帰還者の放浪記 1
『………次のニュースをお知らせします、数日前に起こった東京建造物消失事件ですが、今朝、政府はこの一連の騒動に際して国家非常事態宣言を発令しました、千人もの人が最終的に消失してしまったこの事件に警察は未だ解決の糸口を見出してはおらず………。』
「必死でやってるっつうの。」
そういうとテレビを見ていた男はなんてことの無いバラエティ番組に切り替えるがこの番組でも同じことをやっていたため結局消してしまう。
「なんで切っちゃうんですか笹崎警部。」
「なんか苛つくんだよ、あぁ、それもこれも全部捜査が進まねぇせいだ、まったく。」
「警部!こんな話するのもなんですが、報告書どうすればいいんですかね………。」
「うるせぇ、勝手にやってればいい!!」
「警部もだいぶ応えてるな………。」「普段はこんなことで怒るような人じゃないのに。」
そう周りはヒソヒソ話している中、突然扉を開けてドカドカと中には行ってきた男たちが笹崎警部に書類を差し出す。
「なんだ?」
「笹崎警部殿、始めして、我々は上層部からの命令を受けてあなたに話を持ってきたのですが。」
「事件のやつかい?」
「それと関係があるかも知れないというものです。」
「………なんだ、これは。」
笹崎警部が書類を見て困惑する、それはテレビも取り上げないような些細な行方不明事件の山だったからだ。
「………これは?」
「行方不明になっているのは、巨大なビルだけではないかも知れない、ということですよ、私達はあの事件のあとあなた方とは全く別の角度からこの事件を捜査してきました、つまりこういった行方不明事件をもう一回精査する作業です。」
「それが一体全体………おい、まさか、お前らそんな妄想みたいな」
「我々がこんな事をするきっかけは教える事はできませんが、ともかく私達は発見しました、この行方不明事件は、この消失事件と同じように消失した人物かもしれない可能性を秘めたもの、その中でも、絶対的な消失が確認されているのは、このがざっと十人ほど確認されております。」
笹崎警部は頭をしばらくかいたあと、男に向かってこの事件を表すにふさわしい完結的な言葉を述べた。
「神隠しか。」
「そういう事です。」
「………なるほどね、言いたいことはわかった、全く、神隠しと来やがったか………なるほどね………でも、そうなんだろうな、少なくとも、この事件が神隠しとしか言えないくらい不可解なのは確かだ、不可解というより、超常的か………思い出すねぇ。」
「何をです?」
「いや………行方不明事件………………まぁ待ちなよ………やっぱりアレも、か。」
「あれも?」
「これだよ、これ、この事件の担当は俺だぜ?俺がこの十年の間で唯一解決できなかった事件だよ、これこそ、これこそ神隠しとしか思えなかったよ………確か………えーと、鈴木………鈴木なんだっけ………そうだ………鈴木聖也だ、あの消失だけは神隠しとしか思えなかったよ。」
「………はぁ………これからどうすれば。」
俺は自分の服を見る、服はあのとき転移した服のままだったが、中学の頃から変わらないゴミファッションセンスの黒一色、これはこれで目立つな………。
俺は街の方を見る………随分高いビルが多いな、ここは一体どこなんだ………?
「………どうする?金もない、スマホもない、マジで何もないんだが。」
何故か靴は履いていたが………まじでどうすんだコレ。
「………あの、君は?」
「え?」
俺は後ろから突然声をかけられた、振り向くとなんと警察官が立ってるじゃないか。
「えーと、君、今から聞きたいことがあるんだけど………。」
「………なんにぃぃ!!?鈴木聖也が見つかったぁ!!?本当か!!」
「はい!!まさか自分もこんなタイミングで出てくるなんて思いませんでしたよ!!」
にわかに笹崎は世界が活気づいたように見えた、まったくなんの進展も見せないし進展しようがない事件を上層部がやれやれとしつこく迫ってきてイライラしていた笹崎はすぐに会いに向かった。
「………こちらです警部。」
笹崎はとりあえず警察署で保護された鈴木聖也をみる………。
鈴木聖也、無職、つい最近まで行方不明で両親が届け出を出していた。
彼の事件は不可解極まりないものだった、まず、彼は外に出るどころか失業以来ずっと部屋にこもりきりで、両親の懇願も一切無視していたこと、そして、彼が行方不明になるにあたってあらゆる物品を………若者にとっては命に等しいスマホすらも………持っていかなかったこと、金品すら一切持たずにこの男は蒸発した。
更に不可解なのは、家から出たルートだ、周辺の監視カメラや、両親からの事情聴取などから警察はどうやって外に出たのかを必死に探ったが、ついに分からなかった、どのカメラにも………家の玄関に設置されている防犯カメラはもちろん………窓からも外に出た痕跡はなく、笹崎はこの事件の対処のために当時頭を悩ましたものだった。
「………なに?やつは財布も金も持っていなかった?」
「はい、彼は服と靴以外ありとあらゆる持ち物を所持していませんでした。」
「………。」
そんな、そんな状況で、そんな男が何年も姿をくらませることができるのか?この現代社会で?
「………なに?鈴木が発見された?」
『そうよ、すでに例の奴らが動き始めてる、私達も早いところ確保におもむかないとやばいわよ。』
「実力行使………かな?」
『そうなるでしょうね、日本警察はこっちの味方よ、彼らには裏交渉する余地すらないわ。』
「………はぁぁ、面倒だけど仕方がない、面倒だけど、やるしかないのかな?」
「………お前、早いところ家に帰ったほうがいいんじゃないか?」
「俺に家なんかねぇからな………うん、久しぶりのご飯は最高だ。」
俺は口いっぱいに米をほおばる、とりあえず今のところ警察署のなかで保護という事になってるらしいけど、出たところでどうしようもないのでしばらくここでお世話になることになっていた。
「………そうだ、手紙がじつは来てるんだが………ほら、これやるよ。」
「あぁ………ありがとう、ババ………お母さんからかな?茶色い封筒か………うんん?」
「どうしたぁ?」
「いや………え………いや、なんでもない………。」
このときの自分は頭がおかしかったのでとりあえずセーヤが牢屋の中で臭い飯を食ってるシーンを入れましたがよくよく考えたらなんの罪も犯していないのに捕まってるのは全てがおかしすぎるので修正しておきます。
警部の名前が笹島と笹崎で混同していたので修正しました、気がついてよかった………。