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第2話 転校生は巫女さん

※ここから三人称視点となります。


榎木原えのきばら市立高校―



 ここは榎木原市にある高校の一つ。

 進学校ではないが、レベルも低くも無い。普通の高校である。




「はぁ~い、みんな静かに! 今日は転校生……じゃなかったね。最近この町へ引っ越してきて何処の高校に通うか選ぶために来てくれた見学生が来ています。

 みんな注目っ!」



 ここ、2年4組の教室にて行われた朝のホームルームで、一人の見学生が来たと担任の教師から紹介された。

 皆、見学生という聞きなれない単語に興味津々であり、普通は転校する前にそんなことするのかとだれもが顔を見合わせ不思議がる。

 そして、その生徒たちの中には【室戸 叶】も居た。




ガラッ。



 と、扉を開けて入ってくる一人の少女。




「「「おぉぉ」」」



 男子生徒は思わず声を漏らす。

 整えられた黒いストレートロング。

 優し気なアーモンド形の目。

 顔立ちも良く、十中八九美少女と言える女学生がこの学校の制服とは違うブレザー姿で入ってきたのだ。

 その少女は担任に誘導されて教壇まで上がり、視線を集める中生徒達に顔を向ける。


「(あ、あれ???)」


 その少女を見た叶は驚きを隠せない。

 変なところで目立ちたくない彼女は、必死に声を上げるのを抑えた。

 そして、見学生と不思議な名称で紹介された少女は、ついに声を出した。




「お世話になります【榊 琴音】です。

 現在市内の高校を回って通う高校を探しています。

 ご迷惑をおかけするかもしれませんが、今日一日よろしくお願いしますね♪」



 そういって丁寧な口調で自己紹介をした後、頭を下げた。



「「「……」」」


 男子生徒は虜になってしまったのだろうか。

 ほのかに赤い顔で琴音を見つめたままだ。

 女子生徒達も尖った雰囲気を男子生徒には見せたが、琴音には見せず、温かく迎えようとしている様子だった。




「???」



 一方、わけがわからないといった様子だったのは叶である。

 確かに学校で会おうとは約束していたが、まさか学生? になって会おうとするとは思いもしなかった。

 てっきりお昼休みの間等に学校の敷地外でこっそり会うと思っていたのだ。

 こんなに早く学校へ体験入学をする手続きをすることは可能なのだろうかという疑問が浮かぶ。



「あ、よろしくお願いしますね?」



「へぁ!? あ、よ、よろしくお願いします……」



 いつの間にか琴音が空いている左隣の席に来て座ろうとしていた。

 叶の席は一番後ろの窓側の席から一つ右の席である。


「丁度いい。隣の席に居るのは室戸という名前だ。榊さんは彼女に休み時間案内をしてもらってくれ」



「えっ!?」



「はぁい♪ わかりました!」



 いつの間にか担任に琴音の世話係を任されてしまった叶。

 しかし、調査の依頼をしていることもあり、断れるはずも無く、



「わかり……ました」



 と、頷くことしかできなかった。







 1時間目が終了後。



「ねぇねぇ、琴音ちゃんってどこから来たの?」


「おしゃれな制服~」


「この学校の制服ってセーラー服だからブレザーで登校って斬新よねぇ」



 琴音の周囲には人だかりができていた。



「おい。見ろよ……」


「あぁ、このクラスには居ないタイプだ」


「怖い感じというより、優し気な様子がミステリアスな雰囲気をだしているよな……」


 琴音を囲む女子生徒達を遠巻きに見つめそんな話をする男子生徒。

 クラスの話題は全て琴音に対してのもののみとなる。



「おい。転校生」



 と、ここで冷たい感じの厳しい声が琴音に浴びせられた。

 琴音を囲む女子生徒達は一瞬で笑顔から恐怖の色へと変え、声の主の方を見た。

 声の主は、【柄野えの 清香きよか】叶と同じクラスに通うギャル系の少女。

 その様子からクラスをまとめ上げているような存在だと理解できる。


 皆、清香が恐ろしいのか、体は向けるが視線は合わせようとしない。

 男子生徒達も、


「うわぁ」


「柄野に目をつけられたか……」


「こりゃ、この学校に転校してくることはないだろうな」


 と、これからの琴音の未来を憂い、残念がる。

 一方琴音はそんな声をかけてきた生徒。同じクラスの女子生徒に返事をした。



「一応私まだここに転校してきてないけど、なにかな?」



 琴音も怯むことなく答えたものだから、清香の方は面白く感じない。


 明らかに敵対心を抱きながら、



「ちょっと面貸しな」


 などと言うではないか。



「はい! いいですよ♪」



 それに対しやはりなんとも感じていないのか、琴音はかわいく返事をして立ち上がる。


 周囲の女子生徒達は「(マジか)」と思いつつも、「(あぁ、そうか。この学校の生徒じゃないから知らないのも無理もない)」と、瞬時に理解した。


 問題はそれを教えている暇が無い事だ。

 清香はこのクラスだけではなく学年のボスである。そして、将来的には学年だけではなく学生の頂点に立つだろうと目されていた。

 誰もが清香の不興は買いたくないだろう。



「(まずい!)」



 言われるがまま清香についていく琴音。

 叶は急いで後を追いかけるのだった。











 人気のない空き教室。

 そこで琴音は清香とその取り巻きに囲まれていた。



「おい、お前調子に乗ってんじゃねぇぞ」


「そうだそうだ!」


「男子に色目を使いやがって!」


 などと転校してもいない人間に問い詰めるように迫る清香達。

 異常な光景である。

 問い詰められている本人である琴音は涼しい顔であったが、そこに、



「清香ちゃん!」



 と、慌てた様子で教室に入ってくる叶。




「叶!?」



 清香やその取り巻き達は叶の様子に驚く。



「ど、どうしたんだよぉ叶」



 悪いことをしているのが見つかった。

 そんな風にキョドりだす清香達。



「……?」



 その様子に琴音は首をかしげる。

 明らかに清香は叶の前でバレるような誘い方をしていた。

 バレているのは当たり前である。

 何にこの怯えようは不可解だ。



「どうしてこんなことを……?」



 今度は叶から清香達に問い詰める。



「い、いや。これはだな? 転校してくるなら私たちがこいつにいろいろ教えてやろうかと……」


「ほ、ほら。叶に手間をかけさせるわけにはいかないだろ?」


「そうだよ! 私たちは叶の為に――――」



 よっぽど叶に嫌われたくないのか、清香達は必死に言い訳をしようとしていた。



「私、そんな事頼んでない……」



 しかし叶は清香達を睨みつけながらそう返した。



「(……おや?)」


 琴音はそんなやり取りを見ながら、清香の顔を見て異変に気付く。



「そ、そんな。いや、それは……」


 顔を真っ赤にしたかと思えば真っ青になり、そこから紫に変化し次に白くなる。

 明らかに様子がおかしい。


 これほどカラフルな顔色を見たのは琴音が生きてきた中ではなかなか無い。

 そんな清香の様子をしり目に叶は、



「と、とにかく、私は琴音さんをいじめる様な真似は頼んでない!」



 と、きつく言い放った。

 それがとどめになったのだろうか、



「う、うぅぅん……」



 清香は目を回して倒れてしまった。


「「き、清香!?」」


「清香ちゃん!?」


 清香の取り巻き達。そして叶は驚いて清香に駆け寄り、必死に清香の名前を呼び続ける。

 そんな中で、



「(なるほど……。これが叶ちゃんが言っていた現象かぁ)」



 と、琴音は一人納得していたのであった。






 清香が倒れた後、速やかに彼女は保健室へと運ばれた。

 最初は貧血が疑われたが、学校で。しかも叶のクラスを中心に謎の失神事件が多発しているため、清香が2年4組の生徒だとわかると早々に病院へと送られていった。



「うぅぅ……」


「清香……どうして」



 当然清香は死んだわけではないが、清香の取り巻き達の精神は参ってしまっている。



「大丈夫。大丈夫よ……」


 その中で、叶は取り巻きの二人を必死に慰めて居た。


「(……)」


 その光景をジッと見つめる琴音。


「(不自然だなぁ)」


 琴音の目には同級生に起きた不幸を受け止めきれない少女達。という光景には見えなかった。


 何かがおかしいと。


「ほら、お前たち。すぐに教室に戻るんだ」


 騒ぎを聞きつけた生活指導の教師が琴音達に早く教室へと戻るように促す。

 ショックを受けていた少女たちであったが、教師に言われて渋々戻るしかなかった。

琴音:「私の活躍が他にも見たいという方は、前作【18禁ゲームの世界に入りました。助けてください】を見て下さい」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:次話の投稿は明日の朝7時となります。そうだ、琴音様。どうやって学校に潜入したんです? コネとかですか?


琴音:「そんなの簡単よ。催眠を掛けて洗脳したの」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:ひぇっ……。

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