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第4章ー6

 相前後した1940年9月半ば頃、中国派遣軍総司令部でも会議が開かれていた。

 こちらが担当している地域、中国本土においては第二次世界大戦勃発以降、正面からの大規模な軍事衝突は起きてはいない。

 だが、共産中国による、いわゆるゲリラ活動が跋扈しており、それへの対処に中国派遣軍は追われていた。


 中国派遣軍総司令官は、岡村寧次大将が務めており、参謀長は今村均中将が務めている。

 共に、梅津美治郎陸相以下の陸軍内部からは様々な経緯から信頼を寄せられる存在であり、また、米内光政首相以下の日本政府首脳部の大部分からも、岡村と今村に任せておけば、中国本土の戦線は大丈夫だ、と安心して見られている。

 蒋介石やマッカーサーといった諸外国の政府、軍の首脳陣からも、岡村大将と今村中将は好意的な目を向けられている存在だった。


 これは2人が軍人というよりも軍政家だった、という側面が大きい。

 というよりもこの頃の中国派遣軍は、そういった存在が必要不可欠だった。

 何しろ名目上は満州国政府、蒋介石政権の統治下に、共産中国政府の統治下から戻った中国本土(この当時の中国は名目上は、中国共産党主導の中国国民党政府と、蒋介石が率いる中国国民党政府が共に中国全土を正当な領土として統治していることになっていた。だが、蒋介石はいわゆる満州と、中国内戦再開以来占領した中国沿岸部を実際には統治下においており、それ以外の地域は中国共産党主導の中国国民党政府(いわゆる共産中国)が実際には統治している、という現状だったのである。)を、実際に確保していたのは、日本の中国派遣軍という現状があったのである。


 確かに、本来から言えば、蒋介石率いる満州国軍が中国本土を確保すべきだった。

 だが、蒋介石(率いる満州国政府)は日米等に味方したことから、この当時の中国本土の民衆には漢奸として人気がさっぱり無いという現実があった。

 そして、満州国軍の実力は、日本陸軍に遠く及ばず、満州国軍の戦力では南満州と精々、河北省の確保が精一杯という現実があっては。

 却って中国本土の民衆の反発を買おうとも、戦力的には、日本の中国派遣軍が前面に立って中国本土を確保せねばならないという現実があったのである。


 そのような中国本土の土地では日本軍が軍政を敷いて、治安維持等の統治行為を行わざるを得なかった。

 主な任務としては、その土地における共産中国系のゲリラの跳梁を阻止し、民衆を共産中国系のゲリラから切り離して、満州国(及び日本)寄りにせねばならない。

 確かに岡村大将と今村中将は、性格的にもそういった任務に向いた存在だったが、そうはいっても才能等の限界というものがあった。


「正直に言って、我が師団の将兵は、共産ゲリラによる奔命に疲れ切りつつあります」

 赤柴八重蔵少将が疲れ切った顔で、この会議の席の発言の口火を切った。

 中国派遣軍の隷下にある(治安維持師団、いわゆる丙)師団の一つ、第52師団(丙師団には、第51から始まる師団名が付されることで、丙師団であるとわかるようになっている)の師団長を、赤柴少将は努めている。

 他の師団長も、赤柴少将と大同小異の顔をしている。

 それくらい、中国派遣軍の将兵は、上は師団長から下は二等兵まで疲れ切る有様だった。


 満州における日米軍を主力とするソ連軍への反攻作戦が展開されたことに対して、共産中国政府は、共産ゲリラの活動を活発化させることで対抗しようとした。

 中国派遣軍は、これに対して大規模に反撃し、それこそ結果的にだが、自軍の10倍以上の損害を相手に与えることで、共産ゲリラの活動を封殺しようとしたが、その代償として中国派遣軍の将兵は疲弊しきっていたのである。 

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