スズキ・フォン・セーヤ 1
「はいは〜い、今日は給料日だから、みんな来てね〜!」
俺はそういうとみんながぞろぞろとやってきた、テーブルには革袋が30個置いてある、中には銀貨が10枚、この世界で言えば10万Gもの金額だ。
「さぁ、これどうぞ、はいあなたもどうぞ、はいはいはいあなたもどうぞ。」
「は、はぁ………。」
「ありがとうございます………。」
う〜ん?どうしたんだ、今日は給料日なのになんでみんな顔が暗いんだ。
それについて聞いてみるとみんなは答える。
「………だって私達べつに働いてないじゃないですか。」
「働いてもいないのに給料なんてもらってもなんかその、気乗りしないというか、気持ち悪くなるんです………。」
「………お前達いい子だな、うん、俺なんてこの歳で親から不労所得(お小遣い)もらいまくってもなんとも思わなかったよ………とはいえやっぱりここは働いてもらわないとなぁ………。」
俺はそういったが、問題がある、こいつらの働き先がない、俺の頭ではこいつらに何させたらいいかわからん。
俺は考え込んでいるとマックスが横から笑いながら話しかけてくる。
「ハハハハハハハ、旦那ぁそんなことは心配いらん!俺がそんなこともあろうかとぴったりな仕事を見つけてきたんだ!!」
「………なんだ、ぴったりな仕事って。」
「これだ………!!」
俺はマックスに叩きつけられたその紙を見る。
『オドロア王国北部開拓事業始動!入植者募集中!!』
「………きたか、よし、見ろ!!これが貴様らの輝かしい新天地だ!!」
「………何もありませんが。」
「え?ここから先まだ進むんじゃないんですか。」
国の役所の人間がそう高らかに宣言すると奴隷たちは微妙な顔をする。
「そうだ、ここだ、あそこに資材が積まれているだろう、お前たちの第一の仕事はここに自分達の住宅を作ることだ、つまり土木だ。」
「えぇ………?」
「俺たちなんの知識もないんですけど………。」
「心配いらん、そんな難しいことじゃないし正規の大工も参加する、お前たちにやってもらうのは資材の運搬とか、力仕事になるはずだ。」
「さぁ、働け働け!!」
「ほいさっ!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
周りがそう驚嘆の声を漏らす、俺は大量の資材をゆうゆうとジャンプして建物の上まで運び込んだ。
「全く全く面白い野郎だなあ若いの。」
「お前みたいなやつがうちにも一人ほしいところだぜ。」
「ははは………。」
「………。」
ヒュッという風切り音とともに、近づいてきた魔物に矢が刺さる。
「………ふう、周辺警備も入植者頼みかぁ、私がいなかったら危ないところよ。」
「お〜い、アッカーに剣術指導頼むよ、あいつも力任せで戦うのは懲り懲りらしいからな。」
「は〜い、今行くから〜!」
「………もう何日もたつが、いまだに建物は完成しないなぁ。」
「当たり前でしょ、どう頑張っても完成には数カ月はかかる、ムリムリ絶対むりだから。」
「それに、俺たちも30人ポッチだからな、今はいくら人がいても困らない。」
「じゃあもっと呼び込むか。」
「そんな事はもうやってるだろ?呼び込んで俺達だけしかこなかったんだろう。」
「………………労働力、労働力の確保、う〜ん、奴隷?」
「はぁ………正気か?」
「失望したわ。」
「違う違う、ほら、奴隷開放だよ奴隷開放、開放した奴隷をうちらの開拓地に呼び込むのが一番じゃないか?脱走奴隷にも仕事のあてがないからwin-winだ。」
「そんなことしたら、さすがに足がつくわよ、開放なんて言うけど結局やってることは押し入りじゃない。」
「まぁな、冗談だよ冗談、まぁここが大きくなれば人もたくさんくるだろうさ。」
俺達の話を聞きつけた人達が、数ヶ月後には少しずつだがやってくるようになった。
「セーヤ。」
「なんだ………。」
「みてくれよこれ、ここの人口を数えてたらもう50人になってたんだ、20人も増えている、最近も一家5人くらいがいちどに入ってきたからな。」
「そうか、家族全員でこしてくることもあるのか………というか、マックスは今何をやっているんだ?」
「俺はいまこの村の管理を任されている、国の連中は最初のとき以上に干渉してくる気はないらしい、これ見ろよ。」
「………只今より、スズキセーヤ様は、この村の情勢を考えた結果………この村の村長となりました………!!?」
「ヒューヒュー!!出世したな旦那、この村は俺達の物だ、これからも頑張ろうじゃないか!」