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第5章ー7

 独本土に侵攻するのに、正面から攻撃しては、損害が大量に出る。

 戦略爆撃を行うことにより、独本土の生産力を削ぎ、それによって、独軍の抵抗力を弱めて、独本土へ侵攻するのだ。

 そういった発想から、英空軍と米陸軍航空隊の重爆撃機部隊は、独本土への戦略爆撃を開始した。

 勿論、これに対して、独空軍も戦闘機部隊でそれを迎撃するとともに、爆撃機部隊で、仏本土等に対して戦略爆撃を試みた。

 だが、独空軍には問題があった。


 この当時の日本空軍が、所詮は戦術空軍であり、戦略爆撃に使用する重爆撃機については、米国製のライセンス生産で忍んだというのは以前述べたが、独空軍も似たような問題を抱えていたのである。

 独が四発の重爆撃機を全く開発していないとまでは言わないが(He177等がある)、実際問題として双発の中爆撃機等の開発に、独は力を入れており、こういった戦略爆撃を行うのに独空軍は向いていなかったのである。


 更に、英空軍と米陸軍航空隊は協定を結び、効果的な戦略爆撃体制を構築した。

(なお、この協定は、その後、対ソ戦略爆撃においても基本的に維持されることになる。)

 米陸軍航空隊は、昼間爆撃を行い、英空軍は、夜間爆撃を行うことで、昼夜を問わずに独本土に対する空襲を行い、それによって独本土の生産力を削ごうという協定である。


(これには、少し裏事情もあったというのが通説である。

 英空軍としてはプライドもあり、自分達だけで戦略爆撃を行いたかったが、当時の英空軍の戦闘機では航続距離が不足しており、ルール工業地帯ならまだしも、独東部への戦略爆撃を行う際には、戦闘機の護衛無しで重爆撃機部隊を出撃させる必要があった。

 こうしたことから、英空軍は戦闘機の護衛が無くとも、余り問題が起きない夜間爆撃を行うことにした。


 一方、米陸軍航空隊は、既に満州等において、日本の航空隊との協同作戦を展開していた経験があったことから、日本の零式艦上戦闘機の護衛を受けて、重爆撃機部隊が戦略爆撃を行うことに躊躇いが少ないどころか、むしろ強力な護衛が得られるとして積極的だった。

 こうしたことから、零式艦上戦闘機の護衛が得られる昼間爆撃を採用したというのである。)


 そして、米英が協同して昼夜を問わずに行う戦略爆撃は、独空軍のみならず独の市民にとっても、悪夢のような効果をもたらした。

 エッセンに住んでいた独のとある市民は、戦後の思い出話の中で次のように述べている。

「昼夜を問わない爆撃の危険というのは、本当に辛くてきついものです。昼間の空襲警報が解除されたと思ったら、今度は夜間の空襲警報が発令されるというのが稀ではない。そうなると安眠ができなくなり、肉体的のみならず、精神的な疲労も溜まっていくのです」

 似たような思い出話が、当時の生きていた独市民の間から多々見受けられることから考えても、米英が行った戦略爆撃は多大な効果を挙げたと言える。


 そして、米英の重爆撃機部隊は、英仏本土の各所に展開した。

 戦略爆撃を行うというのは、多大な物資が必要になるという事でもある。

 補給の観点からすれば、英仏本土に重爆撃機部隊が展開することになるのは、ある意味で必然だった。

 そして、独空軍の戦闘機部隊はライン川近辺等独本土西部に主力が展開していた。

 これは、ある意味で当然の話で、対仏等への侵攻を行っている独地上部隊に対する支援も行わねばならないことからすれば、独空軍の戦闘機部隊の主力が、こちらに集まるのは当然だった。


 こうした状況から、日本人とポーランド人からなる零式艦上戦闘機を装備した戦闘機部隊、米陸軍航空隊の重爆撃機による独本土空襲を支援する部隊は、別の所に多くが赴くことになった。

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