第11話 幸せな一日
―叶視点―
「あれ……?」
私は教室に倒れていた。
なぜそうなったのかわからない。
もしかして貧血を起こしたのだろうか……。
「うぅぅ……ん?」
なんと、教室にはもう一人倒れていた生徒が居たようだ。
彼は頭を押さえて立ち上がり、周囲を見渡した後私に気づいて驚いていた。
「あ、あれ!? 室戸さん!?」
と、声を掛けてくる。
「えっ? ……あれ? もしかして……。加藤君?」
私は思い出した。
彼は1年だった頃一緒のクラスで隣の席だった男子生徒だ。
なかなかとクラスに馴染めなかった私に話しかけてきてくれた事はよく覚えていた。
加藤君も私と同様おとなしい人だけど、とても親切で、頼りがいがあった気がする。
なぜか記憶が曖昧だけど、私の為にいろいろとしてくれた……守ってくれた気もする。
優しくて素敵な人。そんな印象だ。
うわぁ。本当になんでだろう。加藤君を見ると緊張する……。
まるで……私は恋をしているみたいだ……。
今まで加藤君にそんな気持ちなんてなかったのに!? それどころか、恋自体した事が無かった。
お、落ち着こう私っ。
えっと、でも、なんで加藤君が私のクラスにいるのだろうか?
「なんで室戸さんが5組の教室に??」
「へ?」
先に加藤君に言われて私は教室を見渡す。
ここは……私が通う2年4組の教室ではないようだ。
どうやら私の方が別の教室へ入ってきてしまったらしい。
「えっと、ごめんなさい! きっとぼーっとしてたのね。
す、すぐに出ていくから!」
私は恥ずかしさから教室を飛び出そうとした。
だけど、
「ちょっと待って!!」
加藤君が私を呼び止めた。
「?」
なんだろうか。
ちょっと不安になりながら、私は加藤君の方を向き直る。
「その……なんて言っていいかわからないけど、僕……いや、俺は君の事がずっと心配だった気がするんだ……。
なんでかはわからないけど、俺はもしかしたら……うぅん。きっとこれは勘違いなんかじゃない!」
加藤君は何かの決心? を固めたようだ
そして、私の事を心配していたという。
あれかな? 私があまりにも人見知りだったからかな?
友達も殆どいないから、心配されるかもしれないけど……。
「えっと、突然ごめん! だけど、俺にとってこれ以上ないチャンスなんだ。
俺の中の何かが、今言わないと後悔するって言ってる。
だからはっきり言うよ、……お、俺と――――」
その日、私はなぜこの教室で気絶をしていたかを忘れるほど、幸せな――――運命の日だと感じられる出来事が起きた。
それから――――――――。
私は加藤君と帰り道を一緒に歩いていた。
まだ外は明るく、若干空に浮かぶ雲がオレンジ色になっている位だ。
「あっ」
私は学校への通り道にある神社が目に入る。
そこでいいことを思いついた私は、
「ねぇ、加藤君。あの神社に寄っていってもいいかな……?」
「うん。もちろんだよ」
彼は嫌な顔一つもせず、私の提案を飲んでくれた。
そして、二人で階段を上り、鳥居をくぐって参道を歩く。
「ん……?」
なんだろう。前もここに来たことが……。あぁ、そうだ。今朝良いことがありますようにってお祈りをしたばかりだった。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
そして二人で社の前に立つ。
「ここはね、縁結びの神様が居る所なの」
「えっ!? そうなの? じゃぁ来て正解だね」
加藤君は驚いたようだった。
そして嬉しそうに笑う。
「うん。それでね? ここの神様は、夫婦の神様を祀っているらしいんだけど、ずっと仲良しで、子供も沢山いるんだって! 安産祈願の神様になればいいのにって言われているみたいだよ。
それに、悪い妖怪からこの土地を守ってくれたりする神様でもあるんだって」
「へ、へぇ。うん。そうか……。そうだよね。子供……。結婚……。いつかは考えなくちゃいけないよね……」
加藤君は恥ずかしそうだ。
なんでだろう……あっ!
「い、いや。私、別に子供が沢山欲しいとかそういうんじゃ……いや、違うくないけど、うぅん……」
二人して頭から湯気を出してしまう。
「う、うん。せ、せっかくだからお参りしていこうか」
「そ、そそそうだね……」
私達はあたふたしながらも小銭をお賽銭箱に入れてお願いをする。
願い事は……もちろん決まっている。
そして、ほぼ同時にお願いを終えた私達は帰ることにした。
「でも、ここの神社の事詳しいんだね?
夫婦神ですごく仲がいいとか、妖怪からこの地を守っているとか。
誰かから聞いたの?」
と、気を取り直した加藤君が質問をしてきた。
「うん。恋愛成就の関係はおばあちゃんから聞いたけど……。あれ? その他の詳しい事は誰に聞いたんだっけ……?」
最近誰かから説明を受けた気がするが、それが全く思い出せない。
いったい誰だったのだろうか。
「へー。おばあちゃんからなんだ。
やっぱりお年寄りの知識って豊富だよね。
さて、それじゃあここからどっちに行けばいいんだい?」
「えっ? あ、うん。もうここからはかなり近いから大丈夫。ほんの数十メートルほどだから」
「そうなんだ。わかった。じゃぁ、俺も自分の家に帰るよ」
鳥居をくぐってからそんな会話を私はする。
本当はずっと一緒に居たいけど、もう日が暮れているから、彼が帰る時間があまり遅くなってはいけないから。
「ありがとうね。わざわざ送ってもらって……」
と、私は礼を言う。
「ははっ大丈夫だよ。実は俺、ここから家がかなり近いんだ。
高校に入学した時にこっちに引っ越してきてね。まさか室戸さんの家が近いとは思わなかったよ」
「えっ!? そうなんだ!」
私はちょっとうれしくなる。
「それに、ようやく念願叶って彼女になってくれた室戸さんを危険から守りたかったんだ。
俺は頼りないかもしれないけど、世の中何があるかわからないからね」
「うぅぅ……。あ、ありがとう」
"彼女"という言葉で私は体が熱くなる。
きっと顔が真っ赤なんだろうなぁ。
「そうだよね。世の中何があるかわからないもんね」
「うん。何故だかわからないけど、怖い事が沢山ある気がするんだ……」
「私もそう思う……。何故だか分からないけどね?」
その後、家が近いという事もあり、私は結局家まで送ってもらった。
今日の朝、多くの人達が心地よい気持ちで幸せな一日を過ごすことができる日だと思ったけど、私はその幸せを体験できた一人だと思います。




