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低迷する王国

「………へぇ、お前さんのその顔、なんだ、女にしては随分修羅場をくぐったみてぇじゃねぇか。」

「………まぁね。」


ナーノはふと休憩として立ち入った酒場で店主に話しかけられる。


「………それに比べて連れのあんちゃんはなんだ?なよなよした感じのするなぁ、お前とは大違いだ。」

「………。」

「お前なら、もっといい男捕まえられそうだがなぁ、顔も腕もお金でもだ、一体全体なんであんな男にこだわる?」


………。




「………心配だから、かな。」




「………心配ねぇ、あったなそんな話、魔女が旅の戦士のことが気がかりで一緒に冒険する話だ。」

「あぁ………神話の………て、私は魔女じゃないし、私は剣士、魔法使いはセーヤのほう。」

「そうかい………でも、変わんねぇんじゃないかな、立場なんか、立場でしかねぇんだからよ。」

「………以外に頭のいいこと言うんじゃない。」

「そういやぁ、女神様にも好きな人がいたらしいなぁ、以外にあんなぼんくらだったのかもわからんがな!!ガハハハハ………。」

「………やっぱり撤回するわ。」


これだから………何でもかんでもそういうのに繋げないと気がすまないのかしら?




「………ナーノ、ナーノ、どうすりゃいい!!どうすりゃいい!!?」

「どうでもいい。」

「いやいやいや!!なんだよこれ、共和国からなんで呼び出しなんかされるんだ!?それも、今日だぞ!!今日中!!」


俺は大慌てで支度すると、わけもわからないままナーノと一緒に議会の城門に向かう。


「………俺なんか悪いことしてないよな、うん、して無い………してないな………。」

「あ〜あ、もう!!慌てすぎ慌てすぎ!!なんでそんなに慌ててるのよ、やましいことはしてないんでしょう!?」

「………。」

「な〜んで黙るのよ!!?」


俺は城門で兵士達にジロジロ見られているのに気が付き、手紙を渡すと兵士たちは去っていく、そして、やがて鎧ではなくナポレオンが来てそうな軍服を着た男達がこちらに向かってくる。


「………ようこそ起こしくださいました、さぁ、どうかこちらに。」




「………私を、雇いたい?」

「雇いたい………単純な冒険者としての契約でも構いませんし、共和国軍として入っていただければいますぐ大佐待遇で向かい入れる用意もできております、セーヤ伯爵。」

「………。」


やべぇ、やべえよ、バレてる。


まぁ考えてみたら当たり前か、冒険者ギルドにも爵位を書く欄があったし、俺を冒険者ギルドのルートで探せばそりゃあわかっちまうか。


「知っての通り、我が共和国はいま退魔帝国とかつてない緊張状態にあります、共和国と退魔帝国はその成り立ちゆえ決して相容れぬものでありましたが、いまはいつ衝突してもおかしくない………。」

「退魔帝国の魔法使いはとてつもなく強大だ、我々はエルフの高度な魔法技術を保有しているなら単純な魔法ならともかくとして………あの竜をかんたんに手懐ける畜竜魔法技術が不足している、質の差は避けられない、それを、我々は兵士の技量で埋めたい。」

「は、なるほど、そういうことでございましたかハイ。」


俺は声が震えないように気をつけながらそれに答える。


「………頼めませんか?たしかに王国を裏切るというのはいい気はしませんでしょう、しかし、あなたの要望次第ではあなたの部隊も引き入れます、領地も、あなたの言い値で出しましょう!!」

「………い、言い値………言い値と言っても限度があるでしょう?」

「………オドロアには、アレクセイ公爵という大貴族がいるそうですね?」

「あっ、もういいです………。」


………。


「………いや、あの、その、今回は、お断りします。」

「な、なんでですか!?なにか不備でも!」

「いや………その………私を、ここまで出世させたのは、オドロア王家です、えっと………彼らには、御恩があるので、こんなかんたんには、裏切れないというか………その………。」


彼らはしばらく押し黙ると、やっとのことで口を開いた。


「分かりました………お引き取りください。」




「………あっ、まってください。」

「………!?!?」

「伝えようと思っていたことを忘れておりました、近々闘技場で大会があるそうですよ、どうです、出場してみませんか?」










オドロア王国では、バーンとベルペスの対立が深刻になりつつあった。


一つの王国に二人の王子、それだけでそれなりに不安材料になり得るが、今まで彼らの仲はとても良いものであったためにその心配は毛ほども登らなかった。


だが、あの貴族連合の暗殺………そして、近年囁かれる退魔帝国とベルペス王との内通疑惑、困窮した貴族と新たな勢力となりつつある平民会議員の対立、オドロア王国の混乱は日を追うごとに深刻になっていく。


ベルペス王の支持基盤は平民会議員である、1市民の彼らに政治的権限を授けたのは他ならぬ彼であったし、それにベルペス王は積極的に平民会を支援していた。


バーンを支持していたのは貴族たちである、直轄領の代官など、彼らには十分生きていけるだけの職が存在していたが、彼らは自分たちが管理する領土に対してなんの権限も持てない、それはあくまで王家の所有物だからだ。


少なくない量の不満が貯まるのは至極当然で、だが彼らは力を失い貴族連合時代の力をなくしていた、その力をバーンに求めたのである。




「………貴族たちと平民たちの対立………それに、無理な国家運営のせいで起こるトラブル………兄さんは一体何をしているんだ!?」


バーンとベルペスの対立はなにも単純な貴族対平民というわけではない。


ベルペス王の直轄地拡大政策によってオドロア王家の管理能力はパンクしている。


いくら代官の登用や間接統治的な政策、平民会の協力を持っても無理があったのだ、それだけの人間の人件費、管理維持費は国庫の金をすり減らし、王家のみの力で王国全体を防御しなければならないために必要な軍事費も増大の一途をたどっている。


「………。」

『兄さん!!こんな無益なことはやめるべきだ!たしかに貴族たちは俺だって憎い、だがそのような感情のために国一つ動かすのはどう考えても狂ってる!』

『私は将来的なことを考えてことを進めているだけだ、わからないか?貴族たちに頼り切った今までのような政治では我々王家の立場などないのだよ、奴らを生かしておけばまた将来的な禍根になりうる、そんな芽は潰さねばならんのだ。』




「………くそっ、畜生!!なんだってこんなことに!?」

「マックスさん!!もう街の再開発計画の許可願いを出してから3日も立ってるんですけどまだですか!?」

「マックスさ〜ん!クサノ商会との会合まであと一時間ですよ大丈夫ですか!!?」


パンクしていたのは、なにもオドロア王家だけの話ではない、とつぜん20万人の領民を抱え込むことになったセーヤ伯爵代行、マックスもパンクしていた。


「くそっ………こんなこと、本当だったら部下に任せたいけど、これだけのことを任せられるようになってるほど経験のあるやつが不足しすぎている………!!!!」

「あの………マックスさん、これどうすればいいんですかね?」

「あぁ、そんなことくらい他に聞いたらどうだ!?」

「いやいや、そうしたんですけどだれも教えてくれなくて………。」

「だったら!!………だったら、もういい、そこで突っ立ってるか自分で判断しろ!」

「ええっ………!?」


マックスは仕事をやっとおわすと天井を見てため息をつく。


「………セーヤさん、ほんと………ほんと、何してくれてるんですか………。」




「………大変だったの?」

「あぁ、そうなんだよまったく!!」


マックスは疲れ切った表情でその日は子どもたちを預ける保育所に訪れていた、あの時からだいぶ立派な建物に作り変わったそこは、今も相変わらずリリーとベニーの二人で切り盛りしていた。


「………はぁぁ、こりゃあないよ、お金は山ほどもらってるけどさぁ、使う暇ねぇんだもんなぁ………。」

「ほら、夕飯食べたの?これカレーの食べ残しなんだけど?」

「えぇ………?………あまいな、これ。」

「子供が食べられるように作ってあるからそりゃあね?」

「………レンタインとアッカーは?」

「どっちも新米の訓練で忙しいみたい、軍隊を拡張する?んだっけ?」

「………はぁ、かんたんに言ってくれるよどいつもこいつも!!兵士に分ける給料は?食料は?水は宿舎は生活は!?それを管理するのがどれだけ手間なのか、誰もわからないんだから困るよ………無理な拡張も考えものだよ。」


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