揺れる大樹 6 世界を変えるもの
「………見えたわ!!」
青い空をどこまでもどこまでも高く飛んでいた俺は、やがてその青い空が無数の枝が絡まってできていることに気がつく、あおい、真っ青な世界樹の枝が光りながら世界を照らしているのだ。
「………ぐおっ!!?」
俺は無数の枝葉にそのまま突っ込んでいく、枝葉を折りながらもなんとか進んでいくと、その先には真っ黒な、宇宙のような空間が広がっていた。
「………これが。」
「これが、世界樹の先の世界、でも、まだ世界の外じゃない、私が世界樹を鎮めるには、この先、本当の意味での世界の果てに………っ!!?」
リリーは直後自分の頭上をかすめる巨大な火炎にもう少しで焼かれそうになるがなんとか回避する。
「なんだ!?」
「来たわっ!!」
リリーが指差した先には………ビルよりも、山よりも大きなとてつもなく巨大な竜がゆっくりと、だが確実にこちらに近づいているのが見えた。
「な、なんだあれ!?」
「あれを………世界竜を倒さないと、私達は先に進めない、だから、セーヤ、頼みます!!」
「きいてないぞっ…………!!!」
俺は花火のように放射状にばらまかれる火炎弾を避けるために複雑な機動で飛んで回避した。
「吹き飛べっ!!」
俺はお返しとばかり火炎のレーザーで体を焼ききってやろうとしたが、その鱗は予想以上に固く、傷一つつかない。
「くっそ!?」
その時、あの真っ暗な世界がにわかに明るくなり始めた、ドラゴンの体から発せられる光が眩しすぎてもう直視することもできなくなった。
周りを見ることすらおぼつかなくなった頃、凄まじい熱量が体を襲い、俺はその瞬間初めて自分の死を感じた。
「………なんだ………!!」
だが、その熱はある瞬間に消え去った、終わったあとに見てみれば、リリーが俺の体を防御してくれる強力な結界を張ってくれていた。
「悪いな、ありがとう………。」
と、いうが今は竜の姿になっているため当然言葉になどならない。
「………うぉぉぉぉぉぉ!!!」
はんばやけくそになった俺はそのままあの巨大な竜に突撃し、そのまま体表を引き裂くように爪を突き立てる。
「………!!!いった!!」
体表は流れ出る血で赤く染まり、竜は体をくねらせて苦痛に苦しむ。
「ここだっ!!」
俺はその傷口に向けて巨大な土の塊を杭のように成形したものを突き刺した、傷口に差し込まれたそれはつぎの瞬間とてつもない量の血で真っ赤に染まった。
だが、これがやつを怒らせたらしい、再びあの巨大な爆発を起こそうと体が発光しはじめた、俺はその爆発から逃れようと反対側に必死に逃げる。
「………ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は背中が焼け焦げるのを感じるが、またしてもリリーが結界でカバーしてくれた為に難を逃れる。
「………!?」
嘘だろ………俺は次の瞬間すぐそこに迫っていた世界竜の巨大な腕にぶん殴られ、遥か下まで落ちていく。
「………ぐっ………。」
俺はいつの間にか竜化を解除していた体をなんとか起き上がらせる、そうか、俺は世界樹の枝に引っかかりなんとかそのまま地上にボッシュートされる事態は防げたらしい。
「………リリー………リリー………!!」
俺は枝の海でもがきながらリリーを探す。
リリーは少し先のところで引っかかっていた。
「セーヤさん………!!」
「………くそっ、せっかく上げたステータスも戻ってやがる、意識を失ってたからか………!?まずいっ!!」
俺は頭上を飛んでいる世界竜を見て青ざめる、あんなやつがいま突っ込んできたら、とてもじゃないが抵抗性がない。
「………くそっ、こんな、こんなところで!!」
その時。
『………なぜ、なぜ貴様は戻ってきた。』
「………!!!こいつ、喋れるのか。」
リリーと俺は世界竜にむけて顔をあげる。
『………この世界を統べる貴様が、なぜここに戻ってきた………?主のすることを止めるというのか?』
『なぜだ………理解できない、お前が望んだことだろう、お前がした事だろう、なぜ今になって止めようとする。』
『お前は………お前はやつにもう一度会うことを望んだのではなかったのか………?』
「………これが、私の答えよ!!」
そういうとリリーの手から魔法が飛び出て、世界竜の体を貫いた。
『ハハハハハ………そうか、それが貴様の答えか、そうか、もっと大切なものができたというのか!ならばよろしい!!くるがいい!!』
俺はそれを見ているとき、頭の中で突然スキルを取得したことを告げられる。
「………なんだ?」
『一定のレベルに達したため、スキル【世界を変えるもの】が与えられました、これからも頑張ってください』
「………なんだと………まずい、そんな場合じゃない。」
俺は起き上がると再び竜の姿へと変身して、あの竜に向かって再び飛び立っていく。
「セーヤさん!?」
「そこで待っててくれ!!こいつは俺が仕留める!」
俺はやつの胴体にあいた巨大な傷跡を見つめていた、あそこだ、鱗が剥がれたどころか肉がえぐれているあそこにとびっきりの魔法をうちこめばやっと言えど無傷じゃすまない。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
だが、やつもその事に気がついたのかまるで俺を近づかせないようかのように魔法で弾幕を張ってくる、これが厄介で、あたらないように避けるくらいなら出来るがやつに全く近づけない。
「くっ………!!!」
俺は結界を張りながら無理やり突撃しようかと思ったその時、再びやつの体に巨大な光が突き刺さった。
『馬鹿なっ!!下界した貴様にまだそれほどの力がっ!!』
世界竜は身を悶え、俺はその間に一気に急接近する。
「これでどうだ!!」
その巨大な傷口にさっきよりも更に大きな土の杭をぶっ刺すと、竜は苦しみながらゆっくりと下降して行く。
『っ………死ぬがいい!!』
ちがう、落下しているわけじゃない、リリーを狙っていたのか!!
俺は急降下してリリーを腕でキャッチすると、それを掠めるかのように魔法が飛んでくる。
「ありがとうございます!」「どうせ結界で弾けるだろうと思ったけど、一応な、で、これからどうする?」
「………世界竜の、あの発光して、周囲を焼き尽くすあの魔法、あの瞬間体表を貫くことができれば、一撃で倒せるかもしれない。」
「なにっ!!」
俺は言われたとおりに動き始める、世界竜は俺に対して急接近すると、両腕を振り上げて肉弾戦を挑んでくる。
「ぐぉぉぉ…………。」
俺は片手の方をなんとか受け止めるがもう片方の腕に危うく潰されかける。
『無駄だっ!!』
「なんのぉ!!!」
俺は空中で魔法を使い巨大な土の腕を作り上げるとそのままやつの両腕と押し合いを始める、俺はその腕ごとジリジリ押し込まれていく。
「えいっ!!!」
そこへ、リリーがまたしても世界竜に向かって魔法を放ち、それはやつの胴体に大穴を開ける。
『ぐうぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
「効いてるぞ!!」
と、そろそろ俺もステータスが温まってきたところだ、そろそろここらでなんかやらないと株が上がらない、そう思った俺は急上昇を始める。
「摩擦軽減、補助動力、浮遊術、全部叩き売ってやる!!」
俺は魔法まで動員して加速するとそのままやつの傷跡に突っ込み、肉を食い破ってそのまま背中から飛び出した。
『き、貴様ぁぁぁぁぁ!!!!』
「どんなもんだよ!!」
いよいよあとのなくなってきた世界竜、やつの体は今までにないほど強い光を出す。
「………!!!その威力では、世界樹までも焼き尽くしますよ!!」
『我が主が言われたのだ、なにを持ってしても貴様を止めよとなぁぁぁぁ!!!』
「おいおい、世界樹焼けるってどんな威力だっての!!!」
俺はそう言うやいなや再び加速を開始する、リリーはやつの光が一番強まったその瞬間に魔法を使いダメージを与えた。
『まだだ!!!まだ終わっていない!!!』
やつは両腕で俺をガードしようとしたが、次の瞬間。
「ふんぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!!」
『なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!』
竜化にカオスアップの力で無再現に上がったステータスの力をフルに使い、やつを空中に力任せに放り投げた。
『馬鹿な………。』
「死ねっ!!!」
俺は自分が加速するのに使った魔法をそのまま土の杭に適応させると恐ろしいスピードでそれはやつの体を貫き、次の瞬間、世界は光に包まれた………。
………。
………。
………。
………俺は死んだのか………
『まだ生きてるよ、まだ、ね。』
………!!!!
『おめでとう、帰還者くん、君がどうやってあそこから戻ってきたのか知らないけど、まぁいいや、久しぶりに、故郷に帰ってゆっくりするといいんじゃないかな………。』
「………なんだ………。」
俺は、顔を撫でるそよ風で目を覚まし、体を起こす。
「………おじさん、何してるの?」
「なに………?」
俺はその子供の方を見やると、子供が何人か集まってゲームをしているのが見えた、そう、ゲームだ、ボードゲームならいざ知らずしっかりとした機械のほうのゲーム機である。
俺はそこで、初めて自分がどこかの………日本のどこかの公園に放り出されていたのに気がついた。