漫才「タイムマシン」
漫才9作目です。どうぞよろしくお願いいたします。
公園のベンチに座っている男性の前に、銀色の座椅子に座った男性が突如として現れた。
「うわ、なんだなんだ」
「驚かせて、すみません」
「なんでだ? なんで突然?」
「タイムマシンですよ。過去からやってきたんです」
「いつの時代から?」
「2019年からです」
「今がその2019年なんだけど」
「え? 何月何日でしょう?」
「8月2日」
「なんですと?」
「8月2日のお昼休み。君はいったい何月何日から来たんだい?」
「8月1日ですが」
「一日だけだけど、確かに未来には来ているね」
「目盛りをマックスに合わせたのに、たったの一日しか進まなかったって? がっかりだなあ」
「ひょっとして、デビュー戦?」
「ええ。出来栄えには自信があったんですけどねえ」
「成功したことに間違いはないんだから、もっと喜びなよ」
「でもたったの一日ではねえ・・・」
「同じ作業を繰り返せばいいじゃないか。何度もやれば、それだけ先の未来に行けるんだろ。未来を目指しているんなら、前向きに考えようや」
「そうですね。気を取り直して、未来へ出発することにします」
「いってらっしゃい」
「出発進行―。あれ? 電池切れだ」
「それ、電池で動くの?」
「充電式なんですが、満タンにするのに一日かかるんですよね」
「じゃあ、今日は一日この時代で過ごすわけだ」
「そうですね」
「じゃあ、俺はもう行かなきゃ。がんばってね」
「ちょっと待ってください。時間旅行の合間に出会ったんですよ。せっかくですから過去の話でもお聞かせしてさしあげましょう」
「じゃあ、頼もうかな」
「昨日の天気は、大雨でしたよ」
「知ってるよ。夜には晴に変わったんだよね」
「え? あの大雨が止んだというんですか?」
「そうだよ。知らなかったの?」
「昨日の夕方タイムマシンに乗ったものですから、夜のことは知らないんです」
「なんだい、僕の方が詳しいんじゃないか」
「そういうことになっちゃいましたね」
「それじゃあ長寝していたのとおんなじことじゃん」
「お恥ずかしい」
「なにも恥じることはないさ、まだデビュー戦なんだろ、たった一日かもしれないが、未来の世界へ行けるなんてすごいことじゃないか、今回はこれで良しとしようよ。一旦過去に戻ってタイマーを改良してきたらどうだい?」
「それが戻れないんです」
「え? なんで?」
「未来に行けば、教えてもらえるだろうと思って、過去への行き方は研究してこなかったんです」
「ありゃまあ」
「過去に行ける人、現れていませんか?」
「そうだねえ。いくら未来の世界だとは言っても、昨日の今日ではねえ」
読んでいただき、どうもありがとうございました。