プロローグ 目覚め
いつからだろうヒーローに憧れなくなったのは。子供の頃は正義というものに憧れてカッコいいと思っていたはずなのに。どこからだろう正義に対して冷たい視線を向けていたのは。自分が大人に近づくにつれ純真さを失っていったからだろうか。もうどれくらいだろう正義の色―――赤色が好きではなくなってから。
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(このシーンはヒーローをこよなく愛する弟と正義に冷めてしまった兄との対比)
日曜日の朝、九時半。午前のテレビ特有の右上にある時間表記をなんとなく眺めながら朝食を食べる。特段おいしくもない朝食を牛乳でのどに流し込み一息。テレビの前に釘付けになってさわがしくしている弟とテレビに自然と目が行く。特撮ヒーローが怪人たちを倒す度に弟も盛り上がる。しかし盛り上がる弟に対し俺は特撮番組の退屈さに耐えれずリモコンを取る。
なんか見てられないな。ボタンにかかる指にに力が入ったとたん手を叩かれる
「いて」
「見てるのになんで変えようとするんだよ!」
「はいはい」
彼たちは二人兄弟の四人家族だ。会話からわかる通り俺たちはあまり仲がよろしくない。弟と兄は年がかなり離れており弟が小学二年生、兄が高校1年生と実に8歳差の兄弟でありそのことは兄弟という溝を深めているの原因の一つである。
八歳差の弟に愚痴を吐くのは少し大人げないがかなり、生意気だ。言葉遣いも乱暴だし礼儀もなってない。子供のころの俺とは似ても似つかない。ほんとに俺の弟か?
ふと特撮ヒーローたちの必殺技が耳に入る。今の特撮ヒーローのモチーフはマフラーね…パッとしないけど原点回帰ってことか?
「それ面白いか?」
今のヒーローを考察して暇をつぶそうとしていたが退屈に耐えかねた俺は思わず声をかけた
「ふん。おまえになんかかっこよさなんてわからないよ」
「…そっか」
荒々しい口調だがその通りだった。その声掛けは面白くないと思って言う疑問だしそもそも対象年齢ではない俺が面白い面白くないということ自体論外なんだ。そう思ってちらりとテレビのほうから視線を外そうとしたとき。
いかにも主人公がつけそうな赤いマフラーを首に巻いたヒーローが悪役にめがけこう言う。
「ーーーーー」
俺は席をたった。急いで階段を駆け上がり着替えそのままの勢いで家を出た