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第1章ー4

「歩兵主体の主攻勢というのは、昨今の軍事状況から言うとあり得ませんな。となるとオランダ方面からの主攻勢はやはりないでしょうな」

 北白川宮大将はそう言った。


「次がベルギー方面からの攻勢です。厳密に言えば、オランダ南部を経由してベルギーへ侵攻、更に仏をめざそうという攻勢になります」

「第一次世界大戦初期に行われたのと類似の作戦ということですな。地形的にも戦車の活用は、それなりに可能と見受けられる」

 レヴィンスキー将軍と北白川宮大将は、そのようにやり取りをした。


「ですが、既にベルギーは英仏と防衛協定を締結し、英仏軍はベルギーへ進駐して、防衛陣地の構築に取り掛かっています」

「となると、独軍は英仏軍と真っ向からぶつかることになる」

「独軍が、この方面に主攻勢を向けるとは考えづらい。奇襲要素がありませんから」

 レヴィンスキー将軍は、そのように解説して見せた。


「私が一番、あり得そうだ、と睨んでいるのが、次のアルデンヌ地方からの独軍の攻勢です」

 レヴィンスキー将軍の言葉に、北白川宮大将は意外という表情を浮かべながら言った。

「しかし、アルデンヌ地方は基本的に森林地帯で、自動車や戦車の活用が困難では?」

「確かにそうですが、道路は通っています。しかも自動車や戦車を活用できるような道路が」

 レヴィンスキー将軍は指摘した。


 石原中将が、レヴィンスキー将軍の言葉に加勢した。

「確かにご指摘の通りですな。独軍にしてみれば、奇襲的効果を発揮できる」

「その通りです」

 レヴィンスキー将軍は肯定した。


「しかし、重砲部隊が通れますかね。砲兵支援が難しいのでは」

 北白川宮大将の指摘に、レヴィンスキー将軍は笑って言った。

「日本海兵隊の提督がそれを言いますか。ガリポリの戦いで林忠崇元帥が何をやりました?それも20年以上前の話ですよ」

「そういうことですか」

 北白川宮大将も、ガリポリの経験者である。

 その一言で、レヴィンスキー将軍の言わんとするところを理解した。


 ガリポリの戦いで、林忠崇元帥は、砲兵支援が得られないことを航空支援で補った。

 勿論、当時の技術的限界から、事実上は1度しかできない奇襲だった。

 だが、それによって、奇襲されたトルコ軍は大混乱に陥り、大敗してしまったのだ。

 砲兵支援が得られないなら、その代用を航空支援で得ればよい。

 そうレヴィンスキー将軍は指摘したのである。


「そう言われると、アルデンヌ地方については警戒した方が良さそうですな。その南はどうです」

 北白川宮大将は同意し、続きを促した。


「ザールからアルザス、ロレーヌに至る独仏国境線ですな。ここはそれなりにフランスも陣地等を予てから強化している。ここを正面攻撃するのは、独軍も覚悟がいるでしょう。逆に言えば、独軍もこの国境線にはそれなりの部隊を配置し、陣地等を着々と強化している。お互いに攻勢を取るには覚悟がいる場所です」

 レヴィンスキー将軍はそう言い、北白川宮大将は同意して肯いた。


「それより更に南、スイス国境線越えを独軍が行うことは、奇襲要素が高いですが、戦車を使った侵攻作戦を行うのには、地形が余りにも向いていませんな」

「その通りです」

 北白川宮大将は、その後で言葉をつなぎ、レヴィンスキー将軍はそれに同意した。


「ここでお互いの見解が一致した点を、他の英仏米等の将帥にも伝えた方が良いでしょうな」

 北白川宮大将は、レヴィンスキー将軍に提案した。

「その方が良いでしょうね」

 レヴィンスキー将軍は同意した。


 その後も、北白川宮大将とレヴィンスキー将軍は、他の幕僚を交えて、独軍の侵攻作戦について検討を積み重ねた。

 その検討結果を踏まえ、日本とポーランドは、英仏米等の軍部に意見を伝えた。

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