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ちよこれいと

作者: 川端由紀夫

パキっという音共に、口の中でチョコレートが砕け散った。

甘味が口の中に溶けだして、じんわりと染み込むように広がっていく。

日々の仕事の疲れからなのか、口になじむチョコレートの甘さが、

重く積み重なった時間をゆっくりと解きほぐしてくれるように感じた。

いい時間だ、自分だけの進み方でくつろげる、この時だけは時計は自分のものだ。

思い返すだけでも肩にずしりと来る、この甘さに浸っている、この時は格別だった。

ところが、柔らかな心地に雷が落ちたかのように、ズキッと刺すような刺激が神経に突き刺さる。

一瞬の出来事だけども、それは間違いなく不快なもので、一瞬で顔をしかめながら、

延々と押し寄せるようにあふれ出てくる痛みに対抗するべく、必死に顔を歪ませる。

虫歯か、、、ふっと現実に投げ出されるように、明日の自分を想像する。

予約入れとかないとな、、、そして痛みをかき分けるように一つの結論がやってきた。

いや 待て、明日は日曜日だ、、、、



ち よ こ れ い と



ジリリリリ、、、、いつもと決まった時間に鳴り響く携帯のアラームに呼ばれて起床する。

起きて最初にするのは携帯画面で時間を確認すること。

8時30分、、、

「今日は日曜日だっていうのに、こいつはお決まりのルーティンワークをこなしてやがる」

それでも2度寝はせずに、テレビをつけて起床する。

普段のニュースとは違う番組に、今日は休日なんだとうことを再確認しながら、

洗面所へ向かい、顔を洗い、歯磨きを始める。

いつもならこのままパンをトースターにかけて、クローゼットにあるジャケットにシャツ、

それに合わせるパンツを選んで、ベランダに垂れ下がっている靴下にパンツを回収する。

でも今日は日曜日、そんなことをする必要はない、パンをトースターにかけることはするけど、

服装はそのまま、寝間着のまま。


ひらひらと、漂う埃がゆっくりと居場所を見つけた。

揺れるカーテンから刺す一筋の閃光が、そのドラマをはっきりと映し出していた。

いつもならドアに手をかけて、外に飛び出している時間。

でも今日はベッドの上にいる。ここでようやく今日という一日をどうするか考え始める。

ふと昨日の夜にやってきた歯の痛みが頭をよぎるが、今日は休診日であるから、

別に何をするか考えようとする、ランチに行こう、そういえばこの前新しくオープンしたカフェが

近所にあったな、今日はそこに出かけてみるか、、でもまた歯が痛むかもしれないから、

食べる時は気を使わないといけないんだなぁ。

今日はこうして虫歯がこっそりと、自分の行動の陰に隠れて出番をうかがっているのかと思うと

うんざりしそうになった。


テレビからはゲラゲラと笑い声が目立ち始めて、脱水を始めた洗濯機が重たいうねりを部屋中に巻き散らかして、カーテンを揺らす風が差し込む窓からは、行きかう車のエンジン音が颯爽と駆け抜けてきた。

いよいよベッドの上の居心地が悪くなってきたその時。

不意打ちのように思いもよらなかった音がその来訪を告げた。

ピンポーンと響いたのはインターホンだった。


「誰だ?エホバの証人!?

 めんどくさい、、、」


ベッドから起き上がり、極力自分の存在感を消すようにゆっくりとドアに近づく。

おそろおそろドアののぞき穴から、来訪者を確認する。

そこで見えたのは緑色の帽子と段ボールだった。


「宅配便か、っあ!実家の親が食べ物送るっていってたな」


すぐに合点がいき、めんどうが起こらないと確信するやいなや、

すぐさまドアをあけ放ち、届けられた荷物を受け取る。


つづく




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