14章 究極バトル
「で、こんなことをしでかした理由。記憶を食って何がしたかったのかな?」
ロナウェルの問いにサランがお茶をすすりながら応える。
「効率的なレベル上げの方法を知りたかったんだよ。5万以降ほとんど上がらなくなってきたって言ってたんだよ」
「ふっ。なるほどね」
ロナウェルははにかみながら戦いの風景を眺めている。その手には皿があり、ティーナの作った唐揚げを頬張っていた。
「知っているなら教えて欲しいんだよ」
サランもまた唐揚げを頬張っていたのだった。
「この唐揚げというものはとても美味しい。そのお礼として教えても構わないのだが…。それじゃあ、今戦っている奴らからすれば興ざめだ。こちらはヘルガ、リセル、ルーナ、ディーゴが戦っている。ケイティはそちら側ということにしてシェイマスもいる。5人中、そちら側が3勝したら教えるってことにしよう。それならば現状、戦っている奴らにも損はないってことだ」
「減るもんじゃないし、そんなケチくさいことは言っちゃダメなんだよ」
「ケチくさい…か。でも、ゲームは楽しいもんだ。何事も面白くないと…でしょ」
その言葉にサランは顔を膨らませるのだった。
「じゃあ、私も参戦するんだよ」
そう言ってサランは立ち上がるのだが、ガツンと防壁に当たる。
「これは内外ともに貫通無効なんだ。だから、手助けはできない。面白い戦いに横やりなんて…、無粋なことはやっちゃいけない」
どうやら現状を把握した3人であった。この結界は外敵からの攻撃をはじくといういい面もあるのだが、同時に悪い面も存在する。3人は外で戦っている仲間を援護できない。そして、最悪の場合、4対6での戦いを強いられることになるかもしれないということだった。
「サランちゃん、大丈夫ですよ。ロナウェルさんは裏切るようなことはしないと思いますから」
ティーナは新たに作ったチャーハンを片手に、そうサランに声をかける。だが、サランは納得がいかないのか口を尖らせているのだった。
「アラルにもしものことがあったら耐えられないんだよ」
ティーナは笑顔になり小皿にサランの分のチャーハンを取り分ける。
「サランちゃんはアラルのことが大好きなんですね」
サランは顔を真っ赤にしてプイとそっぽを向くのだった。そんなサランとティーナの会話を聞いていたのか、ロナウェルも取り分けてもらったチャーハンを頬張りながらサランに笑いかける。
「大丈夫ですよ。何があろうとも1対1ということは守らせますから。もしそのルールを破ろうとするなら私が制裁を下しに行きますので――誰が相手であろうとも」
3人は納得したのか、仲がぐんと深まっていたのだが、1人だけ腑に落ちない者がいた。
「何がだ!」
和気あいあいな雰囲気をぶち壊すように今まで黙っていたローゼンが口を開く。その一人だけ違う異様な空気に皆はローゼンを見据えるのであった。
「そんな言葉だけで信じるとはお前らは愚かだな。そもそもだ、そもそもこいつらは敵だ。私だって殺されるために攫われたんだ、それが少し変わってお前たちを殺すための人質にされたんだぞ。根本の目的は今も変わらないだろ。こいつらの目的は私たちを殺すことなんだぞ」
ローゼンはロナウェルを睨みつけるのだが、フゥとため息を吐き、ロナウェルはローゼンに向き直る。
「そうですね。もしかするとこの戦いが終わって、あなたたちを皆殺しにする――ということになるのかもしれません。だけど、それは、今はまだ分かりません。全てはヘルガが決めることですから。ヘルガが殺さないと言えば、私たちはあなた方を殺さない」
「ていうか、私たちを殺す理由って何なんですか?」
疑問に思ったことを素直に吐露するティーナ。
「ふふ、それを直で聞くとは…面白い人ですね。まぁいいでしょう、話したところで私たちには別段問題も生じないでしょうから。ある人に頼まれたからですよ。恐らくはあのオリジナルが知識を渡さないのなら殺すと最初に喧嘩を売った人物でしょうね。自分こそが最強と驕った結果がこの状況につながったんだと思いますよ」
ロナウェルの言葉にサランとティーナは一瞬、この事態の原因となったラスパーを睨みつけるのだった。
「依頼を受けたんだったらヘルガという人の心ひとつで殺しを辞めるということはできないのではないですか?」
その言葉にロナウェルはまたもやふっふ…と笑う。
「私たちはそいつの部下ではないんですよ。当て馬的な役割をさせたかったんだと思います。私たちの今のリーダーはあくまでもヘルガ、ヘルガがやらないと言えば私たちはそれに従うだけ。逆にヘルガがその依頼人が気に食わないと言えば、そいつを殺しに行くだけ」
「でもそれはあり得ないだろ。このカルモの組織を…いや、領主さえも敵に回すことになるかもしれないんだぞ」
ローゼンの言葉にロナウェルは明後日の方角を見ながら何を思いふけったのか、またもやふふと笑う。
「それも悪くない。だが、ここでの私たちの目的は達成しました。誰に恨まれようが全く問題ないですね。向かってくるのなら相手になるだけですから。それにもうそろそろ使者が来るはずなんですよ、この常魔区から抜け出すための」
と、その言葉のあとすぐにティーナたちは背後に気配を感じる。
「お待たせ」
男は何事もなく自然に言葉を発した。しかも貫通無効の結界内にいたのだ。
「遅かったな、アムール」
ロナウェルにそう声をかけられた男はロナウェルの隣に座り、ロナウェルが手に持っているチャーハンを一緒に頬張りだす。
「捜すのに時間がかかってね、こんな特殊な空間にいたんじゃ遅くもなると思うんだけど」
「そうか、で、だ。お前が連れてきているもう1人は誰なんだ?」
「あっ、そうだった。紹介するよ。この人はヨルムです、僕のお嫁さんです」
「は!?」という驚きの言葉と共にアムールの言葉にロナウェルは目を見開きフリーズした。
「お前はいったい何をやってんだ?常魔区に婚活に来たのかよ」
ロナウェルは頭を抱えうなだれるしかなかった。だがアムールはそのままヨルムを横に座らせ、次はティーナたちに挨拶をしていたのだった。
「マイペースすぎるだろ。お前は…、兵隊だろ。いつ死ぬかも分からないのに嫁なんて…」
ロナウェルの言葉にアムールはニッコリと笑いかける。
「ザイル様に追放されたんだよ。だから僕はもう古魔区へは戻らない。自由に暮らせだって。その代わりヘルガたちを古魔区に戻す手伝いだけ、最後にしてほしいって言われてね」
「なんだよ、それ。全く面白くない」
「寂しいのは分かるよ。でも、もう僕はヨルムのもの。君と僕が会うのもこれが最後。だからさ、…悔いは残しちゃいけないと思うんだよ」
そう言ってアムールはロナウェルの手を引き一緒に立ち上がる。そして、「ヨルム、お別れパーティーに参加してくるから、少しの間だけこの結界の中で皆とおしゃべりしながら待っててくれないか?」と告げ、平然と貫通無効の結界をロナウェルと通り抜ける。
「面白いね、ここでは皆全力が出せるんだね」
そう言って、アムールは身構える。ロナウェルも察したのかアムールに対峙する。
「そうだな。最後ならば、俺も参加しない訳にはいかないよな。お前が死んだら、俺の嫁にしていいか?」
その言葉にアムールは少しばかり顔が引きつる。
「僕が死ぬ?冗談はその天然パーマみたいな角だけにしときなよ」
その言葉を皮切りにロナウェルとアムールが激突する。
「えっ?この状況はもはやどういう状況なんですか?」
訳が分からなくなったティーナに、「私も分からん」とそう答えるローゼンであった。
「よろしくなんだよ、ヨルム」
「こちらこそ、サランちゃん」
ヨルムとサランは、難しいことを考えないように努め、素直に目の前のイベントを楽しく観戦することにした。
…
「って!なんで、お前がここにいるんだよ、アムール!」
アラルとの戦闘の最中にあるヘルガは、突然隣に姿を現したアムールに心臓が飛び出るほどに驚いていた。
「え?いや…、皆のやってるお別れパーティーが楽しそうだったから、つい」
「つい…、じゃねぇ。今は遊んでる時じゃ――」
「まぁまぁ、このパーティーがひと段落したらいろいろと話したいことがあるから、巻きで頼むよ。それまではロナウェルと遊んどくから」
そう言うと、アムールは強烈な衝撃波をロナウェルに食らわせるのだった。「え…?」という感想が素直に表に出るヘルガ。俺たちは仕事をしているのであって、遊んでいる訳じゃ…。とも思ったのだが、冷静に周りを見渡してみると、何故かシェイマスとケイティが戦っている。ルーナに関してはもはや戦ってすらいなかった。優雅に椅子に座り何かを飲んでいるのであった。椅子と言っても、その椅子は敵だった。意味が分からない。いつからこんなカオスな状態になったのか、真面目に戦っていたヘルガを急に脱力感が襲う。
(何でだろう、全てがもうどうでもよくなってきた。)
ヘルガは既に戦意を喪失した状態で向かってくるアラルと対峙するのであった。
(もう止めてもいいかもしれない。)
そう思ったのだが、それは皆の様子を見てからにしようと全てを諦める、そんなヘルガであった。
リセルVSラスパー
リセルとラスパーの壮絶な戦いはサランたち観戦者からすると一番の見ものだった。時折リセルの放った氷の槍がこちらに飛んでくるのだが、ロナウェルの張った結界のおかげで全ては無効化されている。ラスパーは転移を繰り返しリセルに的を絞らせないように立ちまわっている。ラスパーもゼクスと同じ霊属性なのだが、ラスパーは【呪拳】は使わない。相手のライフを半分にする強烈な技なのだが、それを相殺するデメリットが存在するからだった。相手同様に自分もライフが半分になるのである。1対1の戦いにおいては分の悪い攻撃法であった。それが一般論なのだが、この戦闘においてはその一般論さえ通用しない。そう、相手が悪いのだ。自分を犠牲にしてでも一撃を食らわせる、それがこの技の特徴なのだが、今回の相手は氷属性。霊属性の攻撃が効かないのだ、つまり【呪拳】を放っても自分のライフが半分になるだけで相手は何の痛痒も受けないのだった。故にラスパーは属性能力に頼ることができないのだった。物理で殴って勝つ、それしか方法がなかったのだった。
「ちまちまと、こざかしい奴だなあ!」【絶対零度】
リセルの技によりフィールドが氷の世界に変わる。ツルッ、「イテッ!!」近くにいたケイティと戦っているシェイマスが盛大に転んだのだった。
「おい、リセル!俺に何の恨みがあるってんだよ。早くこの氷を解け、じゃないと…」
そう言ってシェイマスは一目散にこの場から非難するのだった。
「これはなんと好都合」
ケイティは氷で覆われた地面に手をつくとそのまま目を見開いた。【雷怒】
ケイティの放った電撃は地面の氷を伝いシェイマスを追いかけるのであった。
「テッメェ、何でもありなのかよ。ちったあ手加減しろよ。もう頭きた!!!」【大破壊】
シェイマスは自身を中心として大爆発を起こした。その爆風に吹かれ、ディーゴは相手であるゼクスを見失うのだった。
「おいシェイマス、殺すぞキサマ」【アーマークラッシュ】
ディーゴは怒りと共にこのフィールド内にいる全員の防御力を下げたのだった。
ボコーン。そんな中ミラクルなタイミングでアラルの拳がヘルガに当たるのであった。放物線を描くように綺麗に吹っ飛んでいったヘルガ。それを見てアラルは唖然とするのであった。今まで攻撃が当たったとしても何のダメージも受けていないような感じだったのにいきなり吹っ飛んだのだから当然だろう。
「あいつやせ我慢してたのかよ」
「すごいね、君。あのヘルガを吹っ飛ばすなんて」
アラルの隣には現在見たこともない男が立っており、気さくに話しかけているのだった。
「やけに簡単に吹っ飛んだなと思えば、そんなところで遊んでいたのですか、アムール」
ロナウェルは自分が遊ばれているのだと思い、頭に血が上った。実際の所はヘルガ同様、ディーゴのスキル発動のタイミングでロナウェルの拳がアムールにミラクルヒットしただけなのだが。
「もう許しません。消し炭になって後悔しなさい」【Aボム】
ロナウェルは手のひらを上にあげる。その手には極大の火炎弾が練り上げられていたのだった。アムールは冷や汗を流す。この技が放たれれば自分だけではなく、多数の者が被害者となる。不意を突かれれば致命傷にもなりかねない攻撃だった。
「全く、やだやだ。これだから真面目な子は…」【グラビティーホール】
アムールは魔法を発動させる。その瞬間だった。ロナウェルは地面に這いつくばったのだった。そしてそれは隣にいたアラルも同様の話。周りを見ればラスパー、リセル、その他の面々も地面に這いつくばっていたのだった。
「そこまでだ。もう戦いは終了」
そう言ったのは先ほどまでアラルと戦っていたヘルガだった。
「はい、ルーナも…ってかお前が何をしていたのかは知らんが、お前も終了だ」
「えー…」
ルーナは嫌そうな顔をしながらフォーティーの首につけていた首輪をはずしていたのだった。
「戦いは中断。とりあえず話をしよう。アムールが来てから訳が分からなくなった。現在自分たちが何をしているのかを聞くことから始めようか」
アムールが技を解除し、ヘルガは皆を座らせたのだった。
「なんだよ、ヘルガ。もう少しで相手を殺せたのに。止めんじゃねぇよ」
リセルはヘルガに怒鳴り散らすのだった。
「そうだな。リセルは正しいことをやっていた。だが、すまんな。そんな中ふざけてる奴らがいたんだ、当たるならそいつらに当たってくれ」
「うーー」
ヘルガの言葉にリセルはしょうがないと諦めるのだった。そして最初にヘルガはルーナを見る。
「まずだ、ルーナ、お前は何をしていたんだ?」
「私か。私はな、無茶苦茶にしてくれと頼まれてな、そうしてた」
ヘルガはそっと目を閉じどう言おうか悩んだ。だが、その答えを見つけることはできなかった。
「そうか、お前はそれでいい。では次」
ルーナの問題はこの際なかったことにしたのだった。
「シェイマスとケイティ、お前らは何をしていたんだ」
「私が茶を飲んでいたら、こいつが茶を飲むなと言ったから相手になっただけだ」
「いやいや、茶を飲むなとか一言も言ってねぇし!お前が――」「あー分かった分かった。まぁ、些細ないざこざだな、もう争うな」
「あぁ」
内容にヘルガはため息をつくのだった。
「ディーゴ、お前は何をしていた?」
「我はそこの茶髪の男と戦っていたのだが、シェイマスに邪魔されてそれでシェイマスを先に倒そうとしただけだ」
「いやいや、邪魔してねーし。元はと言えばリセルが絶対零度なんて技を使うからそうなっ――」「あーあー、分かった分かった。いろいろあったからってことで不問とする」
ヘルガも何でアラルに吹き飛ばされるはめになったのかを理解したのだった。
「そしてアムール。何でロナウェルなんかと戦ってたんだ」
「それはパーティーだから楽しみ――」「もういいや…」
ヘルガは皆の言い分を聞き、その場にヘタレ込んでしまった。
「おい、オリジナル。とりあえず訳を聞こうではないか。内容によってはお前との一騎打ちで決着をつけることになるがな」
「そう、それは面白いのです。決着をつけてから内容を話すとするのです」
と、そこに結界を解かれたサランたちが合流する。
「ラスパー、もういいんだよ。これ以上荒されると目的が分からなくなるんだよ」
サランの必死の妨害にロナウェルも加勢するのであった。
「そう、この子の言う通り。目的は既に私も知っています。アムールが来なければこんないかれた状態になることはなかったんです」
「えっ!それはひどい。僕のせいじゃないよ、ロナウェルだって乗り気だったじゃないか」
「それは、アムールがもう古魔区へ帰らないとか、嫁がどうとか言うからでしょ」
「あーあー、話がこじれるからやめろ。とりあえずはオリジナルたちの目的からだ」
ヘルガがまた始まりそうになった醜い争いを収め、オリジナルに問いただす。
「私はお前と戦ってからだと――」「あーあー、俺が代わりに話す」
頑としてブレないラスパーに呆れたアラルが話を交代する。
「俺たちは強くなるための修行をしているんだ。そして、レベル5万から上がりにくくなったんだ。その訳を知りたくて調査のために呼び出したんだ」
「そういうことか。知ってはいるが、簡単に教えるのも味気ないな。で、アムールは何をしにきたんだ?」
「ん?僕?僕は自分の嫁の紹介と、後はヘルガたちを古魔区へと帰還させるよう覇王様から仰せつかったからね、その役割を果たしに来たんだよ」
「ん、そうか。――ん?嫁?お前は何を言っているんだ!」
ヘルガは驚き、目を見開いた状態でアムールを見る。
「そうです、僕の嫁のヨルムです。よろしくお願いします」
「アムールと結婚したヨルムです、よろしくお願いします」
「は?え?な?――そんなの覇王様が許される訳がないだろ!!」
そこに事情を知るロナウェルがカットインする。
「アムールはもう古魔区へは戻らないそうですよ。覇王族から除名されたらしいです。覇王様にそう告げられたらしいです」
「は?――そんなことがあり得るのか?」
「あり得るんだよ。それで覇王様に最後の仕事としてヘルガたちを帰還させる仕事を賜ったんだ。それが覇王族としての最後の仕事。この空間は丁度いいし、今この場でやろうと思うんだけど」
「そうか…、分かった。元気でやれよ、アムール。そして、ヨルムさんと言ったか、こいつは間抜けだ、抜けすぎてるからちゃんと手を引いてあげてくれ」
「はい」
「抜けすぎだなんて、ひどい」
「じゃあ、もういいや。混血、お前にももったいぶらずに教えといてやる、とは言ってももうお前たちには必要ないと思うがな。常魔区には寺院があるだろ、そこで覚醒の実を売ってるからそれを飲めば終わりだ。3段階から3.5段階へと進化できる。そういうことだ」
その言葉にアラルはギロっとラスパーを睨むのだった。
「それは…、しょうがないのです。私は新悪魔じゃないから知らないのです。私たちにとってこの実は短時間能力を向上させるだけの美味しい実ってだけなのです」
その言葉にアラルたちはガックリとしたのだった。そしてそんなこんなでティーナによる食事が振舞われ、お別れ会が行われたのだった。
「なんだこれ、うめぇぞ」
「そうなのです。オリジナルの私も生まれて初めてなのです」
今まで殺し合いをしていたリセルとラスパーも仲睦まじく食事を頬張っていたのだった。
「残念ですね、こんなに美味しい物を知ったというのにもう帰らなくてはならないというのは…」
ロナウェルが残念そうに食事を頬張る。
「だから私が怒るのも分かるだろ?」
ケイティの言葉にシェイマスはガックリと肩を落とすのだった。
「あぁ、そうだな。こりゃ、俺でも邪魔されたら怒るわ」
そうしてラスパーのスキルが切れるギリギリまでお別れ会は行われたのだった。アムールの描いた陣に入ったヘルガたちはそのまま古魔区へと帰還して行ったのだった。
「アラルと言ったか、古魔区へ来た際は覇王の塔へも立ち寄れ。そして料理とやらを皆にも振舞ってくれ。デービルマジックだったか、見つけといてやる。困ったことがあれば頼るがいい」
「あっ、闇王の塔にも…」「魔王の塔にも…」とリクエストが多かったのだが、皆は笑顔で帰還して行ったのだった。
(料理…、恐るべし最終兵器だな…。)
アラルはティーナの修行が無駄ではなかったのかもと、少しこの呆れた世界に親しみを沸かせるのであった。
「じゃあ、僕たちも行くよ。仲間が待ってるしね。混血は面白い奴らばかりだね、あのケルトとかいう男もしかり」
ケルトという言葉に反応するアラル。
「ケルトと知り合いなのか!?」
「あぁ、そうだよ。ケルトは僕の恩人だ。君も知り合いなのかい?」
「あぁ、友人だ」
「そうなんだ。友人っていいよね。じゃあ、早く出会えるといいね」
アムールはヘルガたちから大量の金を貰っていたのだった。「古魔区では金なんていらねぇから」とヘルガが言っていたのだが、自分たちにも分けて欲しかった。
「ああ」
そうしてアムールたちは去っていったのだった。ヘルガたちが言っていた。ラスパーが脅したのはヘルガたちではない。脅された人物は他にいてそいつに今回アラルたちの抹殺の依頼をされたのだとか。ローゼンが少しは捕えられていた時の記憶で割りだせるとは言っていたのだが、面倒くさいが山積みでどっと疲れるアラルであった。
・
「ベルジット、どうやらシャルタンが全滅したらしいぞ」
「そうですか。それは危険極まりない、相手方にはオリジナルがいるんです。手出しすればこちらにも損害がでるでしょう」
「では、どうするんだ?」
「この件を知る身内を全て消しなさい。シャルタンの件は知らぬ存ぜぬで通します。一応カルモに仕える組織なのです、仲間を餌に使ったと知られればバグダルからどんなペナルティーを与えられるか分かりませんからね」
「分かった、早急に対処する」




