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ある奴隷の物語 7

「………よし、これで材料は揃ったか。」


俺はそれを確認すると、早速作業に取り掛かる。




「おい、知ってるか、隣町の。」

「ああ、奴隷を鉱山で働かせてたあそこか、いまやばいらしいな、たしか奴隷の暴動が続出してるんだって?」

「あぁ、どこかの誰かが奴隷達に首輪を外せる鍵を配って回っているらしいんだ。」

「破壊工作か?」

「あそこの街は最近奴隷販売を外にまで広げようとしたらしいんだが、あそこの大きな奴隷商がこぞって外にまで手を伸ばしたら他の貧弱な奴隷商達は軒並み倒れ、奴隷販売で領主は儲かる、おかげで周りの貴族連中からはいい目で見られなかったらしい。」

「だから潰された………?」

「あぁ、そうだ、それと、首輪の鍵の件もあるが、見事領主の騎士団を撃退して逃げおおせた脱走奴隷の一団がいたらしい、そいつらが成功するなら俺たちもってそれ以来考えるようになったんじゃないか?」

「ほう………。」




暗い、異様に暗い、カーテンは締まり、厳重に光が通らないよう厚い布で窓は閉じられている。


「………一体何なの?」

「………ナーノ。」

「きゃっ!!?………なに、驚かさないでよ旦那。」

「今日は仕事はない日だよな。」


セーヤはそういうと部屋のろうそくに火を付け、テーブルに置かれているごちそうが見えるようになる。


「………今日は俺が飯を作った、食ってけよ、ナーノ。」

「「「「俺達も混ざるからなー!!」」」」


そういってワーワーキャーキャーもみくちゃになりながらマックス、アッカー、ベニー、それにリリーが出てくる。


「きょ、今日は私の誕生日じゃないわよ?」

「べつに誕生日じゃなくてもごちそうはいいだろ?さぁ、今日は飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだ!!!」




「………マックス、なんなのこれ、だれがこんなこと思いついたの?」

「セーヤさ、セーヤ。」

「はぁ………?………あぁ………。」


私はなんとなく察した、あのときのことをここでもう一回やり直したい、と言うことだろう。


「………この料理はどこから?」

「あぁ、これはベニーが作ったんだ、あいつは料理が得意だからな。」

「………。」


………期待して損した、この料理を全部あいつが作ったとなれば株もバク上がり、やだ、私惚れちゃう………なんて気持ち悪いことは言わないけど、やっぱりあいつはあいつだったか。


「さぁ、あ〜んして。」

「あ〜ん。」


私は背筋にいやな物が這い登るのを感じ振り向くと、よかった、リリーがあの時殺されかけていた子供に料理を運んであげてるところだった、実に健全で教育的な光景が繰り広げられている。


一方こっちはというとまったくよろしくない、酔いが回ったセーヤが昔飲み会の席で披露していたなどと言ってハンカチでマジックを披露していた、普通にすごいんだけどハンカチからものが飛び出すマジックでものを手から落としてしまいマックスとアッカーが爆笑、ベニーだけはくだらねぇぜって顔でそれを眺めている。


「………楽しそ〜ですねぇ。」


思えばそんな中盛り上がってないのかまさかの私、あれ、私いつの間にかどこの輪にも加われてない?


「よぉ〜し、じゃあ僕ちん今からとっておきのを披露しまぁ〜す!!」

「おおっ!」

「今度はなんだぁ!腹踊りか!!」


そうアッカーが聞くとセーヤはマジの方だといって台所に消えていく。


そして、しばらくするとなんとあのときのケーキを持ってきたではないか。


「えぇっ!!」

「おお〜!!」

「うまそ〜う!!」


「ねぇねぇ、リリーお姉ちゃん!あれ食べていいの?」

「い落ち着いたときに切り分けてくれるわよきっと。」

「わぁ〜い!」




「………あ〜あ、後始末大変………あれ………?」


私はちょっとソファのほうで休んでいたらいつの間にか寝てしまっていた、体には毛布がかけてあり、あの皿の山は嘘のように消えていた、台所の方を見るとなんと全て洗っておいてあるではないか。


「………さすがベニーね。」


私はそう納得して帰ろうとする、その時ようやく気がついた、無駄に暗いので気が付かなかった。


「………セーヤ、寝てるのね。」

「違うのよ、ナーノ。」


私は後ろからベニーに声をかけられる。


「確かに料理のすべてを作ったのはこの私、でもあのケーキ、あのケーキだけは、セーヤが作ったものなの。」

「………え………。」

「彼、酒場の親父からもらったとかいうレシピとにらめっこしてケーキづくりを練習してたの、何回も失敗して、最近やっとできるようになったそうよ。」

「………いつの間にそんな練習を、というか、何回もあのケーキを失敗って、どこにもそんな………あ………。」


私はここ最近のことを思い出す、そういえば、ここ最近セーヤは昼食を食べなくなったわね、外で毎日何を食ってるんだろうと思ってたけど、あれも………。


「失敗したケーキは少しずつ自分で消化してたらしいわ、たまに食べ切れなくなるとマックスやアッカーに内緒で差し入れしたりね、ひどい味だったらしいけど。」

「………。」


私は寝ている彼の方を向く、昔の彼は、それはもうなっさけない男だったけど、いまではまるで違う、私には彼の何かが変わったように思えていた。






















俺達の冒険は、これからだ!!

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