表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
already dark, however still blue ‐血鎖絶ち斬れ不退の純青‐  作者: 浮城燈往
エピソード3 魔女の鳥籠
51/64

8‐2 人形は踊る

 機能性だけを重視した、飾り気のない廊下。向こうまでずっと金属材の並ぶ様は、近未来へと続く栄光のようにも見える。されど、天井近くの壁の両脇に設置された電灯の中には、途切れがちなものも混じり、ここが置き去りにされた場所であることを印象づけた。

 その廊下を、一匹の虫が這っている。

 そう形容したくなるような光景だった。収監されているときには、身体を鎧う拘束着の上からベルトで締めつけられ、ところどころ節のできた様はまさに芋虫のそれであった。

 同じ服でもいまは、“籠の中の小鳥”によってベルトは切断されて可動域は増えているものの、小柄な彼女の丈に合っていない布地が広がり、朽葉を引き摺る蓑虫を想起させる。周囲を旋回する僕達の動きが、さながら獲物が力尽きる瞬間を狙う鳥のようで、余計そう思わせた。

 それでも足取りだけは、蝶の翅が生えているかのように快い。

 虫のような女はやがて、一つの部屋に辿り着いた。この塔のアンテナを管理する調整部屋の一つだ。辺りを見回し、一番重要と思われる装置に当たりをつける。

「……33~38、プロモーション」

 付き従う機械鳥の内の幾つかが、ふわり、とその身を躍らせた。

 折れ曲がった脚を空中で広げると、小さなプロペラを回して宙を漂い、装置に着地する。

 マイコプラズマのような形状に成った機械は、細長い手足で器用に装置に取りつくと、表面の金属板を止めているボルトを回し始めた。すぐにカラン、と音がして部品が外れる。さらに内部に詰まっていた機械類を掻き出すと、回して外して、粉々にしていく。

 壊しているのではない。いまこの塔の設備を傷つけることはできない。故に、分解している。部品一つひとつは無傷のまま、無力化させていく。いまはまだ、内部の精密機器が幾つか分解されているに過ぎない。だが、ドローンのペースを見るに、いずれ大事な柱やパイプに取り掛かるだろう。

 この破壊工作ですら彼女の意志ではない。コンピューターがプログラムから外れたことをできないように。

 サクリファイスは、クイーンを犠牲にキングを呼び起こすためのもの。同時に、メリサの機能を起こすもの。

 先ほど、僅かに監視の眼がなくなった間に、小里川志緒の仕組んだ、些細な抵抗。

 彼の……彼と彼女の計画を、横から掠め取った化け物への意趣返し。

 化け物の野望を、最も大事な息子(パーツ)もろとも無に帰すための仕込み。

 メリサはそのための、部品に過ぎない。

 けして志緒は、メリサを掛け替えの利く消耗品のようには扱ってはいない。彼の命令がないと彼女は動けないように、彼女がいないと、彼の世界は羽ばたかない。彼の開発したあらゆるしかけは、メリサが嵌ることで完成する。……丹精込めて製作したインテリアの中央に、座らせるイミテーションの人形のように。

 仕事ぶりを見守った女は部屋を後にし、さらに別の管理室に入ると同様のドローンを飛ばした。

 拘束服に包まれた姿は芋虫のよう、されど足取りと志は蝶のように軽やかに。

 ――ただ、蟻のように遂行する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ