬間からすごい羞恥にかきたてられ、3人は即座に宿を借り、風呂に入ったのだった。

森での戦闘疲れ、それを癒す為に少しこの町に滞在することにした3人。それをもって解散となる。とりあえずはフォーティーも寄合所のカードは持っているとのことだったので仕事に困ることはないだろうと踏む。だが、この先の為にも少しはここで寄合所の仕事をしておいた方がいいのかもしれない。アラルは皆で寄合所に向かうことにしたのだった。

寄合所にて一つ不思議に思った事を尋ねる。それは大人の男がいないということだ。だが、受付嬢からはいろいろな町がありますからね、とだけ言われる。どうやらそれ以上突っ込んで欲しくないことなのだろう。アラルだってこれからやらなければならないことは沢山ある。

「オリジナルに関する情報を持ってる人に心当たりはないか?」

だが、期待も虚しく受付嬢は首を横に振るのだった。と、そこに一人の男が入ってくる。

「ここの寄合所の補佐、アシュラを出せ。領主様より招集の命令が下った」

受付嬢は怯えた表情で寄合所の奥へと姿を消すのだった。そして男が待っていたアシュラという人物が現れたようだ。寄合所の奥から女性が1人出てきたのだ。

「アシュラは私だ。召集とはどういうことだ。ここは寄合所、手出しすればどうなるか、分からないとは言わせないぞ」

その言葉に男は笑い出す。

「知ってるさ、だからお前なんだよ。寄合所の不可侵対象は局長と受付嬢だけだ。補佐は寄合所の用心棒のようなもの。ヘラレス王国からの規約に補佐の保護は含まれていないんだよ」

その言葉にアシュラは苦虫を噛んだような顔をする。

寄合所とはこの世界に多数存在し、その全てがこの世界の中心にあるヘラレス王国の管轄であり保護を約束されている。もし寄合所に手を出すようなことがあればヘラレス最強の軍が動きその不当な輩に鉄槌を下すと言われている。

「もう局長の許可はとってあるんだよ。人手が足りないんだ。この際女でも使える奴は使わないと期限に間に合わないんだよ。領主様を怒らせればどうなるか、お前も知らないわけではないだろ」

「だが、男だけという約束だったではないか」

「それは通常時だ。今は非常時だからな、関係ない」

その言葉にアシュラは観念したようでその男に従うことにした。だが、外に出ると大勢の女性が囚われていたのだった。働けそうな大人の全てを捕縛したようであった。

「貴様、これはやりすぎだ。これでは町が破綻する」

だが、アシュラの激昂にも男は関心を示さない。

「それが領主様からの命令だ。この件さえ済めば返してやるんだからな。町が破綻する前に仕事を終わらせれば良い、それだけのことだろ」

大騒動になっているためアラルたちも外に出てこの事の顛末を伺っている。

「お前らは・・・」

男はアラルたちに話しかけてくる。

「俺達は旅人だ。関係ないだろ」

「そうだな。だが、分からねぇな。関所から旅人の報告は上がってないんだがな、お前ら関税は払ったのか、不法侵入は罪だぞ」

アラルはフリーズする。自分達は森から出てきたのだ、関所なんて通った記憶はない。

「この方たちからは関税は受け取ってあります。もうこれ以上町を荒らすことはやめてください」

寄合所から出てきた局長が男にそう告げたのだった。

「そうか、それならいいのだが。じゃあ、お前ら、さっさと行くぞ」

男は大声を張り上げ、連れてきていた部下達に指示を出し働けそうな女性を大勢引き連れ町から出て行ったのであった。

「ご迷惑をおかけしてすみません」

局長が深々と頭を下げる。

「いえいえ、・・・って言うか関税なんて払ってないんですけど。庇って貰ってすみません」

アラルと局長は二人して頭を下げあっていた。

「もうこの町からは出られた方がいいと思います。領主に目をつけられていいことはありませんから」

「そうですか。ここで少しお金を稼いでから――と思っていたのですが、それは隣町のドーネル王国で行ったほうがよさそうですね」

だが、そのアラルの言葉に局長は怪訝な顔を示す。

「ドーネル・・・ですか。ドーネルは今戦争準備の真っ只中なんです。寄合所での依頼をこなすにしても少し治安が悪いのでやめられた方がいいと思います」

アラルは考え込む。ここか、ドーネルかで仕事をしないといけない。でなければお金に不安が生じてくる。ドーネルでは治安に不安がある、というかドーネルまでサランを連れて行きたくは無い。戦争の始まる町に連れて行くなど言語道断だった。であればここはタティネルで仕事を行っておくべきである。

「一応寄合所での仕事を少し請けさせてもらってもいいでしょうか」

その言葉に局長は構いませんよ、と中へと再び案内してくれたのだった。依頼の掲示板を見ても小額の依頼ばかりであまりいいとは言えなかった。そうやってひたすら悩んでいると、それを見かねたのか局長が話しかけてきたのだった。

「どうやらあなたたちに見合う依頼は見つからないようですね」

その言葉に皮肉を言われたような気がしたアラルは後ろ髪を掻きながら苦笑いするしかなかった。話題を変えるためにアラルは先ほど受付嬢にもした話をする。

「俺の血がどのオリジナルの血なのかを解析できそうな奴に心当たりはないか?」

「血ならこの寄合所で調べられますよ。・・・でもあなたの血は不明となってますね」

局長はアラルの身分証を見て残念な顔をしていた。

「それだと、ここでも分からないでしょうね。でも、もしかすれば分かるかもしれません。古の水晶という物がありましてそれならもしかすると・・・」

局長の言葉にアラルは一筋の光を見出したのだった。

「それはどこにあるんですか!!」

「えっと・・・」

アラルは興奮して前のめりになっていた。

「領主のコレクションです。領主の邸宅にあると思われます」

「そうか・・・」

領主という言葉にアラルは一気にテンションが下がる。あの大盤振る舞いの行動を許される領主に混血が水晶貸してと言って素直に――貸してくれる訳が無い。どうせ働き手を捜していたから俺達も捕まえられて働かされるに決まっている。だが――俺1人なら・・・。

アラルは3人で緊急会議を開く。議題は古の水晶について。

今ここで解散するしかないと思っていたアラルだったが、フォーティーもサランも手伝いたいと言ったのだった。命がいくつあっても足りないんだぞ、とか言ってもダメだった。アラルに救われたこの命、だなんだって言う始末。アラルは腹を括ることにした。

「局長、俺達に依頼したらどうだ。この町の自治権を領主から奪還するために。そうすれば平和が戻ってくるんだろ」

「でも、あの領主は無理ですよ。相手が悪すぎます。しかももし仮に倒せたとしても他から侵略を受け、状況は変わらないと思います」

「では、領主はここにいるフォーティーに任せて貰えますか。彼はかなり強いので適任かと」

「そうですか」

局長は笑顔をフォーティーに向けるのだが。

「いや・・・、領主の代わりも見つけるということで依頼としてもらっていいですか。御代はキッチリ領主から巻き上げるということで」

「全て上手く行くのであれば問題ありません。ただし、私たちに被害が及ぶことも考えられますので、私たちは無関係ということにさせてください」

「わかりました。それではこの依頼を引き受けますので」

「ではこちらからもお礼と言ってはなんですが、ひとつ情報を。オリジナルの血を探していらっしゃるとのことだったのですが、恐らくあなたの血はこの常魔区には存在しないオリジナルの血だと思われます。ヘラレスの大会のことはご存知ですか。であれば、大会で優勝することをお勧めします。オリジナルがいる大陸の情報を得られると思いますよ」

アラルは局長にその話を更に詳しく聞きたかったが、それ以上話してくれそうな素振りもないため、深々とお辞儀すると寄合所を出て行ったのであった。

これから依頼を完遂する。そのためには領主であるガジャルの戦力を知る必要がある。場所などに関しては既に聞いていたからである。現在ガジャルが行っていることは城の建設。これはタティネルを含む領土においてこの地を国とすることを意味してのことだ。そのために城を築いているのだとか。既に国の申請は終わらせているとのことだが、となれば相手はいち国家ということとなる。正面からぶつかれば勝ち目はないだろう。速やかに頭をとるしか道はないだろう。とりあえず宿に戻り作戦を考えることとした。

宿で新しい情報を仕入れる。これだけ強制労働を強いれば暴動だって起こるはずだ。だが、そんな気配はない。それは何故か。その答えは宿主が教えてくれた。ガジャルは催眠術師らしい、労働者に催眠をかけ、意のままに働かせているらしかった。やはり、頭を速やかにとるしか方法はないようだ。でなければ催眠にかかった関係ない者まで敵として戦わなくてはならなくなるからだ。

アラルたちは町から南下していく。ガジャルの城は町の南に位置するらしくそこは森の中であった。大抵の者が断念する理由の一つが森の中というところ。魔獣を相手にしながら城に向かうのは非常に困難かつ、敵にも見つかりやすくこちらには不利だった。だが、アラルたちには関係が無かった。特にこの森に関しては。この森の魔獣がアラルたちに逆らうことはまずない、だって、タティネルに来るまでにこの森で暴れまくって森の頂点に立ったのだから。

あとはどう攻めるか。ガジャルの居場所さえ分かればこっちのもんなのだが・・・、そこまでを知る者は流石にいなかった。

こちらにはサランがいる。タティネルにおいてきてもよかったのだが、それだといざ危険が迫ったときに守りきれない。だからしょうがなくだった。なのでこちらは散らばっての戦闘ができない、潜伏しながら各個撃破、そしてガジャルに関する情報を集め、ジリジリと詰め寄る他になかった。すると、にぎやかな声が聞こえてくる。どうやら城を建設している場所までたどり着いたようだ。だが、恐らくここにガジャルはいないだろう。この付近にガジャルの屋敷があるはずだ。労働者はガジャルの催眠にかけられている、見つかれば一網打尽にされるだろう。少し森に潜伏して調査する必要がでてきたようだ。アラルはフォーティーたちと共に隠れられそうな場所を探し、そこに待機し情報を集めることにした。

「また、森で野宿・・・」

サランは嫌そうにそう呟いていたのだが、こればかりはしょうがない。突っ込んで戦ってもこちらにメリットがない。ほぼほぼ負け確定なのだから。

調査に出てからしばらくが経った。メインはアラルが行い、フォーティーとサランはお留守番だった。だが、相手も悠長に待ってくれてはいなかったのだった。

「アラルー!!」

遠くからサランの叫び声が聞こえた。サランは今トイレに行っており、側には誰もいなかったのだ。サランの叫び声にアラルとフォーティーは隠れ家を飛び出す。サランの目の前にいたのは同い年くらいの少女だった。名をミカル=ラブエナと言った。

サランはミカルに捕らわれた状態にある。手出しできない状態の中、優位な立場にあるミカルは笑い出した。

「お前達がガジャル様に歯向かおうとする謀反者だな。この少女の命が惜しくば大人しく捕まれ」

そしてミカルは魔獣達をアラルたちに差し向ける。

「へ・・・?」

変な声を出したミカル。だが、それもそのはず、命令したのにも関わらず魔獣たちは一歩も動こうとしなかったのだった。それにフッと笑うアラルはその隙にミカルからサランを奪い返した。

「これで形勢逆転だな、大人しく従えば危害は加えない。ガジャルの元まで案内しろ」

異様な汗をかくミカル。彼女は恐らくテイマーという職業なのだろう。魔獣使い、だから直接的な戦闘能力だけでは勝ち目が無いと諦めたのかもしれない。

アラルの言葉に従うのかどうか、煮え切らないミカルに耐えかねたのか、アラルはミカルに近づいていく。

「その辺にしといてくれないか、彼女は怯えてるじゃないか」

アラルはハッと驚き咄嗟に後ろに下がった。すると、ミカルの後ろから3人が姿を現したのだった。瞬時に本能が警告する、逃げろ、と。

「サラン、逃げろ」

アラルはそう言うとサランを持ち上げ、町のほうに全力でブン投げたのだった。

「地道な調査も無意味でしたね」

フォーティーは笑いながらアラルの横に立ち並んだ。

「うるさいわ」

引く気など毛頭ない。アラルたちに薄ら笑いを浮かべる相手たち。恐らくだが、戦力差として十分に開いているのだろう。でも、こんなところで逃げる訳にはいかない。サランが逃げ切るだけの時間は絶対に稼がないといけない。と、3人のうち2人が歩を進める。アラルに向かうのは男でフォーティーに向かうのは女だった。男の名はヨラン=ボーソット、恐らく体術を使うのだろう、そして女はハイリ=スタット、剣士だった。後ろに控えるのがペルシャ=モーガン、恐らくはリーダー的な役回りだろう。

アラルとフォーティーは思いのほか善戦する、どうやらペルシャ的には予想外だったのだろう。その重い腰を上げたのだった。だが、まずい、現状でイーブンなのだ。ペルシャが参戦すれば確実に負ける。

(俺かよ・・・。参戦するならまずは女を助けろよな。)

ペルシャはアラルの方へと向かってくる。これからどうするかを考えるが全く浮かばない、フォーティーだって必死なのに助けを期待もできない。もう全力で抗うしかないのだった。と、ペルシャはガンガン火炎を放ってくる。

『赤魔導士かよ・・・。』

ヨランの攻撃を避けながら魔法を避ける――ことなんてできる訳もなく、ペルシャの攻撃は完全に食らってしまったのだった。最悪な状況である、劣勢もいいところだ。だが、もう十分に時間は稼げているはずだ。そもそもこの戦いに勝とうなどとは端から思っていなかったのだ。あくまでもサランを逃がすための時間稼ぎ。後は上手いことフォーティーに近づき懐にしまってある転移の札を発動させるだけ。無碍に死ぬ気なんてアラルには毛頭なかったのだった。

(ヨランから一撃食らってフォーティーの元に吹っ飛ぶか。)

アラルが攻撃を食らう覚悟をし歯を食いしばった。だが、ヨランの大振りの拳がアラルに当たることはなかった。

「よう、恩人。助けに来てやったぜ」

アラルは後ろから伸びてきた手を追い勢いよく後ろを振り向いた。ゴツッ――。後ろにいた人物と顔面がぶつかり痛みに2人とも顔を抑えたのだった。

「何やってんだよ、ガンザ」

笑いながら後ろから歩いてくる集団。そこにはサランも一緒にいたのだった。

「おい、サラン。逃げろって言っただろ」

アラルは咄嗟にサランの元へと走りサランに問い詰める。

「この子が助けてって泣きついてきたのよ」

「お前は・・・、カジノのディーラーのティア・・・だったか?」

「あーいって・・・、この嬢ちゃんが空から飛んできた時はビックリしたぞ。キャッチしたらそのままアラルを助けてって泣きつかれてよ」

「お前、本物のガンザじゃねぇか」

「本物ね・・・。あの時は本当に助かった。だから、俺達に恩返しをさせてくれ」

ガンザは笑いながらアラルと握手を交わしたのだった。そこにアラルに依頼をしたメルケスの姿はなかった。メルケスの話をしようとしたのだが、相手もそこまでは待ってくれないようであった。

「ローゼルピスニカ最強の男か。お会いできて光栄だね」

ペルシャは不適な笑みを浮かべていた。

「それはどうも」

ガンザもペルシャ同様に不適に笑みを浮かべて見せた。

「大丈夫なのかよ、あいつは病気なんだろ」

「いや、なんかケルトのおかげで治ったみたいだ。不治の病だったのに・・・」

ドルガンは苦笑いしながらそう言う。

「ケルトか・・・。あいつは常人には理解できないほどのアホだからな」

「話は後だ、大体の話はこの嬢ちゃんから聞いてる。まだこの先に用があるんだろ、だったらここは任せな」

ハイズの言葉にアラルは素直に礼を言う。

「すまない、助かった」

アラルはサランの手を握るとフォーティーと共に先を進む。

「もう絶対離れないんだからね」

ニッコリと笑いながらサランはアラルにそう告げるのであった。ペルシャたちの妨害はガンザたちが防いでくれて何事もなく先に進むことができた。

調査した甲斐もありガジャルの屋敷へは他の労働者に見つかることなくたどり着くことができた。屋敷の兵を倒しつつガジャルの元へと向かう。ガジャルは余裕そうな態度であった、恐らくは催眠術で全てを終わらせてきたのだろう。問答無用でアラルはガジャルに突進する。ガジャルの焦った顔に笑いを堪えながらアラルは渾身の一撃をお見舞いする。催眠が効かないアラルに焦り、その場から逃げ出すガジャル。アラルに準備の抜かりは無い、高かった洗脳無効の札もここでは出し惜しむことなく使ったのだった。3枚も・・・1枚100万eもする札を・・・。絶対元は取り返すという意気込みを胸にアラルはガジャルを追う。

(・・・って言うか、町を救おうとしている奴に商売してんじゃねぇってんだよ。あの局長には帰ったら更にオリジナルの情報を貰わないと割に合わないな。)

ガジャルは地下への階段を逃げるように下りていく。何故地下へと逃げるのか、普通なら外へと逃げるはずだ。一抹の不安がよぎる中、その理由はすぐに分かることとなった。

「やれ!化け物」

ガジャルは地下牢の鍵を開けるとそこから化け物と呼ぶ人物を開放した。

化け物と呼ばれた者は女性であった。瞳に生気は無く、恐らくは催眠をかけられているのであろう。

「フォーティー、ガジャルを頼む」

「おーけぃ」

アラルは即座に女性と対峙する。フォーティーに勝ち目がないから、というかアラルにだって勝ち目は無い。だが、ここはしょうがない、フォーティーがガジャルを倒し女性の催眠を解く他に勝ち目はないのだから。アラルは決死で女性と戦うのだが、それはアラルの想像を遥かに超えていた。その女性は壮絶に強かったのだ。

(確かに・・・、こいつは化け物だ・・・。)

ガジャルの言葉に共感しながら、アラルは必死に化け物と戦う。アラルの力尽きる寸前に化け物の拳が止まった。どうやらフォーティーがガジャルを倒したようであった。

すると、自我を取り戻したのか、女性はそのまましゃがみこみ泣き出したのだった。

「私は・・・また他人を・・・」

力は強い。恐らくはこの世界でもかなり強い部類に入るだろう。だが、心が優しすぎるためか、とても弱く小さく見えたのだった。

「お前はこの町の住民か?」

「うん、だけど町の人から迫害された・・・。化け物だといわれ、親は殺され、この屋敷に幽閉された。元々この屋敷は私を幽閉するための牢獄だったの」

泣きながら一生懸命に答えるのだった。

「お前に戦う意志はなかったんだよな?」

「戦いたくないのに体が言うこと聞かなかったの」

「俺たちはこの町を救う依頼を受け、ガジャルに捕まった男達を助けに来ただけだ。お前をどうこうするつもりはない」

そう言ってアラルは去ろうとしたが、サランが手を差し伸べた。

「行こ、一緒に」

かがんだまま未だに泣いている女性に笑顔を向けサランは言った。

「言うと思った」

アラルはそう言ってサランの頭をグシャグシャとなでた。

「行くとこないんだろ?だったら来いよ、俺たちはしがない旅人だ、家の無い者どうし仲良くやろうぜ」

アラルがそう言うとティーナは笑顔で「うん」と言った。

その後、城の建設をしていた労働者たちを解放し、ペルシャたちを倒したガンザたちと合流し、町へと戻っていった。

ガジャルに化け物と呼ばれた女性、彼女はティーナ=グランパといった。ガンザはティーナを一目見るなり「俺と勝負しないか」とけしかけていたが、ティーナは「嫌です、無理です」と即答していたのだった。恐らくはガンザよりも強いのだろう。

(っていうか、なぜあのペルシャと戦った後なのに奴らはこんなにもピンピンとしてるんだ?)

呆れるアラルを他所に皆で町へと戻ったのだった。町へ戻るとガンザたちは先を急ぐからとそのまま行ってしまったのだった。ガンザたちは今、攫われた仲間であるメルケスを救う為、グエンサに向かっているとのことだった。グエンサ王国、それは現在鎖国をしている国である。容易には中にも入れてもらえない、困難な目標ではあるがアラルは自分達もガンザに負けないように頑張らないとな、と更に気合を入れるのであった。

町に戻り宿で疲労を回復していると、いきなり宿に局長が現れたのだった。町は大賑わいでアラルはこの町の英雄と称えられたのだった。

「本当にあのガジャルを倒してくれたのですね。本当にありがとうございました」

「まぁ、倒したのは倒したんだが、新しい領主までは見つけてやれなかったな」

アラルは皮肉な顔をしながらそう応える。

「いえいえ、もう十分ですよ。領主に関してはヘラレス王国の方に依頼を出し、この町を守ってくれる戦士を派遣して貰うつもりですので」

「そうか、じゃあ、もう何も心配ないな」

周りではアラル様、アラル様と人々がアラルに感謝の意を示している。町の中央でかがり火を焚き、それを囲んで皆踊っているのであった。その中にはフォーティーやサランも一緒にいたのだった。

「ティーナさん、あなたは本当は規格外の強さ故、ヘラレス王国へと連行する義務があるのですが、アラルさんが身元引受人となるのであれば、ここは目を瞑りましょう」

本当はアラルだって言いたいことはある。ティーナに行ったこの町の仕打ちは許せたものではない。だが、それはティーナが許してあげてと言ったので我慢することとした。依頼料も十分すぎる額をかっぱらったのでもうこの町に居座る理由もなくなった。少しばかりこのタティネルでのんびりと過ごして、アラルたちは次なる町、ドーネル王国へと向かうのであった。

戦場であれば更なる高みへとレベルアップできる、その期待を胸にアラルは4人で先を進む。局長との話でとりあえずの向かう先は決まったのだから。目的地はヘラレス王国最奥、ドーミルの森。そこにはヘラレス3神と呼ばれる神が住んでいるという。神であればアラルが捜すオリジナルについても知っているかもしれないのだから。

因みにガジャルの屋敷で奪った古の水晶は偽物だったそうだった。





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