プロローグ 4
「………ステータスは………。」
だいたい、10万くらいか………ずいぶん待ったもんだな。
「………スキルも取るだけとっておこう。」
俺は全属性の魔法をすべて上級より上、特級まで取り使い勝手の良い土魔法に関してはさらに追加で【べック式金属化法】というスキルをとった。
【ベック式金属化法】
ある冒険者が編み出した魔力で生み出した土を金属並みの硬さにする方法、魔力で作った土を金属並みの硬さにできる、これを応用して様々なことができるが本人はそれを周りに話していない秘伝の魔法。
「………これは、おお、すごい、まじ凄すぎるだろ………!!」
俺は魔法で土を盛り上げたあと、硬化させる、あっというまにそれは硬くなった。
「………よし、出来たか。」
俺はそれを変形させ一本の槍を作る。
「さあ、やってやる!!」
「グルォォォォォォォォォ!!!!!」
ドラゴンの咆哮は凄まじい、正直腰を抜かしそうだ、だが今の俺には10万のステータスと特級魔法がある、これで有象無象をぶん殴る!!
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
やつの腕と俺の突き出した槍が中央で衝突する、凄まじい音を立て、槍がぶち折れた。
「くそっ!?」
「グルォォォォォォォォォ!!!」
やつは腕を振り下ろした次の瞬間、俺はなんとか土を操り防御壁を築く、金属化されたそれはなんなくやつの腕を防ぎ切る。
「グワ?」
「おりゃあああああああ!!!」
やつのそばで土が盛り上がり、それは拳の形を作りだす。
「これがぁ、拳の力だぁぁぁぁ!!」
俺はやつをそれでぶん殴った、大きくジリジリと後退するドラゴン。
「まだまだぁ!!!」
俺は金属化された土でやつをがんじがらめにして、ボコボコにぶん殴る。
「グルワァァァァァ!!!!」
またたく間にドラゴンの鱗が剥がれ、肉片や血が飛び散り、角や歯が折れる。
「………はぁ、はぁ………。」
俺はドラゴンにゆっくりと近づいていく、ずいぶんとボロボロになったもんだな………。
「………グォォォォォォ!!!!!」
「!!!?」
ドラゴンは最後の悪あがきとばかりに封じ込めをぶち破り、口から火を吐いてきた。
火、そう火だ。
「特級火魔法!!!!」
俺はその炎を操ろうとした、………だが、それ非常に難しいものだった、なんていうか、魔力がめちゃくちゃ濃いのだ、一度に操作できる魔力には限界がある、俺はジリジリと押されていった。
「くっ…………!!!」
俺は必死に念じながらチラチラとやつの足元をみる、ボコボコと土が盛り上がっているがやつはそれに気が付かない。
くそっ、だめだ、炎を受け止めながら土魔法なんて、だが………!!
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
俺は炎に対する防御をやめ、神速と言える勢いで地面が盛り上がっていく。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺が変形させたのは、鋭利な刃物、それも巨大だ、それは、見事にドラゴンの羽の片方を切り落とした。
くそ、まだ、まだ生きてるのか、文字通りの化物というわけか………。
俺は立ち上がり、魔法の力で槍を作り出す、これをやつの頭にぶっ刺して殺せばいい。
「………よう、長かったが、もう終わりだ!」
俺は槍を握って持ち上げて………その瞬間、俺はどうしようもない不快感に襲われた、不快感、不快だ、どうしようもなくこの状況下が不快、不快、不快、気にいらない。
「………?なんだ、なんだろう、気に入らない、全く持って気に入らない。」
………俺は、このドラゴンを殺すことを躊躇っているのか?いままでさんざん魔物を殺してきたじゃないか、それが一体何だって言うんだ。
「………そうか。」
なんてことはない、今の俺の立ち位置は一体どこだ?いきなり他人の屋敷に押し入り、迎撃してきた家主をボコボコにして、挙げ句今殺そうとしている、これじゃ、俺は魔王かなんかじゃないか。
なにより、そう何よりだ。
『お前みたいな無能にはこれがお似合いだろ?これがよ。』
………いまでも“あの日の事”は忘れられない、そういって嫌味ったらしく首を切るマネをするやつの顔面が。
そうだ………俺はやつと同じ立場いることが気に入らなかったのか、一方的な暴力で相手をねじ伏せ悦に浸る今の自分の姿に。
それに気がついたとき俺は、もうげんなりしていてこいつを殺す気はなかった、こいつを見逃してやってもいいだろうと、そう思っていたのだった。