短剣の使い道と魔法
翔と美空は生徒会長のもとへ行ったあと、再びダンジョンへ潜っていた。お昼ごはんは、翔特製『ダンジョンノ以下略』であった。かなりおいしいので、なかなか離れられないのである。ダンジョンにてまず翔が行ったことは、糸に短剣をつけることであった。
「この『黒の短剣』ってのは持ち手の後ろに穴が開いていて、なんだかクナイみたいだな。まあ、そのおかげで糸を通せるんだけどな。」
「カケ兄、短剣に糸をつけて、どうするの?」
「ん?まあ、見とけよ。」
そうして翔はモンスターに向かって走り出す。その間に、糸をつけた短剣をモンスターに向かって投げる。否、正確にはモンスターの向こう側の地面である。モンスターの頭上を通り越して、地面に突き刺さる短剣。翔の腕は投げた後、糸をピンと張れるように手元にある糸を掴んでおき、翔の頭上に持っていく。そして、
「『ギロチンカッター』」
一気に腕を振り下ろす。ピンと張られた上、スキルによって強化された糸はピアノ線なんかよりももっと鋭く、カーボンファイバーで作られたワイヤーよりも高い強度を持っている。『ギロチンカッター』を喰らわされたモンスターは音も無く頭から真っ二つに切られ、消えてゆく。
「ふ~、なんとかなったな。」
「おぉ!かっこいいよ、カケ兄!」
「ん~、だがまだいける気がするな。」
2人はさらに潜り、4層まで到着した。
「そういや、魔法スキル取ったけど、使ったことねぇな。使ってみよ。」
ちょうどモンスターが現れた。
「ちょうどいい。『アクアバレット』」
文字通りの水の弾丸が現れ、敵を貫いてゆく。
「なんか、体から抜けていくような感覚があるな。ちょっとこの感覚つかんでみるか。」
そうして、翔は走り出す。モンスターを見つけは水の弾丸を撃っていく。だが、
「おわっ!?」
5体目のモンスターを倒したところで、翔は倒れてしまった。
「な、なんだ?急に体から力が抜けて…。ま、まさかMPが尽きたっていうのか!?うっそだろ!?」
そう、翔はMPを空にしてしまった。だが、
「お?なんか体に力が戻ってくるな。MPが回復してるのか?」
MPとは結構早く回復するのである。一度尽きて、5秒ほどすると回復が始まるのである。さらに翔の総MPは現時点で90と美空と比べてかなり少ないのである。だから、完全回復までの時間が短く、体の硬直時間も短いのだ。
「魔法を糸から出せたら便利そうだよな~。やってみるか?」
魔法も戦闘術スキルと同様に自分で考えたものが使えるのである。スキルを使って強くなるのに必要なのは、そのスキルでどんなことがしたいのかという想像力である。長年、ゲーマーでオタクであった翔にはその辺がとても強いのだ。
「『水魔法』と『糸術』をあわせて、いや、『風魔法』を使ってみるか。技のベースはさっきの『ギロチンカッター』で後は…。」
数十秒後、
「よっし、できた!さっそく試しうちじゃー!」
哀れモンスター。出てきてはサンドバックに使われるという悲しきモンスター生だったのだ。
「いくぞ!『ギロチンカッター絶対真空』!」
先ほどの『ギロチンカッター』もなかなか驚異的だが、『絶対真空』となった『ギロチンカッター』も驚異的だ。『ギロチンカッター』の形にもっていき、そこに『風魔法』を併発させ、糸の周りを絶対真空にする。その状態で振り下ろすので、空気抵抗を受けずに敵を倒すことが出来るのである。
「いいねいいね!MP的にも多分問題ないだろ。そこまで体から力が抜けてる感覚しないし。よし、かえろ。結構楽しかったな。他の属性でも考えてみよ。」
翔は魔石を拾い、地上へと帰ってゆく。1人で。美空は翔が魔法に没頭しそうになったときに帰ったそうな。美空も短杖を使ってある程度試しうちしたので、満足したようだった。
「帰って、飯食ったらまた考えよう。楽しみが出来てよかった。」
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