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揺れる大樹 4 〜異世界人は世界を変えるか〜

「………へっ、最初は焦ったが、こうなっちまえばあとは時間の問題ってやつか!!」


異世界から来た男はエルフからもらった短剣を軽く振り回すと、それだけで骸骨兵はすべてなぎ倒されていく。


「………おりゃあ!!」


男の手から飛び出す魔法は遠くの敵も粉砕する。


数が多すぎるあまり長期戦を強いられているが、こちらの負傷者はまだ数十名にたいし向こうはすでに10万に達しようかという具合だ。


戦いは楽勝だった………はずだったが、トラブルが起きた。


「………ぐへっ!!?」


突然男が吹き飛ばされると、ドスドスとあのケンタウロスのような骸骨が群がりながら進撃していく。


「まずいっ、戦線に穴が!!」


男は大慌てで止めようとするが間に合わない、やつらは後方に進撃していく。




「………リリーさんあぶないっ!!」


ちかくのエルフがリリーをかばったことでなんとか難を逃れたリリー、だが、敵はドンドン剣を振り回し、彼らを追い詰めていく。


「くそっ………ナーノさんは!!」

「全速力でこっちに向かっているらしいが、だめだ………間に合わねぇ………。」


そして




敵の一体の剣がリリーを捉えようとしていた。




「………!?!?」




だが、次の瞬間には敵の上半身は吹き飛び、主人を失った下半身はそのまま立ちすくんでいる。


「………リリー、さん………。」


リリーは両手をおろしたあと、腰を抜かしたかのように倒れ込み、黙って夜空を見上げていた。





「………私は、どっちが大切なんだろう………。」


その言葉は、自分が今まで戦えるのに、それを隠していたことによって犠牲がより大きくなったことへの後悔だったのか………それとも、もっと別のなにかだったのか。


いずれにせよ、このときのリリーは決心したように周囲には見えた、彼女はまっすぐ戦場の只中へと向かう、彼女ののぞみを叶えてくれる、ただ一人に会うために。




「………ぐぉぉぉぉ………。」

「ふぅぅぅぅ…………。」


スライムとドラゴンの戦いは一時的に休戦体制に入っていた、そのおかげで炎も粘液もひとまず落ち着き、一時的ではあるが平穏が訪れていた、もっとも、一時的ではあるが。


「………ふへへ………やるじゃねぇかあんた。」

「………あぁ………なぁ………俺達がこんなところで戦うより………いっしょに組んだほうが………いいんじゃないか………?」

「………へっ………ここまでやっといて………今更何を………!!?!?!?!?!?!?」


突然二人は再びある一点を見つめた、その一点に立っていたものとは、軽装の鎧を着込んで仁王立ちしていたセーヤだった。


「………あっちは大丈夫そうだったし、それに、お前らに対処できるのは俺だけみたいだしな。」

「…………っ!!!!!」

「こいつはやばいっ………おいトカゲっ!!」

「わかってるわぁ!!二人で叩き潰すぞ!」


その時、二人は直感的に悟った、それは、本能の強い魔物であるからこそ感じ取れたものだった。


「しねぇ!!」


ドラゴンが口からどころか体全体から炎を発し、その炎はセーヤを包み込んでいく。


「………なんだと。」


炎は水の障壁によって完璧に防ぎきられていた。


「だが甘いんだよっ!!!」


後ろからニュルニュルと立ち上がるのは、スライムから分離した分身体だった、ドラゴン相手の不意打ちに使うものをセーヤに対してぶつけたのだ。


分身体は体は小さいが、スライムが今まで吸い込んできたここら一体の魔物の姿になることでその弱さをカバーした、はずだった。


「………っ………!!!」


スライムの分身は地面から伸びでた土の触手になぎ払われ、あっという間に空中でバラバラになって消えていく。


「まったくすきをみせねぇ………。」「どんなパワーしてんだよ………。」


ドラゴンとスライムは一瞬臆したように見えたがすぐに立ち直り次の攻撃を仕掛けていく。


「うぉぉぉぉ!!!!」

「っ!!!」


ドラゴンとセーヤは直接敵な殴り合いになり、圧倒的なパワーが両者の間でぶつかった、セーヤは剣を引き抜いてその爪をいなしていく。


「くっ………!!」


さすがに図体がでかいだけあってまだステータスがあまり上がっていないセーヤでは不利だ。


「くそっ………!!」


スライムが後ろから攻撃を仕掛けるが、セーヤは上空に逃げることでそれをいなす。


「吹きとべぇ!!!」


その瞬間、巨大な岩を落とす魔法で攻撃した、だが、スライムがその体で衝撃を吸収していて傷はつかない!!


「なら炎っ………いや、水だ!!」


今度は巨大な水の塊を作り出す、山が陰るほどのその“海”は、スライムを洗い流し、ドラゴンを押し流していく。


「「グゥォォォォォォォォォ!!!!!!」」


俺は奴らが押し流された山の中腹の方に下っていくと、突然飛んできた弓矢に驚く。


「………お前は!!?」

「これいいなっ!!」「馬鹿野郎!!今すぐ俺の背中から降りろ!!」


ドラゴンの上に乗っているその戦士………まさか、スライムか………!?


「変身なんてできるのかよ!」

「へっ、弓矢より魔法のほうが良さそうだ!!」


そういった瞬間、ドラゴンの体を覆う炎が指向性を持ち始め、次の瞬間レーザーのように俺に向かって飛んでいく。


「ドラゴンの炎を魔法に利用した………だが!!」


俺はそれを水の壁を生み出して防御すると、蒸発した水蒸気で周囲は覆われ、一歩先も見えないほどになる。


「くっ………!!?」

「まずいぞスライム!!前が見えん!!」


ドラゴンは後ろに後退しようとしたそのとき、何かが自分の体を切り裂いたのを感じた、痛みで体をのたくらせたがまったくセーヤの姿が見えず、一方的に切り裂かれる。


「ぐおっ、ぐおぉ!!!?」


ドラゴンは霧の中からむやみやたらに逃げまどい、やがてなんとか空中に避難した。


「この空中で体制を立て直そう!!」

「おうよっ!!」




「………ステータスも上がってきたな、ケリをつけるか!!」


俺は両手を掲げると、体力も構わずに全力で魔法をぶっ放す!!


巨大な水の奔流がドラゴンとスライムに直撃した、その質量とパワーを前に、スライムの結界は砕け散り、二人は森の中にあれよあれよと落ちていく。


「………ザマァ見ろ、行動の一回一回が災害すぎるんだよ………。」


その言葉はドラゴンとスライムがなぜこんな事になったのか、そのすべてを表していると言えよう。











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