13章 影なる者達
次の日、アラルたちはラスパーに連れられるがままにカルモの町を歩く。どうやら廃屋のような場所だ。人気もなくガランとした感じだった。その廃屋内には数人の気配がある。
「どうやら相手は7人のようなのです。レベルも1万程度なので楽勝でお仕事完了なのです」
そんなラスパーの話を聞きながら何の警戒もなく廃屋へと歩を進める。そこには拘束されたローゼンもいたのだった。ラスパーが先頭に立ち相手となる人物に話しかける。
「1人じゃない。抵抗の意志があるのです?」
ラスパーの問いに白色で長髪の男が答える。
「お前たちが今回の排除対象ということだな。オリジナルもいたとは…、さぞ敵なしだったのだろうな」
男は笑いながら剣の柄を握る。そしてその仲間もそれぞれが戦闘態勢に入る。
「私は手を出さないので安心するのです」
そう言ってラスパーはアラルたちの後ろに下がるのだった。
「7対5だが、いいのか?」
白髪の男の問いにラスパーは何も答えない。1万程度、恐らくは2人で相手しても勝てるだろうと踏んでいるのだった。
「フォーティーと俺で2人づつ相手する。後は1対1だ」
アラルの指示により皆は気を引き締めるのだった。先に動いたのは相手方だった。それに合わせるようにアラルたちも動き出す。レベル差があるにも関わらず戦局は拮抗していた。それが何故なのか、それはラスパーにも分からない。5万相手に1万が2人。それがアラルの戦闘風景だったのだ。だからこそ時間の問題だろうと高を括っていたのだが――。
次第にサランが押されだし、アラルとフォーティーも苦悶の表情を浮かべだしていた。対して相手方はと言えば、まだまだ余力を残している、そんな様相であった。
可笑しいと先に動いたのはラスパーであった。できればアラルたちを鍛えるために手を出したくなかったのだが、しょうがないと割り切る。
【ディールーム】ラスパーは自身のスキルを発動させる。これは自身と任意の人物たちを異空間へと転送するスキルだった。このスキルの特性として全ての干渉を無視できるというものがある。つまるところ、ラスパーはこの空間内では本来の力を発揮できるということであった。
「しょうがないのです。目的は情報を食うことなのでさっさと殺してしまうのです」
言葉と同時にラスパーが全ての力を解放した。レベル72万の殺気がアラルたちに重くのしかかる。アラルの指示により皆は即座に戦闘をやめ、後方へと退避する。
「ケイティ、何が起きている?」
短髪の男が顔面に血管の浮き出ているケイティに尋ねる。敵方はいきなり現れたレベル72万の化け物に驚愕しているようであった。焦っている皆と違いケイティは口元を緩ませるのだった。
「シェイマス、すごいぞ。この空間内では常魔区の理が一切無視される。そしてそのことはここにいる者以外には感知されない」
ケイティの言葉に短髪の男シェイマスは驚きの表情を浮かべるとともにそれは次第に満面の笑みへと変わっていったのだった。
「本気でやっても構わないということなのか?」
そう答えたのはピンク色の皮膚をした女性、ルーナだった。
「ああ、アフサンの時のイラつく戦争のうっぷん晴らしが思う存分できるってことだ」
「そうなのか。じゃあ、あのオリジナルはわっちにくれ」
ケイティの言葉に続いたのは青色の皮膚をした女性、リセルだった。
「俺も戦う。独り占めは許さん」
そう答えたのは黒い鎧をきた男、ディーゴ。
「よせ、このオリジナルはリセルに任せろ。戦いなら別にここじゃなくても古魔区へ帰ればできるだろ」
そう言葉を発したのはこのメンバーでのリーダー格である白色の長髪の男、ヘルガだった。
「ではあのオリジナルが死んだ後に、その後ろの奴らを皆殺しにさせろ」
「あぁ、我慢できないようだからな…それでいい」
ディーゴの言葉に呆れながら了解の意を示すヘルガ。
「古魔区?お前たちはいったい…、何者なのです?」
一抹の不安を覚えたラスパーであったのだが、その時には既に遅かったのだった。突然リセルの力が莫大に膨れ上がったのだった。
「キャッキャッ。そんなことどうでもいいだろ」
そう言ってリセルがラスパーに突進する。力は互角…、いや、格段にリセルの方が上であった。何故か次第にラスパーから焦りの色が消えていくのだった。
「そうなのです。久々ですが本気で戦えるのは面白いのです」
ラスパーも、また我を忘れるかのごとくリセルとの戦闘を開始したのだった。
怪獣大戦争とでもいうべき目の前の光景。この世の者とは思えない暴力の応酬が目の前で繰り広げられていた。あっけにとられる一同であったのだが、ふとアラルの元に念話のような声が流れ始める。
『一人じゃ戦いの結末は見えているのです。これを飲んでアラルたちも覚醒するのです』
声の主はラスパーであった。そしてアラルの付近には謎の赤い実が複数置かれていた。覚醒?覚醒って何だ?これもラスパーの筋書きなのか?
だが、見ているアラルたちからしてもこのままではラスパーが負けると分かっていた。選択肢はない。実を飲むという1択しか生きる可能性は残されていなかった。
『あと、1対2でも確実に負けるのです。そこで寝ているローゼンを起こし、仲間に引き込むのです。そうすれば全員が1対1となるのです』
そう言ってラスパーはアラルとローゼンを念話でつないだのだった。
お、おい。ちょっと…。だが、アラルの返答はラスパーには届かなかった。どうやら一方通行の念話だったらしい。アラルはラスパーの言を皆に伝え、実を全員で飲むのだった。その途端苦悶の表情を浮かべ発狂しだす面々。アラルはまだ飲んでいないので、その皆の変貌ぶりに驚愕していた。だが、悠長にしている暇はない。アラルは意を決してローゼンに話しかけるのだった。
『おい、ローゼン。アラルだ、お前の追っているアラルだ。少し話がある、頼むから聞いてくれ』
目の前にいるローゼンは依然として気を失っている状態だ。だが、アラルの頭に声が響いたのだった。
『お前を殺し、私は部下の仇をとる。話すことなどない』
そう言って一蹴される。
『そうだな。それがお前の立場であることは分かる。だが、今は状況がまずいんだ。このままだと仇討ちの前に全滅だ、お前もろともな。だから、今だけは共闘して欲しいんだ』
『共闘?何をふざけたことを。全滅か、それは願ったり叶ったりだ。お前たちが死ぬのであれば、それは私の本望だ』
ローゼンの言葉にアラルは一つの疑問が浮かぶのだった。
『どうしてそこまでするんだ?お前の部下、ソランは死んでないだろ。お前が死をかけてまでやることじゃないだろ』
『な、何をぬけぬけと!ソランを殺しておいて、何が殺してないだ!ふざけるな!』
そこでようやくアラルのもやもやしていた感情はスッキリしたのだった。
『俺は殺してない。断言できる、そしてそれをこの戦いが終わったら証明しにいってもいい。証明できなければ俺は抵抗しない、好きに殺すがいい。だから、今だけは信じてくれ。生きて、お前の手で仇をとれ!』
アラルはラスパーを見つめ、合図を送る。それと同時にラスパーは転移を発動させる。向こう側で拘束されていたローゼンがこちらへと転送されたのだった。アラルは肩を揺すり、ローゼンを起こす。
「約束だ、今回だけはお前に手を貸してやる」
目覚めたローゼンはそうアラルに告げたのだった。
「あぁ、ありがとよ」
そう言うと、アラルはローゼンの口に赤い実を突っ込み、口を押えたのだった。もがき暴れるローゼンだったが、実を呑み込んだ途端、皆と同じく発狂しだしたのだった。
実に嫌である。この上なく嫌な状況である。できればそっと物陰で事の顛末を見ているだけという立場に立ちたい。飲んだ途端に発狂するほどの苦しみを味わう実。全てを知っていてその上でこの実を飲み込むということの恐ろしさ。アラルの体からは嫌な汗が流れだし、止まらない。
この実だけが生き残る術…。本当にそうなのかがとても疑わしい。だが、そんなこと考えても今更な話である。既に仲間は皆、実を飲んでいるのだった。自分ひとり逃げる訳にもいかない――というか、逃げる場所なんてどこにもない異空間にいるのであった。
覚悟を決める。大きく息を吸い込み目を瞑り、アラルは一思いにその実を飲み込んだのだった。その瞬間、思考が吹っ飛んだのだった。自分が爆発したかのように体内が、燃えるように熱い。脳が正常に機能していないのか、視界もゼロである。恐らくは先ほどの皆と同じ状態に陥っているのだろう。その実はアラルの体をひたすらに焼き続ける。
「おい、あれじゃ、俺の相手がいなくなるだろ」
ディーゴは現在起きている状況に文句を言っている。オリジナルの仲間たちは皆、何かを飲み、集団自殺を図っているようであった。
「まぁ、しょうがないだろ。殺したところで何の手ごたえもなかったんだ。それこそアフサンの二の舞でしかなかったんだから、戦いは帰るまでお預けだ」
シェイマスは笑いながらそう、ディーゴに諭していたのだった。
「でも、戦えないところで戦うってところに醍醐味があったんだけどな」
ルーナは笑いながらリセルの戦いを観戦している。
「それなら3神と戦ったんだから、そこで満足したはずだろ」
「違うんだよねー。そこがヘルガが堅物だって言われてるとこなんだって。3神なんてそもそも勝てる相手じゃない訳じゃん。勝てるか分からない戦いだからこそ面白いんじゃないの」
そうこう言いつつもしばらくの時が経つ。
「リセル、もういいだろ。終わらせろ」
ヘルガの言葉にリセルも了承したのか次第にラスパーを追い詰めていく。
【アイスストーン】リセルは笑いながら技を繰り出す。この技は上空で氷の塊を生成し地上へと降り注がせる技であった。
「1人寂しく死ぬのは嫌だろ、皆で一緒に死ね」
リセルが上に掲げていた手を下に振り下ろすしぐさを見せた途端だった。上空で生成されていた氷塊が次々と地上へ降り注いだのだった。ラスパーには回避できない。転移で逃れるという手もあるのだが、後ろにアラルたちを残した状態で自分だけ逃げるという選択肢は絶対に自分のプライドが許さない。相手は先ほどから戦っていて分かる、霊属性の弱点である氷属性だ。霊属性の攻撃は半減され、効果技は一切が無効化されていたのだった。だからこそ、ラスパーは上空から降り注ぐ氷塊を単純かつ力任せに叩き割るという方法しか取れないでいた。叩き割りながらもラスパーは氷属性のダメージを受け続けるのだった。
氷塊の降り注ぐ中、何やら雑音に混じった不思議な音を耳にする。『や、やめろー』、『お前騙したな!』、『何で?』、『地獄からの生還お疲れ様です、お茶、飲みます?』、『本当に疲れました。死ぬかと思いましたよ。じゃあ、いただきます』、『私はお菓子も欲しいんだよ』等々。鮮明ではないものの声のような何かだということが分かる程度だった。と、ラスパーは後方からの飛来物を感知する。それは地面と平行にこちらへと飛んでくる。ラスパーはそれを華麗に避け、リセルがそれを受け止めるのだった。
「あっ、すみません」
その飛来物はリセルに丁寧に謝罪すると、地面に降り立ち発狂した。
「こっちの話も聞かずにいきなり蹴り飛ばすんじゃねーよ。今は内輪で争ってる場合じゃないって言っただろうが!」
その叫びに後方から猛烈なスピードで何やらこちらへと接近してくる。
「信じるも信じないもあるか!いきなりあんなことするなぞ、お前は私を安心させてそのまま殺す気だったんだろうが!」
ラスパーの真横で今、アラルとローゼンがぶつかっていたのだった。
その光景を見て1人の男が立ち上がる。ヘルガだった。
「覚醒の実で全員覚醒しやがったってか、面白い。全員分の相手が揃ったってことだな」
だが、そんなシリアスを決め込むヘルガを通り過ぎ、アラルはルーナの後ろに隠れるのだった。
「マジあいつやばい。全く人の話を聞こうとしないんだって。お姉さん、助けて」
敵であるにも関わらずそのような態度をとるアラルに呆れ笑いしかできないルーナ。だが、ルーナは一歩前に出ると、アラルの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「分かった、坊屋。お姉さんがあの聞かん坊を撃退してやろう」
そう言うと、ルーナは闘気を纏い始める。
「助かった。じゃあ、お礼に俺はあの白髪野郎と戦ってやるわ」
フッ、白髪野郎か…。ルーナは笑いながら目の前にいるローゼンに向かい歩を進めるのだった。そして、その隣にいた白髪野郎こと、ヘルガはアラルの言葉を受け、プルプルと震えていたのだった。白髪野郎だなんて生まれてこの方言われたことがない。敬われた経験しかなく、バカにされるなぞ以ての外だった。
「おい、小僧。少しばかり覚醒したからと言って、あまり調子に乗るなよ」
ヘルガは剣を抜きアラルに向ける。
「いやいや、人生なんて罵倒されてナンボでしょ」
アラルはヘルガに突進するが、ヘルガの振り抜いた剣の風圧に体ごと飛ばされるのであった。「やばいな、こいつ。怒りで我を忘れてるよ」そうしてアラルと怒りが限界突破したヘルガとの戦いもここに始まったのだった。
「へ?」
既に何やら戦闘が始まっているという異常事態の中に不用意に飛び込んだゼクス。彼はアラルとローゼンの喧嘩を止めようと来ただけだったのだが。
「シェイマス、次は我の番だろ。もう我慢の限界だ、暴れさせろ」
シェイマスにそう確認をとるディーゴだったが、「いや…確認とるなら俺じゃなくて参謀のロナウェルに言えっての」その言葉にディーゴはロナウェルに視線を送る。
「いいですよ。どの道ここでは何をしようとどこにも影響はでないのですから。好きに暴れて下さい」
その言葉にディーゴは一直線にゼクスに向かって突進したのだった。
「は?…は!?何?…何で?」
ゼクスはいきなり突進してきたディーゴと強制的に戦うはめになったのだった。
「ねぇ、フォーティー。ずっと顔が動いてないけど、首でも痛めたの?」
ティーナはフォーティーの用意してくれたお茶をすすりながら何かを凝視しているフォーティーに問いかける。
「僕も、戦うべき相手を見つけました」
そう言うと飲んでいるお茶を置き、フォーティーはおもむろに立ち上がったのだった。そして、一直線にローゼンの元へと向かったのだった。
「ローゼンさん、私はあなたの仇として償いたい。だから、この戦い、代わってもらってもよろしいですか?」
フォーティーの言葉に口元を緩ませるルーナ。そしてルーナに押され気味だった完全に息の上がっているローゼン。そこへサランが合流し、ローゼンの手をひっぱり、今まで自分たちが寛いでいた場所まで連れ帰るのだった。
「待て!それはまずいだろ。1対1なら私が奴の相手で決まりなはずだ」
「いいから。ここはフォーティーに任せるんだよ」
そう言ってサランはローゼンを座らせるのだった。そしてティーナがローゼンにお茶を提供するのだった。
「恐らくあの女性はこの中で一番強いかもしれません」
「では、何故あの男は代わったんだ?仲間でもない私をかばう理由などないだろ」
「かばっている訳ではないんだよ。そういう男なんだよ」
「そうですね、いつからあんな変態になってしまったのやら…」
そう言ってサランとティーナは悲しい表情をするのだった。
「どういうことなんだ?私には何がなんだか全く分からないんだが」
そんなローゼンの叫びに二人はため息を吐くと、静かな声のトーンで呟いたのだった。
「「ドMだから…」」
その言葉にローゼンは何も応えることができなかった。自己解決させ、用意されたお茶をすすることが自分にできる唯一の行動だったのだった。
「ほう。中々じゃないか。私の攻撃に表情を変えないだなんて」
現在フォーティーはルーナに猛烈な連打を食らっている。
「そんなもんですか。どうか僕を満足させるよう努力して下さい」
そんなフォーティーの言葉にルーナは更に力を込めるのだった。
「なぁ、ケイティ。お前は戦わないのか?」
シェイマスは横に座るケイティにそう尋ねる。「俺は別にいい。戦わないといけない状況でないなら、必要ないだろ」ケイティはそう言いながらも戦場をスタスタと歩いていく。
「俺にもお茶を貰えないか?」
ケイティは寛いでいるティーナにそう告げる。とんでもない言動に唖然としたティーナだったが、ケイティを座らせると、そのままお茶を提供する。そして、「じゃあ、皆が戦ってる間、時間もあるので、少し料理でも振舞いましょう」そう言って、ティーナは異空間から道具一式を取り出し、料理を始めたのだった。
「は!?何やってんだ、ケイティの奴…」
シェイマスは驚きのあまりフリーズする。目の前でお茶をすすり、敵さんと仲良く戦いを観戦しているのだった。
「ありえねぇだろ。もしかすると数秒後には戦いになるかもしれないんだぞ」
と、シェイマスはロナウェルに訴えかけようとしたのだが、そこにロナウェルの姿はなかった。ケイティ同様、ロナウェルもまた敵陣地で楽しくお茶をすすっているのだった。
「転移しやがったってか!あの野郎。クソが!」
どう転がろうと彼らとは敵同士。それを和気あいあいと。それに奴らを殺すよう命令も受けているのだ。仲良しごっこなぞしている場合ではないと怒りに震えるシェイマス。彼はそのまま和気あいあいとしている場所へと駆け寄る。
「おい、楽しそうだな。折角だ、俺が3人共相手してやるからかかってこい!」
シェイマスの怒号。だが、立ち上がろうとするローゼンをロナウェルが止める。
「嫉妬は良くない。仲良くしたいのなら素直にそう言うべきだ」
シェイマスの怒号に対して口を開いたのは敵ではなく、味方のケイティだった。
「仲良く…だと。お前は現状を分かって言ってるのか!」
「あぁ」そう言ってケイティは立ち上がる。「動きたくはなかったのだが、どうやら俺も戦う番が来たようだ」そう言ってケイティはシェイマスを睨みつける。
「ほどほどにな」
そんなロナウェルの忠告を受け、またもや「あぁ」と返事するのであった。
「そうかよ、まぁいいだろう。お前とは同じ組織なんだ、戦う機会なんて今を逃せばもう二度とないかもしれないんだ。死んでも恨むんじゃねぇぞ」
そう言って怒りを前面に押し出すシェイマス。ケイティは手のひらを上にして手を動かし、来い、というジェスチャーをしたのであった。
【結】【光の壁】ロナウェルは自身の周辺に魔法、物理障壁を張る。
「これで何が起きようとも安全です。安心して料理とやらを作ってください。私もすごく興味をそそられていますので」
そう言って、ロナウェルは笑顔でお茶をすするのだった。
「何やら可笑しな状況に陥っているようなのです」
「んなこと、どうでもいいだろ。んで、お前にはここからの逆転の手はあんのかよ」
「逆転の手?」
「そうだ。状況は最悪、属性不利にこの疲労。何を粘っているのか。そんなに死ぬのが嫌なのか?」
リセルの言葉にラスパーは笑いだす。
「何が可笑しい!?」
「いやいや。違うのです。あなたは気づいていなかったのですね」
ラスパーは今までアラルたちを気にかけ戦っていた。その懸念材料が今全て消えたのだった。
「ここからが本番なのです」




