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悪魔の契約 アラル=バラシンの章  作者: コロコロコロネ
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3章 生きる目的

ケルトの動行を知ったことで、さらなる高みへ登るため新たな町へ移動することにした。

かつての親友との協力は不可能であると知った今、俺は次のステージへと歩みだすしかなかった。

親友だった者と今の俺の立場は真逆だ。親友は悪魔を助け、俺は悪魔を殺す。何が悪であり、何が正義であるのか・・・。

きっと、正義と言われた人達は正義だったのだろう。だが、悪の立場からすれば、自分たちこそが正義だったはずだ。やり抜くだけの信念がそこにはあったはずだから。要は正義対正義。民衆の賛同が少なかった者を俗に悪と呼んでいたに違いない。だとすれば、俺の今やっていることはさしずめ悪ということ――そうなるのかもしれない。

アラルはそのままランプへいき、ラクトスの森へ入った。

とりあえずの目的はラクトス討伐。

森の主で自分の今の力でも測ってみるかな。

軽い気持ちでラクトス探しを始めた。それからどのくらい日が経ったのだろうか。

そんな時、懐かしい顔、ケルトと遭遇する。

ケルトは何やら血相を変えてタンダスという村の方角へ走っていた。

まだ悪魔のために――とかやってんだろ。

考えれば考えるほど、アラルが胸の内に秘めていた想いは我慢が効かなくなり、木の上からケルトめがけて一直線。

悪魔に手を貸すケルトがどうしても許せなかった。

ただそれだけ。

過去にあれ程のことがあったというのに・・・。

悪魔と手を組むなんてと失望し、アラルはケルトに攻撃を仕掛けるが負けてしまう。

「悪魔が悪いんじゃない」

そうケルトは言うのだが。

どうしても俺は悪魔を許すことができなかった。

ケルトの過ぎ去った今、アラルは傷を負い、座り込む。そして、いつの間にか寝ていた。

次の日からアラルは自分を狙う魔物を倒し、食しながら、ケルトの言った言葉の意味を考えるようになった。

『自分を見、そして周りを見ろ』・・・か。俺の幸せ・・・。

悪魔にあんな仕打ちを受けたのに…。お前は本物のバカだよ。

ラクトスと出会い、戦うことで・・・そこで俺は確かめたい。自分の価値を。

俺は今、全てを忘れ、無心で何かに没頭したかった。

絶望し、立ち止まる。もうそんなこと、二度としたくなかったから――。

再びラクトス探しを続けて、もう何日経ったのだろうか。いや何十日なのか。

大暴れしている割には、森の主であるラクトスは俺に一行に興味を示してくれない。

自分の住処をめちゃくちゃにされてるってのに・・・。

魔物との戦いにもそろそろ飽きてきた頃だった。しばし草陰で休憩している所だった。2人の悪魔と1人の悪魔。1人の悪魔を2人の悪魔が追っていた。だが、アラルの休んでいる付近で1人の悪魔は立ち止まった。そして、迷惑なことにそこで戦闘を始めた。

アラルはその光景を適当に眺めていた。

2対1のように端からは見えるが、1人は少女で5歳くらいだろうか。戦闘経験もないのだろうな。もう1人の悪魔の後ろに隠れるような形でただ戦闘を見ているだけであった。

戦闘中の話の中でまず気になったのはザキル=メイビス。あの1人の悪魔はザキル=メイビスっていうのか。

俺もうわさでしか聞いたことはないのだが、メイビス一家。それは、ここらでも有名なほどの暗殺一家だった。詳しい内容は不明だが、恐らくはその血族。そんなところだろう。こんな所で、そんな有名人に出会えるなんて、俺って運がいいのか?

戦うきっかけとなった内容なのだが、どうやらあの少女は病気のようだ。ザキルに注射器で毒を打ち込まれたのだとか。ザキルに関しては、そういう遊びが流行っていたからだ――とかなんとか。

だが、あのザキルとかいう悪魔。なぜ、逃げたりなんかしていたのだろうか。戦闘を見ている限り、圧倒的に強い。今まで逃げていた意図が全く分からなかった。

そして、とうとうザキルは相手の悪魔を倒した。まぁ、結果なんて始める前から大体分かっていたのだが。

ザキルは懐からナイフを取り出すと、必用に相手の悪魔を刺し続けた。もう、既に死んでいるにも関わらず。少女はそれを止めようとザキルに飛び掛かるが、軽くあしらわれている様子だった。

「お前は後だ。こいつをもっと切り刻んでからだ。その後でたっぷりと遊んでやるからな。・・・そうだな、後2本くらい毒の注射を打ってやるから、そこで大人しく待ってろ」

ひどい言い草だった。

その後も少女はザキルの非道を止めようと割って入るのだが、とうとう動けなくなるくらいまでにザキルに痛めつけられた。

「はは・・・。この際だ、冥土の土産にお前に教えといてやる」

ザキルは少女に向かってそう言っていた。

「俺が逃げたのは、お前等を恐れたからじゃない。お前等と一緒にいたケルトといかいう混血だ。あいつには少し前に痛い思いをさせられたからな。邪魔されないようにお前等を引き離したかっただけなんだよ。ふっ、そうとも知らずにのこのこと付いて来やがって。死んで当然だよな。お前もじっくりと殺してやるからな、ひゃはは・・・」

ケルト・・・か・・・。面白いじゃねぇか。ちょっとした暇つぶしにはなりそうだな。

アラルは重い腰をあげ、立ち上がった。そして、堂々と草むらからザキルたちの前へと姿を現した。

「なんだ?お前は?・・・ん?なんだ、お前も混血か」

ザキルは少々バツが悪そうにアラルに対して立ち上がり警戒する。

「混血には少々嫌な思いをさせられてたんだ。ここでお前を殺して憂さ晴らしでもしてやるよ」

ザキルはナイフを片手にアラルにそう啖呵を切った。

「ほう、憂さ晴らしか。それは面白い。メイビス一家の実力を篤と拝見させてもらおうか」

「ふっ、生意気な」

ザキルは即行でアラルに飛び掛る。

アラルはザキルの放った拳を右手で受け止める。

「とんだザコだな。そりゃ、ケルトに負けて当然だな」

アラルはため息をついた。

「ケルト?なぜお前がその名を知っている?」

ザキルは少々焦っていた。

「俺もこの前ケルトに負けたからな」

「ふっ、驚かせやがって」

ザキルはそう言うと、アラルをキリッと睨む。

「だがな、お前は本当についてない。ケルトが相手だったなら、殺されることはなかっただろうに」

「ふっ。お前は俺を殺せるとでも言いたげだな」

「殺せる?おいおい、冗談だろ。殺すんだよ。悪魔は皆殺しだ」

アラルはそう言った瞬間、もう一方の手でザキルを殴り飛ばした。

【マインドショック】

ザキルの吹き飛んだ方へも一瞬で距離を詰め、再びザキルを殴り飛ばす。

「くそっ」

再び接近してくるアラルに、ザキルは殴られることを覚悟の上で突進した。

ボコン

グサッ

「あはっ」

ザキルは殴られ、倒れこんだのだが、それと引き換えにアラルの腹部にはナイフが刺さっていた。

「そのナイフにはなぁ、毒が塗ってあるんだよ。時期に効いてくるはずだ。もがき苦しみ、死ね」

ザキルはアラルに殴られたダメージですぐに立ち上がることはできなかった。

パンッ

突然腹部にナイフの刺さっているアラルが爆発した。

「なんだ?自爆か?」

!!!

途端、ザキルは背後に気配を感じた。すぐに振り返るとそこには先ほど爆発したはずのアラルがいた。

「なぜ・・・」

テンパっているザキルの頭上にはアラルの足があった。そして、アラルはザキルを下敷きにおもいっきし踏みつけた。

「ぐはっ」

何度も、何度も――。

ザキルが地面にめり込み、動かなくなるまで。

その光景を見ていた少女は、唖然としていた。きっと、こう思ったからであろう。――次は私が殺される番だと。

少女に歩み寄るアラルに対し、少女はアラルから目を逸らさなかった。まるで、覚悟が決まっているかのように。

アラルは少女を殺す気で歩み寄っていっていた訳だが、少女の前に立ったとき、なぜだか、ふと考え込んでしまった。

この少女は目の前で一緒にいた男が殺された。

何なんだろうな、この気持ち?

その時アラルの脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした。

フォードに殺されたジュリ。そこに、無力だった俺がいた。何もできなかった。悔しかった。そしてケルトが言った『悪魔が悪いんじゃない』という言葉。

そして、ふと何かが聞こえたような気がした。風の音?――でも確かに聞こえた。


「助けなきゃ」


誰かがそう言った気がしたんだ。


・・・。


ジュリ?


アラルは握っていた拳の力を抜き、少女の横に腰をおろした。

少女は「悪魔は嫌いなんじゃ・・・。皆殺しだって・・・。なぜ殺さないの?」そう言っていた。

そうだったな。ザキルに対して俺はそんなことを言っていたな。

「分からない。何故こうしたのか。だが、なんか、助けなきゃいけない気がした」

アラルはそう少女と話をした後、その場を去ろうとしたのだが、死んだ男を揺さぶりながら、大声で泣いているのを無視できず一緒に埋めてやった。

そして、なぜこんなことを言おうと思ったのかは分からない。だが、気づくと、行き場がないのなら一緒にくるか?――と聞いていた。

少女の名はサラン=ドートナーと言うらしい。アラルが手を差し出すと、その手をギュっと握り、大きく頷いた。

少女の手はすごく温かく、何故か心が落ち着いた。

こういうことなのか?

なぁ、ケルト。

おれにはまだしっくりこねぇわ。一時の感情か、どうなのか、――こいつといて考え直してみるわ。

『自分をもっとよく見てやれ。そして、自分の周りをもう一度見直してみろ。幸せはきっとそこにあるはずだから』――か。

じっくり考え直してみる必要がありそうだな。

アラルは空を見上げそう思った。

とりあえず、今はサリファをケルトに任せて、俺は俺の幸せとやらを探してみるとするか。

そう、こいつと一緒に――。

「行くぞ、サラン」

「うん」

アラルとサランは手をつなぎ、ラクトスの森から姿を消していった。


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