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あなたを破滅させます。お父様  作者: 青葉めいこ
第一部 ジョセフ
36/113

36 嫌な事……もとい王妃教育をさっさと終わらせようとしたら、ぶっ倒れた

 正式にフランソワ王子の婚約者になったのだ(破談する気満々だけど)。


 当然、私には王子の婚約者に相応しい教育がなされる事になった。


 ただの王子の妃じゃない。未来の王太子妃であり王妃だ。


 貴族令嬢としての教育とは段違いに厳しいものになるだろうが、将来破談する気満々とはいえ婚約は承知したのだ。王妃教育から逃げるつもりはない。


 最初「王妃教育のための教師達をブルノンヴィル辺境伯領に送ろう」と、お祖父様は仰った。


 私はフランソワ王子の婚約者にはなったが、ブルノンヴィル辺境伯の後継者である事も変わりない。お祖母様が私とフランソワ王子の婚約の絶対条件として、そうしたのだ。


「フランソワ王子とこのまま結婚するにしろ、将来、婚約解消になるにしろ、ジョゼフィーヌ・ブルノンヴィルがブルノンヴィル辺境伯の後継者だ」と。


 つまり、このまま私がフランソワ王子と結婚して王妃になったとしても、ブルノンヴィル辺境伯も兼任するのだ。


 お祖母様も国王の妾妃とブルノンヴィル辺境伯を兼任している。


 こんな言い方は、お祖母様に失礼だけど、国王の愛人である妾妃よりも国王の正式な妻である王妃のほうが公務が多く、とてもブルノンヴィル辺境伯までやってられないはずだ。普通なら。


 けれど、王家の方々は「ジョゼフィーヌなら王妃も辺境伯も兼任できるだろう」と私を買い被ってくださったらしく、お祖母様の無茶とも言える条件を呑んでくれた。


 だから、フランソワ王子の婚約者になったとはいえ、私が主に生活するのは、ブルノンヴィル辺境伯領なのだ。


「せっかくのお申し出ですが、嫌な事……もとい王妃教育はさっさと終わらせたいので王家の方々がお嫌でなければ、私が王宮に滞在して一年以内に王妃教育の座学は全て終わらせてみせます」


 王妃教育を受ける期間限定とはいえ王都にあるブルノンヴィル辺境伯家の館で暮らす気はない。そこには私を嫌悪する父親(ジョセフ)がいるからだ。互いの精神安定のために離れていたほうがいいのだ。


「一年以内って……普通は十年以上かかるものだぞ。いくら君の中身が聡明な大人の女性でも無理だろう?」


 お祖父様の言っている事は尤もだが、生憎、私は普通の令嬢ではない。


 秘密結社の実行部隊員として特殊な教育を受けた記憶を持つ転生者だ。一人前の実行部隊員となるまで死んだ人間もいた()()に比べれば、王妃教育も辺境伯教育も最悪死ぬ訳ではない。十年で修める座学を一年に凝縮するくらい、どうって事ない。


「やってみなくては分からないでしょう? それに、私、辺境伯としての座学なら全て終わらせています。王妃教育も短くて済むと思いますよ」


 貴族令嬢、辺境伯としての教育なら全て済ませた。勉学やマナーの基本が前世の世界と同じだったのが大きいが教師のアンディが優秀だったお陰だ。


「……確かに、ジョセフィンは、そんな事を言っていたが」


 何やらぶつぶつ言っているお祖父様を気にせず、私は要望を口にした。


「なので、王妃教育の間は、フランソワ王子を私に近づけないでくださいね。集中したいので」


 フランソワ王子のみならず王家の人々が私と彼を仲良くさせようとしているのは知っている。


 生憎、彼らの期待に応えるつもりは毛頭ないけど。





 辺境伯としての座学を全て終わらせていたのがよかったのか、王妃教育も予想よりもずっと早い一ヶ月で終わらせた。


 辺境伯というのは、国境の領地を任された領主だ。それ故に、他の貴族以上に自国だけでなく他国についても学ばなければならない。王妃も外交をしなければならないから辺境伯として学んでいた事が大いに役に立った。


「王妃教育の座学は終了です。もうお教えする事はありません」と言った教師達のどこか化物を見るような目は気になったものの、とにかく終わった、これでようやくブルノンヴィル辺境伯領に帰れると、ほっとした途端ぶっ倒れた。


 さっさと終わらせたいために、食事は必要最低限、風呂とトイレ以外は寝る間も惜しんで勉学に励んでいたせいだ。前世の実行部隊員をしていた三十の私なら、どうって事なかったが、今の私は貴族令嬢で幼女だ。さすがに無理が祟ったらしい。


 本当は風呂の時間も削りたかったのだが今生の私は貴族令嬢。私が身だしなみも整えず体臭もする体で王妃教育など受ければ、ジョゼフィーヌ(わたし)を育てたお祖母様が悪し様に言われてしまう。今生の父親(ジョセフ)なら私のとばっちりで、どうなろうと構わないが(むしろ、ざまぁと高笑いする)。



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