2章 仲間を信じ抜いた男
アラルは今日も淡々と寄合所へ向かっていた。
だが、今日はいつもと違う。
寄合所の前には1人の男が立っていた。
男はアラルを一目見ると、会釈してきた。
「メルケスといいます。今日はあなたに依頼をしたくてここで待っていました」
アラルは何も言わず、メルケスという男を見ていた。
「あなたのおうわさはかねがね耳にしています。その力を見込んでのことなんですが、とある人物の捜索、そして救出をしていただきたいのです」
「うわさねぇ。何でもするが、面倒はごめんだ。依頼なら寄合所を通してくれ」
「少々事情があって寄合所は通せないんですよ」
「じゃあなおさらだ」
「あなたの依頼の大半は悪魔の殲滅でしたよね。偶然なのか。もしくは狙って悪魔を殺しているのか・・・」
「脅してるのか」
「いいえ、私の依頼を引き受けてもらえれば、それはあなたの目的にもつながるかもしれないですよ」
「内容は誰にも知られてはいけないってことなのか」
「そうですね。寄合所に依頼すれば、相手にも筒抜けになるので」
「ほぉ、ここでそんな力を持ってる奴なんて限られてるぞ」
メルケスは笑った。
「ガンザ=レミラスか」
「恐らく、私と会うのは今日が最初で最後でしょう。わたしの不穏な動きはすでに相手方にばれている。全額を前金で払います」
「全額か。トンズらするかもしれないぞ」
「あなたはそんなことしない。だって、それがあなたの悪魔との契約だから」
何だ、こいつ…。俺の何を調べたってんだ…。
「ふっ、まぁいい。俺にも損はなさそうだ。引き受けてやる」
「本物のガンザを捜して救出してください。そして、わたしの仲間にドルガンという奴がいます。そいつにガンザを引き渡してください」
「本物のガンザねぇ、高いぞ」
「お金ならいくらでも」
「おまえの命だって言ってもおまえは依頼するか?」
「私の命なんて安いものです。それでよければ、どうぞご自由に」
「そうか、分かった。今回は金にしとくかな」
「では、よろしくお願いします」
そういうとメルケスは手にあらかじめ持っていた大金の入っているかばんをアラルに渡し、その場を去っていった。
「ふぅ、とりあえずカジノでも行ってみるか」
アラルはローゼルピスニカの東にあるカジノへ向かった。
時刻は昼の2時頃。
「さすがにまだ開いてないよな」
アラルは血の入った小瓶を片手に遠くからカジノの様子をうかがっていた。
「ふっ、そういうことか」
アラルは1日、外からカジノの様子を伺っていた。
ガンザを狙っている女が1人。1、2階はカジノ、それから上はレストランに宿泊施設。アジトにするなら地下か。
出入り口は4つ。客用が2つ、職員用が1つ、謎の出入り口が1つ。怪しいのは断然あそこだな。まぁ、普通には入れないだろうがな。
えーっと、確か、メルケスは近々消えるような口ぶりだったな。大体俺の仕事は最長でも3日以内で終わらせてきた。消えるってことはそれよりも早い段階で何かが起こるってことか。
情報屋のところでもいって、カジノの見取り図でも貰っとくか。
アラルはその場を離れ、ローゼルピスニカの街中へ戻っていった。
次の日、アラルは街中にいた。
今日はやけにうるさい。港のほうで爆発音が聞こえた。
まぁ、行動は夜の方がいいし暇つぶしにいってみるか。
アラルが港に行くと、そこには懐かしい顔があった。
「ケルト…、それにメルケスもいやがる」
その先には奴隷船らしきものがあった。
「ガンザの救出が奴隷解放につながるねぇ。そのままじゃねえかよ」
アラルは笑った。
じゃあ、俺もこの機を逃すわけにはいかないか。
アラルは早速カジノへ向かった。昨晩、情報屋からしいれたカジノ地下の見取り図を片手に。
敵さんはだいたい出払っている。んじゃあ、あの出入り口を強行突破するしかないな。
「鉄拳制裁タイムだ」
アラルの目の色が変わった。
アラルはカジノに着くと地下の出入り口を蹴破った。次から次に出てくるザコ共。
ボコ、ボコ、ボフ
アラルの通った後には血まみれの敵が大量に転がっていた。
敵の大将も奴隷船で頭がいっぱいか。
アラルはいとも簡単に地下2Fへやってきた。
ここがガンザの捕らわれている牢獄か。
アラルは歩きながら一つ一つ牢を見ていく。
ん?
奥のほうから足音が聞こえる。
若干身震いがした。
「こんなの飼ってちゃダメだろ…」
アラルの目の前には右手が大鎌の魔物が姿を現した。
「騒がしい原因はおまえか」
喋るのかよ。3段階以上か・・・もしくはオリジナル。
「排除する」
メルケスが依頼するわけだ。こんなのが牢番じゃどうにもできないよな。
アラルも構える。
「おれはヒランだ。オリジナル相手にどこまでやれるのかな」
ヒランは笑った。【Aボム】ヒランは技を発動させる。
ヒランが左手をアラルに向けると、火炎弾を発射させた。
「普通こんなところでやるか?」
アラルが火炎弾をよけると、すぐ後ろにあった上へ上がる階段に衝突した。
出口がなくなっちまったか。
【狂】アラルは一時的に効果のある肉体強化魔法を発動させる。
そして、アラルはヒランに急接近する。
ヒランはタイミングを合わせるように右の鎌を振った。
アラルも鎌の動きに合わせて右下から左上に拳を振った。
ヒランは少しよろけたが、すぐにアラルの襟元をつかんだ。
アラルは拳を当てた瞬間離れようとしたが、動けず、下段蹴りをはなった。
「こいつ足が…」
ヒランの下半身はゼリー状になっていた。
ザクッ
ヒランはそのまま右の鎌を振り下ろした。
「ん?」
ヒランの叩き斬ったアラルが突然爆発した。
ヒランは辺りを見回したがそこにはもうアラルの姿はなかった。
「逃げられたか。まぁいい、まだ強くなりそうだから次会うときはもっと楽しませてもらうか」
ヒランはそういうと姿を消した。
「何なんだ、あんな奴に勝てる奴がいたら見てみたい。ってか、メルケスめ、金額を倍にしてもらわないと割りに合わん」
アラルはガンザを担いで地下水路を猛烈に走っていた。
「足がないとか、バランスを崩す要素ゼロだからね、マジで。オリジナルとかも聞いてないし」
アラルは文句を言いながらひらすら逃げた。
そして、アラルは港についた。奴隷船の気配はない。
「どうなってんだ」
アラルは高台から港の方を見下ろしていたのだが、すぐ横にいるガンザが港にもいたのだ。
本物ね。そういうことか。ケルトが何をしているのかは知らんが、ドルガンとやらが現れるまでは待ってやろう。まだ、さっきのヒランとの疲労も回復しきれてないし。あの偽ガンザはヤベエ、まともにじゃ、全く歯が立たないだろうな。そう言ってアラルは見晴らしのいい崖の上で本物のガンザと共に体を休めたのだった。【狂】の負荷もあり、しばらくは動きたくないし緊急時の対応にも不安があるためであった。
それから数日が経つ。いきなりケルトが姿を現した。
ふっ、瞬間移動とは乙な事を。
それから、一気に戦闘が始まった。
アラルは一瞬、偽ガンザと目が合った気がした。
ん?今、見られた気がしたが、気のせいか?
そして、その後、偽ガンザはすぐに姿を消した。あたかも、俺から逃げるように。
「今しかないよな」
港が爆煙に包まれ、視界が定まらないこの機会を狙っていた。ドルガンもちゃんといることが確認できたし。
「メルケスからの依頼だ。じゃあ、こいつはここに置いとくぞ。ドルガンという奴に伝えといてくれ」
アラルはそう言うと、ケルトにガンザを手渡した。
変わったな、ケルト。まぁ、話したいことは山ほどあるが、今の瀕死のお前と話しても仕方がない。また、会ったときにするか。なんで悪魔とつるんでるんだ、とかな。
アラルはそのままケルトの前から姿を消した。
もうこの町には用はないかな。ケルトと力を合わせようと思ってずっとこの町にいた俺が馬鹿だった。フヌケどころか悪魔と仲良しゴッコとはな。
なぁケルト、お前もおれの敵になるのか?




