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スズキ・フォン・セーヤ 3

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」


周りがどよめきたつのも無理はない、なにせ莫大な量の農作物が徴収され途方に暮れていた直後、それと同じだけの量を村長が買い付けてきたのだから。


「よし、マックス、これをそれぞれが徴収されたぶんだけ配ってくれ。」

「はい!ばっちり記録は残ってるので間違えようがない、しっかり働きます!!」

「よそから買ってきた農作物というのがあれだが………今日は収穫祭といこう!!なぁみんな!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


この一年の間、彼らは村の開拓をやってきた、それは決して楽なものではない、朝から晩まで重労働、そして地べたで寝る毎日、ろくな娯楽もない中必死になってやってきた。


そして、村ではついに収穫のときが訪れた、食うに困るとまでは行かずとも、腹いっぱいの飯にありつけることの滅多にないこの世界において、今日だけはそれが許される。


このことを一番喜んでいるのは元奴隷の連中だった、彼らはどれほど働こうと奴隷である以上一切の給料をいままで受け取れなかった、ほとんどただ働きの彼らだったが、今は違う、働けば働くだけ幸せになれる、働けば働くだけ明日の飯には困らない。


「俺達は、今日やっと報われたぞぉぉ!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」




「………買い付けた作物で大々的に収穫祭ですか、貴族連中の税金がどんどん上がっていくたびに規模は小さくなり、ついには消えてしまった風景だと思っていだが?」

「どうします?」

「行こう、資本が我々を待っている。」




「………私達も混ぜてはもらえませんか?」


そういって、突如暗闇から出てくる男、その服は上等なもので、皆が貴族かと一瞬身構える。


「安心してください、私は商人です。」


そう男が言うと、まだみんなはぎこちなかったが、ひとまず落ち着いたようだ。


「………あの、なんでしょうか?」

「あなたはこの村の管理をしているマックス様でいらっしゃいますか、至急村長にお取次願いたい。」

「はぁ………しかし、私はこれでも村長から全権を譲られている身なのですが、私とお話するのでは不十分でしょうか?」

「………あなたは全権を委任されている、だが村長ではない。」

「………それほどの?」

「はい、おそらくはね。」




「………あの、俺はそういうこと分からないからマックスに全部任せてるんですけど………!!?!?」

「………まさか、まさかとは思いますがお聞かせ願いたい、あなたは………日本人ですか?」

「………やっぱり。」


やっぱりいるんだな、異世界人は。


男の格好はこの世界の人間、なかでも貴族の格好そのままだが顔は日本人だ。


「………私は草野幸太と申します、あなたは。」

「俺は、鈴木聖也だ。」

「聖也さんですか、あぁ!やはり日本人は私だけではなかった!!ずっと同郷の人を探していたんです………まぁ、それはともかく商談に入りましょう。」

「切り替え早いな………。」


俺はこの世界で商人をやっているという日本人、幸太と話し始める。


「私達クサノ商会は様々なものを取り扱っております、食品から武器、あぁ、人もしっかり取り揃えていますよ。」

「人…………!」

「奴隷ではありません、斡旋ですよ、我々が仲介役となり建設、工業などに携わる会社を紹介できます。」

「この中世世界にしては、ずいぶんと日本みたいなことしてるんですね………。」


俺はそういうと幸太は笑い。


「えぇ、まだここら一帯では商会というとただ物を売るだけというレベルに留まっています、ですが、私はかつて日本で高度で複雑な商売の世界を見てきましたから。」

「………元々その手の仕事をしていたのですか?」

「まぁ、そんなところですね………。」


俺はその後幸太から具体的な説明を受けた、最終的に建設系の人間をあるだけ頼むよ、と言うと本当にいいんですか?と不思議そうな顔をして言ってくるので構わん、やれっ!と返すと分かりましたと真顔で返される。


「いまの契約はこれだけですが、今後も何かあるようなら私が受け持ちましょう、これからもどうかよろしくお願いしますね。」




あぁ………なんか嫌な予感がするからお金今のうちに貯めておこうか。




ここは、オドロア王国中央王都。


数百年の歳月をかけて成長したこの地はいまでは無数の建物が乱立している。


そして、密集する建物を抜けて中央に向かえば、突如開けた場所に出て、自然豊かな世界が広がっていることに気がつく、それは王宮の庭園であり、その林を抜ければ荘厳な建物が見えるはずだ。




「………なんだと。」


時のオドロア国王、ベルベス6世は苦虫を噛み潰したような顔で声を絞り出す。


「はい、貴族たちは大変遺憾な事に各地で一斉に小麦の値上げを行っております、貴族達は連合して小麦を値上げさせ収入の底上げを図るつもりのようです。」

「どこまでこちらを舐めれば気が済むんだ…………!!!!」


ただでさえ法外な重税で農民が苦しんでいるというのに、その上小麦自体の値段を上げてそれを買う町人まで苦しめる?


「やむ終えん!!これ以上経済をめちゃくちゃにされては国が滅ぶ!全面対決だ、今すぐ小麦価格制限法を制定しろ、従わない貴族は徹底的に弾圧する、アレクセイ公爵も今すぐ招集しろ、あと!」


王はそこで一旦言葉を区切り、言う。


「弟………バーン大将軍も招集しろ、いいな。」

「はっ、かしこまりました。」


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