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帰還者の放浪記 2

「………くそっ、体が重い………。」


俺はやっとのことで塀を乗り越えるとスタッと地面に飛び降りる。


「………ふぅ………ここだっけな。」


手紙に書かれたゴミ箱はたしかにここだったはず………俺はゴミ箱を開けると、ビニール袋に丁寧に包まれた服が見つかった、建物の影で着替えた俺は一緒に袋に入っていた財布を開ける。


「………多いな、いやちょっと多くない?自分働いてたときでも財布に万札こんな何十枚も入れたことなかったわ。」


俺はちょっと中を見てニヤけそうになったがすぐに取り繕ったそのとき、着信音が聞こえたので袋の中に手を突っ込むとなんと携帯電話まで入ってるではないか。


開いてみるとメールが届いており、そこにはどこに行けばいいのかという指示が書かれてあった。


「………本当に従っていいのかな。」


だが、と俺はあの手紙に書かれていた言葉を思い出す。


『ご帰還おめでとう、転移者くん。』


という一文とともに○:○○時になになにをしろという指示がその手紙には書かれていたのだった。


「………日本の町中を歩くのも久しぶりか。」


俺はあたりを見回しながらそうつぶやく、というか日本にいるときももう3年くらい家から出てないから異世界にいるときも含めたらもう10年くらい見てない計算になるな………。


「………そうか、もうそんなに経つのか。」


思えばヤバすぎるよなぁ………関係ないけどさ、子供の頃だかなんだか外国に移住した人が何十年もそこで過ごしてると元々の言葉を喋れなくなっちゃうんだっけ、まぁ俺は大丈夫だし………いや、超今更ながらなんであそこ日本語通じるんだ?前にもこんな事を考えたときは何度かあった気がしないでもないが………。


と、そんなことを思っているうちに俺は目的の場所に到着しようとしていた、なんてことのない建物の中に入ると受付の女性がどのような要件で来られたのかと訪ねてくるので封筒を渡す。


「………かしこまりました、では、こちらへどうぞ。」


俺は言われるままに建物の中を進んでいく、夢みたいだなと俺は思った、まるで空中を歩いているかのように何もしないうちからすべてが進んでいく、何も考えなくても面白いくらい筋道を誰かさんがつけてくれて、それに従えばここまでうまくことが運んでしまった。


「………ここが、社長の執務室です。」


という言葉でようやくここがどこそこの会社だということに気がついたがまぁそんなことはおいといて俺はその扉を開けた。




「………おっと、あんたの出番はそこまでさ、さぁ、退場しな。」


次の瞬間、俺は体を貫かれ、地面に無造作に放り投げられる。


「………え………?」

直後始まる銃撃戦、発砲音、爆発音、社長の執務室の中に爆発物が多数放り投げられ、俺は顔に熱を感じながらなんとか立ち上がろうとする。


「………うそだろ………本当に………刺されたのか…………。」


俺はお腹を改めて見るが………見事に刃が突き刺さっている、苦しい、かつて経験したことの無い苦しさが俺を襲う。


「………終わりかっ!!?」

「まだだ!!やつがこの程度で死ぬもんか!!」


男たちの数はどんどん増えていく、機動隊のような服装の男たちが小さいマシンガンを構え煙たなびく部屋に少しずつ立ち入っていった。


「………!!!?」


次の瞬間、男の一人が崩れ落ち、銃撃が再び激化する。


「【聖域構築】!!」


あらゆる物質がかすかに青白い光を帯び始め、俺はなぜか体が楽になったのを感じ、次の瞬間には体から力がみなぎるあの感覚を感じた。


「………っ!!?これは!!」

「こっちだ!!ついてこい!!」


煙の中から手招きする男を見つけた俺は、まだ痛む腹からナイフを引き抜くと男の方向に走り出す。


「………あんたは!!」

「そんなものはあとだっ………【聖域構築】!」


屋上に出た男がそういうと、正方形に広がっていた青白く輝く空間が自分達が進む方向にドンドン拡大していくのが見えた。


「いいか、君の能力が使えるのはこの聖域内だけだ!!わかったか!!」

「あ、あぁ!!」


俺は男のやるように屋根の上をピョンピョンと飛んで移動していく。


先に走る男は向こう側の建物の窓を破って中に転がり込み、俺もその後に続いていく。


「………この下に行こう。」


そういった男はガラスの破片をぱっぱと手ではたき落とすと順調に下に降りていった。


「………あんたは?」

「行っただろ、まだ答えられない、そんな状況に見えるか?まだ終わったわけじゃないんだ。」

「あっ、はい。」


そういった瞬間壁の外から銃撃音が聞こえ、壁を銃弾がぶち抜いて俺達を貫く。


「ぐっ………。」


体に刺さる鉛の雨に一瞬吹き飛ばされそうになったが立ち上がり、俺は魔法で苦し紛れに反撃した。


敵は聖域の外にいて、俺の魔法は聖域から出た瞬間四散していく。


「ならこれでどうだ!!」


俺は近場の椅子を片手で持ち上げるとぶん投げた、今度は見事に男達をなぎ倒し、俺達は更に先へと進んでいく。


「………いいか、ここからは魔法もステータスの恩恵も受けられんぞ、さぁ、車の中に乗れ。」

「あぁ、わかった。」


男に言われたとおり車に乗ると、車は発進し俺達はその場をあとにした………。






「………俺がいない間にいつから日本は紛争地帯になっちゃったんだ?」

「これからなるさ、これからな。」


男はそういうとこちらの方をみやり、ニッコリと笑って名前を名乗る。


「とりあえず俺のことはクリストとよんでくれ、帰還者の君がまともな人生を送れるとは思わないほうがいいぞ、あいにくこの車は戦場への渡し船なんだ。」

「そこらへんから盗んだ軽自動車が?」

「そうだよ!!悪かったな………軽で!!」

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